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英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~
混沌とした状況
しおりを挟むまさかこの村で、以前目にした『呪剣』と同じ力を持つ剣と出会うことになるとは思わなかった。
呪いの剣、という点では、これも『呪剣』なのだろう。あの変態が使っていたものは、斬った物の自我を奪う剣。自我を奪われれば、見境なく暴れまわる。死ぬまで。
その代償……なのかはわからないが、使用者にも相応の負担がかかる。コルマは、何度攻撃を打ち込んでも倒れなかった。『呪剣』を使っているうちに、痛みを感じなくなっていったのだろう。
結局、間接や骨、立つための機能を壊し、もはや肉体が行動できないほど、破壊した。動くための部位が破壊されれば、さすがに動けなくなる。
痛みを感じなくなる、なんて、一見すごい力に思える。代償なんかでなく、むしろ報酬といえるほどのものだと。だけど、果たしてそうだろうか。
これは持論だが、人間という生き物は、痛みあってこそ、だと思う。痛みを感じなくなってしまえば、それは果たして人間と呼べるのだろうか。
……『呪剣』を使用したその代償に、人間ではなくなってしまったのでは、ないだろうか。
「……じゃあ、私は……」
ただ、『呪剣』に斬られて自我を奪われなかった私は、実際に『呪剣』を利用していたが特に、体に異変はない。元々、体が丈夫ってだけの理由じゃなさそうだ。
私に『呪剣』の能力が及ばなかったのは、この右腕(じゅじゅつ)が関係している可能性は大きい。だから、今……相手にしている、斬った者を崩壊させる剣の力も、及ばないかもしれない。
が……
「だからって、試すわけにはいかない……」
そう、確証はないのだ。あくまで、確証に近い推測。もしこれで、斬られた体がさっきの男みたいに崩壊したら、目も当てられない。
いくらエリシアの魔力でも……いやそもそも、『呪剣』による能力は魔法で打ち消せるのか、わかったもんじゃない。
「お、おいやめろ! 来るな!」
先ほどまで、私ばかりを狙っていたレバニルだが、村人一人を斬ったことで周りにも目を向け始めたのか、他の村人をも襲っていく。
被害にあわないために村人は逃げていくが、しかし完全には逃げ切れない。ある者は転んで逃げ遅れ、ある者は助けてくれと手を差しのべ、結果的に他人を道連れにしていく。
斬られた村人は、砂のように体が崩壊し、その場から焼失していく。もはやそこに、人がいたという証すら残らない。
……人がそこにいたという証すら残らない。それはまるで、氷狼の村で見た、ノットという人物が使っていた呪術の炎のようだ。あれは、過去の映像だけど。
「このまま勝手に自滅してくれたら……!」
自我を奪われた者同士が勝手に潰しあってくれる……それと同じような展開を期待したが、そうも思った通りに事は運ばない。
「グルルルァア!」
耳に届く、魔物の咆哮。しかし魔物は、ユーデリアの冷気によって動けなくなっているはずだ……と、視線を向ける。
しかし、先ほどレバニルが相手し、ユーデリアが誤って動きを封じてしまった魔物は、一匹残らず固まっている。ならば、ただ吠えただけか……?
……いや、違う!
「また、か!」
ふと、背後から迫る気配に対して、回し蹴りをおみまいする。足に触れたそれは、なんというかぶよぶよした感触で……つまり、なんらかの肉だ。
そこにいたのは、黒い獣……間違いなく魔物だ。あそこで固まって動けなくなっているのとは別個体の魔物が、現れたということだ。
「どうなってんの……?」
今さら魔物が現れることに、疑問はない。魔物をぶっとばし、逃げていた村人の一人にぶつける。これで、魔物が村人を襲ってくれるだろう。
魔物が現れることに疑問はない……が、なぜこの村に限って、こんなに現れるのか。私がこの世界に戻ってきたのは、ただの一度だけ。それも、なんてことはない村から村への道中で。
それに、村長……ナタニアの言葉。奴等は、再び現れた……それは、以前から魔物がこの村に現れていたことを意味している。てことは、私がたまたま会わなかっただけなのか……
「救ったはずのこの世界で、異変が起きてるか……」
以前魔物を発見したときよりも、確かな予感。魔王を討ち平和になったはずのこの世界で、なにかしらの異変が起こっている。
……私には、関係ない話だけど。
「な、なんだよこの状況……これも、全部お前らのせいだ!」
暴走するレバニル、暴れまわる魔物……その混沌とした状況に、村人の一人が顔を青ざめさせながら、私とユーデリアを指差す。
私たちのせい、か……その言葉が間違ってるとは言わないけど、全部というのは心外だな。魔物が現れたのは私たちのせいじゃないし、レバニルが暴走してるのだってあの『呪剣』を手にしたからだ。
手にしたのは、私が相手したせいだけど。てもいずれ、魔物の相手をしているうちに手にしていた可能性だってあるし。
私が直接手を下したのは、ナタニアの命を奪ったことくらいだ。この現状を起こした元凶にされるのは、よろしくないと思う。
「ま、いいよそれでも……じゃあ、その言葉通りにしてあげるだけだ」
「お、おい……来るな、来るな!」
村人へと、私は近づいていく。全部が私のせいだというのなら、望み通りにしてやろうじゃないか。この殺戮とした場に、私も本格的に混ざってやろう。
その被験者は、お前が一番だ。
「じゃあね」
「やめっ……!」
ザシュッ……
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