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英雄vs暗殺者
複数の暗殺者
しおりを挟むノットの姿が、見えない。声は聞こえるのに、気配も感じないなんて……よほど、気配を消すのが得意らしいな。
見えないところから、じわじわと相手を追い詰めていく……それが、ノットのやり方。
氷狼の村での行いとは全然違うが……まあ、あのときはバーチ含む人間がたくさんいたし。村ごと氷狼を滅ぼすつもりだったんなら、隠れてやっても意味がないからか。
「まるで忍者、か……」
クナイを飛ばしてきたり、かなりの素早い動きをしていたり、姿を消したり……それはまるで、忍者のようだ。もちろん、直接見たことはないけど。テレビの中だけの話だ。
この世界には忍者なんてものは、いないだろうし……多分。だから、忍者ってのはまあ、単なる印象だ。
「はぁ、くそっ……」
このままじっとして少しでも回復させてくれればいいんだけど……さすがにそんな時間は、与えてくれないだろう。
むしろ、どこからどんな手段で狙ってくるのか……緊張を張り詰めているせいで、体も心も休まる暇がないくらいだ。
「……!」
気配は、感じない……それでも、はっと違和感のようなものを、感じる。その瞬間、私はその場から前方へと飛んでいた。
直後、『ボゥッ』という奇妙な音が聞こえる。いや、奇妙ってか……あれだ。ガスコンロで火をつけたときの、火がついた瞬間の音。つまり、炎が燃え上がる音。
振り向き、確認すると……私がさっきまでいた場所は、地面から火柱が上がるほどに燃え上がっていた。あのままあそこにいたら、今頃私が燃えて……
「ちっ、これも避けるのか。どうなってんだよその反応」
舌打ちと、どこか悔しそうなノットの声。してやったりって感じだが、今のは勘だ……そう何度も、今みたいに避けるのを続けられるかはわからない。
姿も音もない、そんな相手からの攻撃を、どうやって避け続ければ……
「わっ! よっ、はっ、とっ!」
違和感、違和感、違和感……そうとしか表現できないものを感じる度に、私はその場から飛び退くように移動する。
飛び退いた場所には、火柱が上がる。どうやら、呪術の炎が放たれるのを事前に察知できているようだ。
「……なんなんだ、お前は!」
「いやキレなくても……」
私自身、よく避けることができているなと思う。そこへなんなんだと聞かれても、なんと答えればいいものか。
ま、だてに一度はこの世界を救ってないってことだ。
「あんたの炎は私には通じないみたいだし、出てきたら? あんたのやり方じゃ、私は殺せない」
「ちっ……」
一つはっきりしたのは……ノットの炎は、人体を燃やす炎ではあるが、人体を発火場所に固定できるわけではないということ。あくまで発火させた場所に人体があった場合、その炎は人体をも焼き尽くす炎になる。
人体を直接燃やすことは、できないってわけだ。
「はは、驚いたよ。驚いたが……まさか、見えない位置から炎で燃やすことだけが、私のやり方ってわけじゃないさ」
……まあ、そうだろうな。他にも、ノットはノットなりのやり方を持っている。その中の一パターンが、私に通用しなかっただけのことだ。
クナイと飛ばしてきたり、炎を操ったり……それだけが、ノットの攻撃手段ではないはずだ。多分。
とはいえ、私が知っているノットの情報は、今直接会って体験していることと、氷狼の村を滅ぼした映像でしかない。ノットが、私がもっと情報を持っていると勘違いしたままなのはいいとしても……
結局のところ、わかっていることは、少ないってことだ。
「次はこういうのは、どうだ?」
次に声が聞こえてきたその直後に、正面にノットが現れる。あんなことを言っておいて、正面から堂々と? ……と思っていたが、違うようだ。
右に、左に、背後に……次々と、ノットの姿が、現れる。複数のノットに囲まれてしまう。
これ、もう残像とかって問題じゃなくない?
「しかもまた多人数……」
ついさっき、一対五のシチュエーションを終えたばかりだ。なのにこの展開は、また骨が折れそう……
一人が、素早く迫ってくる。手には赤く光る短剣を持ち、それが得物であるのは明らかだ。振り抜かれる斬擊を後ろに下がることで避けるが……そのタイミングで、右方向からクナイが飛んでくる。
避けるのは難しいので、体を捻って左手で弾き落とす。熱い。
「っつ……!」
さらに、バランスが少し崩れた……ところへ、三人のノットが四方八方から迫る。全員、手には短剣を持っている。繰り出される斬擊は、グレゴに比べれば見きりやすいことこの上ない。
それに、いくら複数いるとはいえ、同じ人物だ。さっきのように、五人がまったく違うタイプであることに比べたら、動きは読みやすい。
……けど……
「くっ、ぬっ……よっ」
動きが、素早い。手首の動き、足の動き、そしてフェイント……しかも、短剣というリーチこそ短いがそれだけに振り回しやすい武器。さらには刀身が赤く光っており……
「っつつ……!」
直接触れてもいないのに、熱さが伝わってくる。いや、だんだん……避けきれなく、なってくる。
体のあちこちに、切り傷が、刻まれていく……!
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