異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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世界への反逆者 ~英雄と師~

【幕間】役に立たない

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「予想外だったよ、ここまで役に立たないとはね」


 とある部屋に、ため息混じりの男の声が響き渡る。というか、実際にため息を漏らしている。

 男の言葉がなにを指しているのか……それは、今まで彼らが"視た"光景の結末によるものだ。

 ここにいる、ガニムという男の能力……それは、対象の視界を、自身の視界として見ることができる。視界を共有、と言えば聞こえはいいが、実際にはガニムが一方的に視界を見るといったものだ。

 さらに、その右目で見たものを、別の者に見せることができる。その際、本来視力が失われている右目をくりぬき、潰す必要があるが。


「役に立たない、か?」


 男の言葉に対し、ノットが首を傾げる。ノットも男同様、ガニムが見た光景を視ていたのだが、男と同じような感想は得られなかった。

 むしろ、死者をあそこまで使い潰してえげつねぇな、と思っていたくらいだ。


「あぁ。『剛腕』ターベルト・フランクニル……あの『英雄』の師だという人間だ、若干の期待はしていたよ。しかし、まさかあんな結果になるとは……がっかりだよ」


 ため息を漏らす男は、先ほど視た光景を思い出す……禁術により死者である彼は生き返った。死体も残っていないほどの死に様だったようだが、それはたいした問題ではないことだ。

 問題なのは、せっかく生き返らせた彼が……なんの成果も残さず、散ったことだ。


「『英雄』か氷狼……彼の力なら両方捻ることは容易いし、せめてどちらかを始末してくれることを、期待してたんだがな……」


 『英雄』の師であり、確かな実力者であったはずの『剛腕』。彼の力ならば、たとえ『英雄』であろうとも実力は上回っているだろう。実際に、その考えは間違っていなかった。

 途中までは、確かに『英雄』を圧倒していた。氷狼に関しては、まったく寄せ付けないほどの力を持っていた。彼の力なら、二人同時に始末することも充分に可能だったはずだ。

 しかし、現実は……


「とんだ、期待はずれだ」


 禁術を使って一度生き返らせた人物は、もう二度と生き返らせることはできない。いかに禁術と言えど、死んだ人間を二度生き返らせることは叶わないのだ。

 もっとも、もしもう一度生き返らせることができると言われても、もうそんなことをするつもりはないが。


「てか、ぶっちゃけ呪術のせいじゃね?」


 嘆息する男に、ノットが言葉を投げる。あの光景を視ていたノットが感じたのは、呪術が発動してからターベルトに異変が表れたことだ。

 ターベルトと『英雄』の対決を直接見ていたのは、あの場で気配を殺し隠れて見ていた、ガニムの部下。ガニムは部下の視界を使い、自らの視界に取り入れたわけだが……部下に見ることのできなかった呪術が、男、ノット、ガニムには視えていた。

 だから、部下の目には急にターベルトの動きが崩れたように見えたが、ノットにはターベルトが呪術を発動させたことにより動きを崩したと、視えていたのだ。


「呪術、か……禁術を使った際、不明要素でも紛れ込んだか」


 杏は、ターベルトを生き返らせた人物……つまりこの男が、呪術を与えたのだと考えていた。だが、実際には違う。

 禁術と言っても、なんの代償もなしに人を生き返らせることができるわけではない。それ相応の代償、もしくは手段が必要だ。

 今回に関しては、諸々の他に、男の血を供物の一つとした。その際、男に流れる血が混ざったことで、本来与えられることのない呪術が与えられたのではないだろうか。

 魔法に魔力という源となる力がありそれが体の中を流れているように、呪術にも源となる力が、体の中を流れている。この男も同様であり、呪術を使える者が少ない世の中でも多くの源が流れている。

 呪術の源となる力が混ざった血を、供物とした結果……付属として、ターベルトが呪術を使えるようになってしまった可能性が高い。

 しかも、本来ならば呪術という力は使用者に多大な負荷を用いる。生き返ったとはいえ、元々死んだ人間にとっては、常人が呪術を使う以上の反動が来たに違いない。

 結果として、ターベルトが急激に崩れる、要因となったのだろう。


「そう考えると、百パーセントあの男の過失でもないか」


 呪術を与えてしまったのが男ならば、ターベルトの過失の割合はぐんと低くなる。むしろ……


「いやあんたのせいだろ」

「無礼な!」


 容赦のないノットの言葉が男を刺し、そのノットに対する怒りを孕んだ叫びがぶつかる。ガニムは男にこれ以上ない忠誠心を払っているゆえ、男に対する侮辱はなんであろうと許さない。

 ガニムの怒りに、ノットも受けて立とうと睨み返す。しかし、一触即発のその空気を、またため息が流れていき……


「いや、ガニム。ノットの言う通りだ、今回の過失はワタシにある」

「しかし……いえ、主がそうおっしゃられるのでしたら」


 非を認めた男の様子に、ガニムも引き下がる。おかしな光景だと、ノットは鼻で笑う。


「ま、誰の過失とかはこの際どうでもいい話だ。このあとの話をしようぜ、『剛腕』が『英雄』を討ち取れなかった。このあとの話を」

「……そうだな」


 一度、目を閉じる男……数秒後、その目が鋭く、開かれた。
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