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雷さまの話
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飲み屋のカウンター席で一人で飲んでいると、隣に座っていた豪快そうなおじさんが話しかけてきた。
「なぁ兄ちゃん、暇なら俺の話を聞いてくれないか?」
突然話しかけられたことに面食らって何も言えずにいるとおじさんは話を始めてしまった。
「一般常識だと思うが兄ちゃんは雷の迷信を知ってるかい? そうそれだ、雷が鳴ったらへそを隠せってやつだ。じゃあなんでへそを隠さないといけないんだ? そうそうそれそれ、雷さまにへそを取られるからだ。なら、なんで雷さまはへそを取ったりするんだ?はっはっは、兄ちゃんでもそこまでは知らねえようだな。いいぜ、教えてやろう。それにはな、こんなワケがあるんだ…」
昔々あるところに、雷さまという神様がいました。雷を司るその神様は最も強く、雷鳴と共に人々はおろか他の神々にも恐れられていました。そのため、雷さまは一人ぼっちでした。雷さまは他の神々や人々と仲良くしたい常々思っていましたが、困ったことにこの雷さま、ひねくれた頑固者であったため中々うまくいきませんでした。そんなであったためすっかりいじけてへそを曲げてしまった雷さまは、ある時こう思いました。
「俺ばっかり一人で過ごさなければならないのは納得がいかないぞ、他の者どももみんな一人ぼっちにしてやろう。」
そう言った雷さまは短い顎髭をなでながら、ひとつのアイデアを思いつきました。それは雷と共に人々からへそを取るというものでした。へそとは子供が親から生まれた証そのもの。それがなくなれば家族はバラバラになり、みんな一人ぼっちになると考えたのです。
そうして、雷さまは自分が思いついたこの素晴らしいアイデアを実行に移しました。自慢の太鼓をドンドン鳴らして雷を轟かせ、人々の注意を引き付けます。そしてビカッと光る電光に目をくらませた人々からサッとへそを奪いました。これにはみんな驚きました。
「へそが、へそがなくなっちまった!」
「私も!」
「俺もだ!」
みんな大慌て、でも一つだけ雷さまが思っていた通りにはいかないことがありました。
「へそがなくなるなんて信じられないけど、こんな時こそ家族団結だよ!」
「大丈夫、お母さんがいるからね」
家族はバラバラになるどころかより一層の絆を見せたのです。これには雷さまもびっくり仰天。そして、目の前の美しい絆を前に自分のやったことが情けなくなり、再び鳴らした雷と共に人々にへそを返し、二度とへそを奪うことはしなかったそうです。
「て言う話が元になって雷のときはへそを隠せって話ができたわけよ。どうだ、知らなかったろ」
ガハハ、と笑ったあとおじさんはこう続けた。
「雷さまって奴は頑固者でどうしようもない奴だったけど、心の底からみんなと仲良くしたいって思ってた奴だったよ…っとついつい話すぎちまったな。ありがとよ、兄ちゃん。」
そういっておじさんはカウンター席から立ち上がった。
去っていくその背中からドンドンと太鼓の音が聞こえた気がした。
「なぁ兄ちゃん、暇なら俺の話を聞いてくれないか?」
突然話しかけられたことに面食らって何も言えずにいるとおじさんは話を始めてしまった。
「一般常識だと思うが兄ちゃんは雷の迷信を知ってるかい? そうそれだ、雷が鳴ったらへそを隠せってやつだ。じゃあなんでへそを隠さないといけないんだ? そうそうそれそれ、雷さまにへそを取られるからだ。なら、なんで雷さまはへそを取ったりするんだ?はっはっは、兄ちゃんでもそこまでは知らねえようだな。いいぜ、教えてやろう。それにはな、こんなワケがあるんだ…」
昔々あるところに、雷さまという神様がいました。雷を司るその神様は最も強く、雷鳴と共に人々はおろか他の神々にも恐れられていました。そのため、雷さまは一人ぼっちでした。雷さまは他の神々や人々と仲良くしたい常々思っていましたが、困ったことにこの雷さま、ひねくれた頑固者であったため中々うまくいきませんでした。そんなであったためすっかりいじけてへそを曲げてしまった雷さまは、ある時こう思いました。
「俺ばっかり一人で過ごさなければならないのは納得がいかないぞ、他の者どももみんな一人ぼっちにしてやろう。」
そう言った雷さまは短い顎髭をなでながら、ひとつのアイデアを思いつきました。それは雷と共に人々からへそを取るというものでした。へそとは子供が親から生まれた証そのもの。それがなくなれば家族はバラバラになり、みんな一人ぼっちになると考えたのです。
そうして、雷さまは自分が思いついたこの素晴らしいアイデアを実行に移しました。自慢の太鼓をドンドン鳴らして雷を轟かせ、人々の注意を引き付けます。そしてビカッと光る電光に目をくらませた人々からサッとへそを奪いました。これにはみんな驚きました。
「へそが、へそがなくなっちまった!」
「私も!」
「俺もだ!」
みんな大慌て、でも一つだけ雷さまが思っていた通りにはいかないことがありました。
「へそがなくなるなんて信じられないけど、こんな時こそ家族団結だよ!」
「大丈夫、お母さんがいるからね」
家族はバラバラになるどころかより一層の絆を見せたのです。これには雷さまもびっくり仰天。そして、目の前の美しい絆を前に自分のやったことが情けなくなり、再び鳴らした雷と共に人々にへそを返し、二度とへそを奪うことはしなかったそうです。
「て言う話が元になって雷のときはへそを隠せって話ができたわけよ。どうだ、知らなかったろ」
ガハハ、と笑ったあとおじさんはこう続けた。
「雷さまって奴は頑固者でどうしようもない奴だったけど、心の底からみんなと仲良くしたいって思ってた奴だったよ…っとついつい話すぎちまったな。ありがとよ、兄ちゃん。」
そういっておじさんはカウンター席から立ち上がった。
去っていくその背中からドンドンと太鼓の音が聞こえた気がした。
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