異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~

人生を狂わされた者の末路

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「く、来るな、来ないでく……!」

「いやぁ、やめ……!」


 人が、倒れていく。血を流し、一人一人倒れていく。その、人たちを倒して……いや、殺しているのは、私だ。手刀で喉を、体を、切り裂いていく。

 手刀とはいえ、その威力は鉄の剣と変わらない。人体であっても、一太刀で斬り、傷を与える。もはや、ただの素手が凶器だ。

 初めてこの世界に来て。師匠に武術を教わり、魔物と戦い、戦い、戦い……私の体は、すっかり戦いに染まってしまったみたいだ。

 そもそも、元の世界に戻ってあんなことがなかったとしても、元の生活には完全には戻れなかったのかもしれない……そんなことさえ、思ってしまう。


「……っ」


 そんな思いから、つい八つ当たりをしてしまう。地面に刺さっていた剣を蹴り、それにより剣は砕ける。

 私がこの世界に来たことにより、人生を狂わされた……しかし、狂わされたのは人生だけではなく、私自身もだ。

 いったいどんな人間が、手刀だけで人を殺せる? 拳で地面を割ることができる?


「な、なんでこんなこと……ぎぁあ!」


 ……人を殺しても、なんとも思わなくなってしまったのは、いったいいつからだろう。

 なんでこんなことを、だって? そんなの、決まってる。


「この、人でなし……!」

「なんなの! 私たちが、なにをしたのよ!」

「人も、物も……全部、壊れちゃえ」


 人でなし、か。自分自身の心が、普通じゃないのはとっくにわかっている。人を殺していく中で、心は壊れていった? 違う……

 ……こっちに戻ってくる前から。元の世界で、お父さんの、あこの、そしてお母さんを奪われてしまった、あのときからだ。

 そしてこんなことをする理由は、復讐とかたいそうな言葉を並べても、結局は八つ当たりだ。そんなことはわかってる。わかってても、幸せに暮らしているお前らが、憎くて憎くてたまらない。

 私から、#家族__すべて__を奪っておきながら……!


「だから! 私は! お前たちを……!」


 血飛沫が、辺りから吹き上がる。私が歩いた跡に残るのは、血を流し倒れる人、人、人。

 私にとって、家族はすべてだった。友人や恋人もいた……けど、家族を失った以上に、失うものなんてない。その上、三人共死に目にすら会えなかった。

 お母さんには、私が娘であると理解されないまま、忘れられ、死んだことさえ後になって伝えられて、お墓の場所さえわからない。

 間違ってはいないとはいえ、親戚には私がすべての原因とされ、疎まれている。そんな、ひとりぼっちになった世界で……居場所なんて、ない。


「はぁああ!」


 背後から、誰かが斬りかかってくる気配。せっかく背後をとったのなら声を出すなんてバカなことをするなよ……

 ま、どのみちそんなに殺気駄々漏れじゃあ、バレバレだけどね。


「……」

「わっ!」


 受け止めてもいいんだけど、気配だけでわかるこの攻撃は単調だ。よって、体を少し横にずらすだけで、かわせる。

 背後から襲ってきた人物は、私がかわしたことで体勢をずらし、その場に倒れる。その人物は……先ほど蹴り飛ばした、ザルゴだった。

 あらら、やっと動けるまでに回復したってわけか。


「ぐ、く……っ、この、やろうめ……よくも村を、こんなに……!」


 ザルゴは立ち上がりつつ、現状を確認。そこには、倒れ命を落とした人々、破壊された数々のもの、悲惨な光景が広がっていた。

 自分が気絶している間に、村の様子は一変していた……それは、到底受け入れられるものではないだろう。


「少しは、私の気持ちがわかってくれた?」

「はぁ? なに言って……」


 自分が事態を把握したときには、なにもかもが手遅れだった。その気持ちは、きっと味わった者にしかわからない。ザルゴも今、その気持ちを理解してくれているはずだ。

 ただ、私がなにを言っているのか、いまいち理解していないようなので……横っ腹を、蹴りあげておいた。


「っ、げ……!」


 予期せぬ位置への、予期せぬ一撃。それはザルゴの喉奥から変な声を出させ、地面を転がっていく結果となった。

 ザルゴは咳き込み、横っ腹を押さえている。よほど痛いところに入ったのだろう、涙すら流している。


「く、そ……っ、くそ! なん、でっ……こんな……!」


 痛む横っ腹を押さえ表情を歪ませつつ、地面に拳を打ち付けている。その言葉は、誰に対する怒り、嘆きなのか……私に対してか、魔物に対してか。はたまた、運命に対してか。

 なんでこんなことに……か。そんなの、一番聞きたいのは私自身だ。


「不公平だよね……恨んでいいよ、私のこと」

「くそっ……!」


 魔力を発動させ、空中から無数の刃を放つ。それは狙いが外れることなく、ザルゴへと撃ち込まれ……その体を、刻んでいく。

 無数の刃が、無抵抗なザルゴの体を刻む。ただ腕を正面でクロスさせ、せいぜい致命傷を受けないようにしているだけ。


「ぐぅ、う……!」


 痛々しい傷が、次々刻まれる。このまま、なぶり殺しにしてやろうか……


「く、ぉおおお!」


 しかし、その未来は訪れない。刃を腕で受け止め、それでも傷を刻まれながら、ザルゴは突撃してくる。このまま、ただなぶられるつもりはないってことだ。

 その意気やよし。ただ……どうしようもなく、哀れだ。


「お前、なんかにぃいいい!」

「……ばーか」


 ザクッ……


 次の瞬間……怒りに燃えるザルゴの頭が、首と離れて吹っ飛んだ。
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