異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄狙う暗殺者の罠

侵食されていく体、破滅するまで

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 思わず、心の中で何度も舌打ちしてしまうほどに、サシェとボルゴにしてやられた感が強い。油断していたわけではないが……それでも、記憶の中の人物に出し抜かれた形になったのが、悔しい。

 いや、それだけじゃない……出し抜かれた結果として、大きなダメージを負ってしまった。爆発とはいっても小規模だ……爆発の、規模は。

 しかし、その威力は……凄まじい。小規模な爆発だから威力が低いなんてことはなく、むしろ小規模の中に威力が凝縮されていたって感じ。

 大規模な爆発はただ派手なだけ……大規模なものは、使用者が巻き込まれる可能性から敵との側では使えない。だから、こうした小さな攻撃の中に高い威力があるのが、本当に厄介なのだ。

 その上、正面にはボルゴの守りの力が働いている……爆発は、正面への逃げ道を失い、その部分の爆風が跳ね返ってくる。


「っ、いっ……つつ……」


 呪術の力は、まだ消えていない。どころか、呪術の黒い部分にはダメージはない……むしろ、ダメージがあるのはそこ以外の全身だ。

 ただ痛いだけじゃない……爆発爆風のせいで火傷はしたし、皮膚だって剥がれてしまっている。単なる痛みではない、また別次元の痛み。

 ここに、今までの疲労や痛み……この戦いで負ったダメージが一気に響いている。正直、もう一歩も動けそうに……


 ズキンッ


「うっ……うぅ、うぁ……!」


 なんだっ……突然、頭が……痛い! 今の爆発で頭に異常をきたしたか……それとも……


「ぐぅう……あぅあぁ……!」

「あ、アンズ……?」


 突如苦しむ私に、サシェは困惑の様子……だけど、それに応える余裕が、今の私にはない。

 頭が痛いし、体も痛い……今の爆発の痛みとも、今までに蓄積された痛みとも違う、この痛みはいったい……


「ぐぁあぁっ……ぁ、はっ……はぁ……?」


 頭の痛みが、急激に左腕へと集中していく。まるで、熱湯に浸けられているんじゃないかと錯覚するほどの痛み……

 しかし、その痛みはほどなくして消える。あの痛みも、まるでなかったかのように……おそらく、時間としては一分と経っていない。けど、体感はそんなものではなかった。

 この痛みが、永遠に続いてしまうんじゃないかと思えるほどの……

 そして、最後に痛みが集中した左腕は……


「……あ、れ……腕……?」


 左腕は……黒く、染まっていた。

 そもそも右腕のない部分から黒い腕が生えている状態とは違う。今まで、左手の部分だけが黒く染まっていた。しかし、今は黒いのは、腕の部分にまで侵食している。


『呪われし術……呪術は、やがてお主の体をすべて呑み込み、術者の体を破滅させる』


 ふと、とある言葉が頭の中に浮かんでくる。それは、水の精霊ウンディーネと戦い、この左手が黒く変化したことを問い詰めたときに得た言葉だ。

 体をすべて呑み込み……それが、つまりこういうことか。文字通りってことだ。この黒い呪術が、着実に侵食してきている。

 この分だと、ウンディーネが言っていたようにすべて……全身が、呑み込まれてしまうのだろう。もしそうなれば、どうなってしまうのか。

 いい結果にならないことだけは、確かだろうが。


「アンズ……腕が、黒く……?」


 今の私は、隙だらけだったはずだ。なのに仕掛けてこなかったということは、それだけ私の様子がおかしかったということだろう。

 今だって、驚いた様子で、警戒した様子でボルゴが呟いている。


「……ごめんね、びっくりさせちゃったね」


 黒く染まった、左腕……これで、今の私は右肩から黒い腕が生え、左腕が黒く染まっている状態。両腕が、真っ黒だ。

 乙女としては、この姿を自分で見たくはないな。


「……ふんっ!」


 バキンッ……!


「なっ……」

「ぼ、ボルゴの出した壁が……!」


 黒く染まった左手で、正面にあるボルゴの守りの力……バリアのようなそれを、思い切りぶん殴る。すると、まるでガラスが割れたかのように、音を立ててバリアが壊れたではないか。

 サシェや、ボルゴ本人ですら驚いているが……私だって、驚いている。今まで、いくら殴っても全然反応しなかった。それこそ、ひびすら入らなかったのだ。

 今までこの、左手では全然効果がなかった……それが、この黒いのが腕にまで侵食したことで、ボルゴの守りの力を破るまでに攻撃力が上昇したってことか。

 その代償が、体の侵食……しかも、この黒い右腕や左手同様、どういった条件で発動するのか、まったくわからない。私の意思とは、別のところにある。


「……ま、今はいいや」


 さっきまで、一歩も動けそうになかったのに……今は、その疲労が消えている。それが、呪術の力に侵食された影響だとしたら……

 私の体は、どんどん人間のものとは違うものになっているのかも、しれない。すべてを呑み込み、破滅させる力か……それは、間違いではないのだろう。

 この力が、腕だけでなく全身を侵食したとき……私の体は……私は……私では、なくなってしまう。

 ……けど、悲観はしない。元々、この世界に戻ってきた時点で、私自身どうなってもいいと、思ってたんだ。破滅しようが関係ない。むしろ、破滅するまで……いや、破滅するより先に、この世界を壊してやる。

 そんな思いが、強くなっていった。
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