異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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世界への反逆者 ~英雄と師~

生き返らせた何者か

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 師匠の横っ面へと、拳を思いきり叩き込む。主観でなく客観的に、岩をも砕く一撃だ。

 そのまま、力を込めて……勢いを乗せたまま、その大きな体を、地面へと、叩きつける!


「ぬぅう!」


 ガゴンッ!


「ぐ、ぅっ……!」


 力の限りを込めれば、一回りは大きい師匠の体だって、吹っ飛ばすことができる。

 大きな体が地面に沈み、地面には亀裂が走る。いっそこのまま、地面の下に埋めてしまった方がいいかのかもと思ったけど、それは現実的ではないか。

 とにかく、今は師匠が起き上がるまでの、わずかな時間で……もうここでとどめをさすくらいの勢いで、ダメージを与えてしまえ!


「ぅえい!」

「ぐぅっ!?」


 うつ伏せの状態から起き上がろうとする師匠の背中へ、かかと落としをおみまいする。ボキィ、と骨が折れる音が耳に届くが、それに躊躇して攻撃の手を緩めることは、しない!

 続いて、膝打ち。呻く師匠の声を聞きつつ、隙を与えないよう、肘打ちをおみまいする。


「ふん、ぐっ……」


 こっちに正面が向いている状態なら、喉とか急所を、狙うことができたんだけど……言っていても、仕方ないか!

 身体中が痛い、特にさっき何度も殴られ蹴られた腹部辺りが、とんでもなく痛い。気を抜いたら、気を失ってしまいそうだ。

 耐えろ……あとで、どうなってもいい。だけど今、こちらが少しでも隙を見せたら、終わりだ!


「はぁああああ!」


 左手拳を、何度も背中に浴びせていく。片腕しかないとはいえ、もうこの状態になってそれなりに長い。片腕のみは不便だと最初こそ感じていたが、今でこそ特に不便はない。

 片腕のみの連打だって、両腕があるのとほぼ同じ勢いで、絶え間なく打ち込むことができる。


「消え、ろぉおお!」


 この師匠が、本当に生き返ったんだとして……どうやったのかはわからないけど、死体もない状態から、復活したんだとして。

 それらが本当だとして。この男は、もう私の知ってる師匠じゃない。師匠は死んだし、あの頃の師匠とは違う!

 ……いや、違うか。変わったのは、私もだ。


「本当に強いな、アンズ……だが、そんなもんじゃ俺は殺せない」


 ドゴッ……!


 拳が背中に打ち付けられ、衝撃が周囲に伝わる。背中から地面に向けて衝撃が突き抜け、地面に大きなクレーターが生まれる。

 もう、体が粉々になってもおかしくないほどの一撃。これまでのダメージも蓄積されている。動けるはずがない。

 ……そのはず、なのに……


「くっ……?」


 打ち込んだ背中は硬く、硬く、硬い。

 もう動けもしないはずの師匠は、勢いよく体を起こし……私は、飛び退く。


「なかなか効いたぞ、アンズー」


 正面をこちらに向けると……口からは血が流れ、さらに体からも血が流れている。内側からのダメージもあるのだろう、とても平気とは思えない。

 思えないのに……なんであんなに、元気なんだ?


「まさか、本当にゾンビなんじゃあ……」


 ゾンビならば、疲れてもどれだけダメージを負っても、動けなくなっても動き続ける。というイメージがある。

 これではまるで、その知識の中の……


「その力を、どうしてもっと有効に使わないのか……いや、どうしてこんなことに使ったのか」


 嘆くような、師匠の声。こんな力、私の元いた世界ではもちろん、平和になったこの世界ですら役には立たない。

 強大すぎる力は、もて余せば負担でしかない。


「あんたには、関係ない……」

「話してくれないかアンズ。お前じゃ俺は倒せない。ならせめて、その胸のうちを吐き出して、楽にならないか」


 ……楽、に、か。確かに、私は私が元いた世界に戻ってからなにがあって、どうしてこんなことをするに至ったか、話したのはユーデリアだけだ。コアにも、会話はできないけど話した。

 敵対する相手に話すはずもないし、仮に話したところで、八つ当たりに近いこの行動を許容してくれる人なんて、おそらくどこにもいないだろう。

 ……たとえ、師匠でも。


「話すことで楽になれるぞ? お前だって、ただ暴れたいからこんなことをしているわけじゃないんだろ?」


 私では師匠は倒せない……その余裕か。いきなり、私が暴れる理由を教えろ、なんて……

 ……なんでそんなこと、言うんだ。師匠なら、今こんなことは言わない。再会してすぐにでも、戦いの途中だって理由を聞き出そうとするはずだ。それを、自分が有利になったから聞こうだなんて。

 ……師匠らしく、ない。


「なあアンズ、話を……」

「もしかして、あんたを復活させた奴の指示? 私が、いや元『英雄』がなんで人殺しなんてやってるか。なんであちこちで暴れてるのか。その理由を、聞き出せって指示でも受けた?」

「……」


 ……口が、止まる。師匠の口が、動かなくなる。それは、私の言葉が的を射ていたから、なのだろうか。

 師匠を生き返らせたのが何者かだとして。私の目的を知りたいと思っているのだとしたら。師匠の圧倒的な力を前に、私が行動の理由を話してしまうことを期待してるんだとしたら。


「悪いね。絶対に話す気はない。あんたも、あんたの裏にいる奴も……絶対に、殺してやるから」


 今の師匠の言動からも……その何者かと、リアルタイムで繋がっている理由は、高い。

 なら、そいつを引きずり出してやる!
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