異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄vs暗殺者

生き死にと隣り合わせ

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 私たちが訪れた、とある村。……そこでは、なんとも摩訶不思議なことが起こった。

 自分の記憶の中にいる人物……それらが実体化し、戦うことになった。実体化とは文字通り、幻覚のはずなのに触れることも殴ることも、殴られもする。なんとも不思議な現象だ。

 私は、記憶の中にあった勇者パーティーの五人のメンバーと戦うことになり、辛くも勝利を得ることができた。その代償として、体は外側も内側もボロボロだけど。

 なんせ、この世界を救うために選ばれた、五人の戦士だ。個人個人がすさまじい力を持っている。敵に回って初めて、味方でよかったと思えたよ。

 そんな五人と戦って、命があっただけラッキーだったと言うべきだろう。それは、力量以上にいろいろな運が重なった結果とも言える。

 五人を倒し、幻覚を生んでいた紫色の霧は晴れた。これでようやく、ゆっくりできる……ほんの僅かに期待していた望みは、目の前に謎の人物がいたことで打ち砕かれる。


「……」


 フードを目深に被っているため、顔は見えない。性別も……まだ、判断のしようがない。わかっているのは、こいつが明確な『敵』であること。私を殺そうとしていること。

 なにが目的かは、わからないけど……


「さっきの変な霧も、あんたの仕業?」

「答える義理はないね」


 ごもっとも。まあ、このタイミングで出てきたんだ……あの紫色の霧と、無関係とは思えない。どころか、アレを発生させたのは十中八九こいつだろう。

 そこにどんな意図があるか……考えるまでもない。それに、自ら言ったではないか。私に、死んでくれと。あわよくば、先ほどの霧の中で、かつての仲間たちに殺されておいてほしかったんだろう。


「悪趣味……」

「褒め言葉として受け取っとくよ。てか、あんたには言われたくないね。今までやってきたことを振り返りなよ」


 むっ……まあ、私がこの世界に戻ってきてからやってきたことを考えると、充分悪趣味の段階を越えてるよな。壊して殺して……と。

 ……ん、この世界に戻ってきて……?


「……もしかして、私のやってきたこと知ってる? 今までどっかで見てた? あとそのしゃべり方……なんとなく、女の人って感じがする。それに、あんたは強いけど、さっきの霧を仕掛けたのがあんたなら、万全の私に勝てるほどには強くない」

「……」


 私のことを『英雄』と認識はしている。でも、単に『英雄』と認識しているだけなら、悪趣味なんて言葉は出てこないだろう。自分で言うのもなんだが、私は一度はこの世界を救った聖人みたいなものなんだから。

 このフードの人物が魔族であるなら、言い分はわかる。私たち、魔族をバッタバッタ殺してきたし、見方によっては魔族にとって悪趣味だろう。

 けど、こいつからは魔族の気配は感じない。人間だ。そして、やってきたことを振り返りなよと言うってことは……私がやってきたことを、把握していることでもある。

 私がやってきたことを振り返るなら、それは世界を救うことと……世界を、壊すこと。前者は言葉のニュアンスがおかしい。だとすると、後者だ。

 私が、もう一度、この世界に来たということ。それ自体は、『英雄』が異世界の人間であることを把握していれば、知っていても不思議ではないが……

 私がこの世界に戻ってきてやってきたことを、知っている。隠れて見てきたのか、あるいはどっかの国か村の生き残りかは知らないが……


「目的は知らないけど……私の邪魔するってことは、わかってるんだよね?」


 私がしてきたことを知っているなら、当然……立ちふさがった相手がどうなったかも、知っているはずだ。私の邪魔をするなら、誰であろうと殺す。

 つまり、こいつもその覚悟があって、私の前に立っている。


「……あー、やっぱおしゃべりなんてするもんじゃないや。いや、たとえしゃべんなくてもだ……どこからどんな情報抜き取られるか、わかったもんじゃない」


 目の前の人物は、どんな感情を持って話しているのか……それを、感じさせない。今なにを考えているのか、大抵は声の調子でわかったりするんだけど……

 まるで、感情を抑えているかのようだ。なにを考えているのか、まったくわからない。怯えも、怒りも、嬉しさも、なにも感じない。……殺意以外は。

 今までに、会ったことのないタイプだ。


「私、あなたになにかした? それとも、あなたに関係する人やものに、とか」


 人に恨みを買うようなことは、していない……と、この世界に戻ってくる前までの私ならばそう言っただろう。だけど今は、恨みを買うようなことしかしていない。

 だから、こうして殺意を向けられても、まあ不思議も疑問もない。こいつが何者かってこと以外は。


「別に、あんたに恨みはねぇよ」

「……じゃあ、誰かに頼まれたとか? 私を殺すように」

「……っとに、こうしておしゃべりしてる場合じゃないね」


 図星、だろうか。イエスともノーとも言わないが、これはそういうことだろう。いったい、誰が依頼をしたのか……


「っ……」


 瞬間、雰囲気が変わった。溢れていた殺意は、より鋭い殺意へと変化する。

 この、殺意……やっぱり、ただ者じゃない。まるで、日々の中で常に生き死にと隣り合わせで暮らしているような、そんな感じの……


「じゃあまあ、改めて言わせてもらうわ……ここで、死んでもらう」
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