異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

文字の大きさ
514 / 522
最期の英雄

終わりの見えない時間

しおりを挟む

 ……


『アンズ』


 …………


『アーンズ?』


 ………………あれ、今私……どうしてるんだっけ。どうしてたん、だっけ。


『あ、よかったよかった、目が覚めた。死んじゃったのかと思ったよー。ま、この世界で死ぬことはないんだけどね』

『……エリ、シア』


 視線を動かすと、横になっているエリシアがいる。……違う、私が横になっているんだ。空中に座った様子のエリシアは、変わらぬ様子だ。

 死んじゃったのかと、思ったって……物騒な……


『っ……』

『あは、なにが起きたか思い出した?』


 とっさに、左目を押さえる。大丈夫だ、左目はちゃんとある……抉り取られては、いない。

 私は、私が今まで殺してきた人たちの、死の体験をしている。死の苦痛を、この身で体験……でも決して死ねない。ここはこういう世界で、私の頭の中だから。

 そうだ、私は……エリシアの、死んだときのものと同じ痛みを。左目を、左目にあんな、強烈な痛みが……


『痛かった、なんてもんじゃなかったよ。それが大袈裟じゃないことくらい、わかるよね? だって、その痛みを受けたのは私自身で、アンズがしたことなんだから』

『……』


 エリシアの言うように……私がエリシアを、殺した。その方法は、生きたままのエリシアから、左目を抉り取って……という、自分でもおぞましいと思えるものだ。

 正直、そのときの記憶は私の中では曖昧だ。そのときの私は、よく覚えてないけど飢餓を感じていた……と思う。そこにある、美味しそうなものをただ求め、私は……そしてそれが、エリシアの……


『くっ……』


 覚えないことだったとはいえ、私がエリシアの左目を抉り取ったのは事実だ。それが今、証明された。その後左目それを食べ、この左目はエリシアのものになった……うっ、思い出したら吐き気がしてきた。

 そうか、私は……左目を抉り取られる感覚に、あまりの苦痛に気を失っていたのか。この空間で、気を失うなんてことができたのが不思議だったが……それほど、衝撃だったということだ。あんなの、二度と味わいたくない。

 さすがに、以降の私は目玉を抉り取るなんて殺し方はしていない。だから心配いらない……とはいかない。エリシアの死の体験をしたばかりで、まだ他にたくさんの死が待ち構えて……


『ぐっ……えぇ……!』


 あぁ、また、来た……この、痛み。今度は、お腹……いや胸の奥か。締め付けられるように苦しく、内臓を直接握られているみたいだ。そしてそのまま……


『……っ、はぁ! はぁ……』


 再び始まる、苦痛の時間。あとどれだけ、この苦痛を味わえばいいのだろう。それを考えるとおかしくなりそうだし、私がこれまでにしてきたことを考えれば、当然……


『はぁ、っあ……』


 これまでは、大きすぎるダメージを受けたときでも、眠れば多少なり回復した。でもこの空間では、眠ることも気絶することもできない。

 さっき左目の痛みで気を失っていたのは、多分……左目を抉られたエリシア本人が、目の前にいたから。本人がいることで、本人が受けた苦痛が、記憶が、ダイレクトに伝わってきた。それで、気を失うほどの衝撃を受けてしまった。

 気を失っている間に別の苦痛を与えられなかったのは、起きている私に苦痛を与えないと意味がないと思ってだろうか。それとも、気を失っている間にも苦痛を与え続けられていたのか……

 どっちにせよ、この苦痛の時間はまだまだ続く。なぜか、楽しげな表情を浮かべているエリシアに、見守られながら。


『っ、が、ふっ……!』


 終わりの見えない時間が、続いていく……
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...