言い伝えの裏話

夜船 銀

文字の大きさ
1 / 3

黒猫の話

しおりを挟む
道を歩いていたら変なおじさんに話かけられた。

「やぁ、そこの君ちょっと話を聞いてくれないかい?」

こちらが何か言う前におじさんは話を始めてしまった。

「いやね、私は不思議に思ったんだ。君は黒猫の迷信を知っているかい?黒猫が目の前を横切ると不幸になるっていう…そうそう、それだよ。じゃあさ黒猫を見ると幸福になれるって話もあるんだ。それは聞いたことあるかい?お、そうか。中々博識だね。でもね、不思議だと思わないかい?どうしてこんな真逆の話が同時に存在しているのか。その理由は知ってる?ふふ、さすがの君もどうやら理由までは知らないようだね。じゃあ教えよう。その理由を」

昔々、まだ世界に一つしか国がなかったころ。その国は赤い首輪をつけた大きな黒猫が守り神として街を守っていた。それはそれは大きな猫で国のお城と同じ位の大きさだったそうだ。国は黒猫に守られて実に平和だった。そんなある日どこからともなく青い首輪をつけた別の大きな黒猫がやって来て、赤い首輪の黒猫にこう言いました。

「おい、赤いの。お前ばかりその国に居座ってずるいぞ。俺にその国をよこせ」

そう言って赤い首輪の黒猫に襲いかかりました。その二匹の戦いはとても激しく、二匹が地面に転がるたびに山や谷ができて、二匹が流した涙でいくつもの川が生まれました。そして戦いの末、青い首輪の猫が降参し、逃げて行きました。

安心した守り神の黒猫は国のみんなにもう大丈夫だよ。と伝えようとしました。ところが国の人たちは
「青い首輪の猫だ!守り神様は負けてしまったんだ!」と大騒ぎ。慌てて国を出ていってしまった人もいました。
なんと、戦いの中で二匹の首輪は絡まり、守り神の猫は青い首輪をつけてしまったんです。

幸いなことに国の王様がすぐさま黒猫の言葉を聞き入れ、国のみんなにそのことを伝えました。国のみんなは安心し、その後も黒猫は守り神として在り続けました。しかし、王様の言葉を聞く前に国を出ていってしまった人たちは黒猫に怯え、自分の子供達にも黒猫は恐ろしいものだと言い伝えるようになったそうです。

「と、この出来事がもとになって全く正反対の話ができてしまったというわけだ…。おっと、もうこんな時間か、ごめんね。ついつい話しすぎてしまったよ。じゃあな、どうかこの話を忘れないでおくれよ。」

そういってこちらに背を向け、去っていくおじさんのズボンから黒い猫の尻尾のようなものがはみ出ているように見えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

かぐや

山碕田鶴
児童書・童話
山あいの小さな村に住む老夫婦の坂木さん。タケノコ掘りに行った竹林で、光り輝く筒に入った赤ちゃんを拾いました。 現代版「竹取物語」です。 (表紙写真/山碕田鶴)

青色のマグカップ

紅夢
児童書・童話
毎月の第一日曜日に開かれる蚤の市――“カーブーツセール”を練り歩くのが趣味の『私』は毎月必ずマグカップだけを見て歩く老人と知り合う。 彼はある思い出のマグカップを探していると話すが…… 薄れていく“思い出”という宝物のお話。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

処理中です...