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狐の話
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カフェの一席に座ってぼんやりと外を眺めていた。しとしとと雨が降っているのに空は青い顔を覗かせていた。
「お兄さん?隣いいですか?」
見ると若くて美人な女性が立っていた。切れ長い目が今も印象に残っている。
どうぞ と勧めると女性は向かい側に腰掛けた。栗色の髪が愛らしく揺れる。
「雨、止みませんね。」
女性が空を見上げながら言った。
「こういう天気のこと、『狐の嫁入り』なんていったりしますよねぇ。なんでか知ってます?…ふふふ、そうですか。それなら教えてあげましょう。」
昔々、今より狐という種族は変化の術を用いて人間を超える栄華を誇っていました。そんな狐の社会は一族の中でもっとも変化の術がうまい家系が当主として代々治めるのが伝統でした。しかし、そんな狐にも敵対相手がいました。狐以外で変化の術を使う唯一の種族、狸達です。互いに変化の術を使うこともあって何かとぶつかり合うことがあり2つの種族はあまりいい仲とはいえませんでした。
そんな中、一つの事件が起こります。狸の当主の息子と狐の当主の娘が結婚すると言い出したのです。
二匹の当主は強く説得を繰り返しましたが、子どもたちの意志は固く、中々上手くいきませんでした。そこで二匹の当主はこっそり落ち合い話し合いました。
「やい、タヌ助。お前の息子がうちの娘をたぶらかしたと聞いたぞ。いったいどうなっている。」
「知るか狐野郎。お前の娘が俺のせがれを引っ掛けたんじゃないのか?」
こんな感じで仲は悪いものの、子供の幸せを考え渋々ながら結婚を認めることにしました。
しかし、結婚にあたって一つの問題が。狐の娘が嫁に行くのか。狸の息子が婿に来るのか。どっちにするか決められないのです。今とは違って厳しいしきたりが多い時代でしたから、この問題はかなり深刻でした。普通は世間的に強い家のほうに籍を入れる、というのが一般的でしたが、この2つの種族は甲乙つけがたいほどその強さは拮抗していました。当主たちは話し合った挙げ句、一つの方法を思いつきました。それは変化の術が強いほうに籍を入れるというものです
「しかし、どうやって変化の術を比べればいいのか。」
「俺にいい考えがあるぞ、狸。俺は術を使って、天気を晴れにし続ける。そしてお前は逆に天気を雨にし続ける。そうやって術をかけ続け、先に疲れて術をかけられなくなった方が負けだ。」
「なるほど、そりゃあわかりやすい。早速始めよう」
二匹は向かい合って互いに空に向かって術をかけはじめました。狐は晴れに。狸は雨に。
術をかけられた空は荒れに荒れ、青くなったと思えば土砂降りになり、小雨になってはいきなり快晴になったりと、まるで魚がのたうち回っているようでした。そんなであったため、狐も狸もたまったものではなく気づけば二人の周りには誰もいなくなってしまいました。二匹の戦いは三日三晩続きました。
そしてとうとう二匹は力尽きて、一緒になってひっくり返ってしまいました。
突然術が途切れた空は雨と晴れが混ざり合い、晴れ渡っているのに雨が降っているという不思議な天気が生まれた。
ひっくり返った二匹に狐の娘と狸の息子は駆け寄りながら言った
「見てください。狐と狸が力を合わせればこんなにも美しい景色を作り出せるのです。」
「狸と狐は共に生きていけます。」
狐と狸の当主は子どもたちの言葉に胸を打たれ、仲良く生きていくことをきめた。
その後、狐の娘が狸の息子に嫁いりして2つの種族は仲良く過ごすようになりました。結婚式の日、空は晴れているのに雨が降っていたそうです。
「というわけよ。あ、ごめんなさい。喋りすぎてしまいました。それでは、私はこれで…」
女性はその栗色の髪をなびかせながら去っていった。
雨はまだ降り止まない。
「お兄さん?隣いいですか?」
見ると若くて美人な女性が立っていた。切れ長い目が今も印象に残っている。
どうぞ と勧めると女性は向かい側に腰掛けた。栗色の髪が愛らしく揺れる。
「雨、止みませんね。」
女性が空を見上げながら言った。
「こういう天気のこと、『狐の嫁入り』なんていったりしますよねぇ。なんでか知ってます?…ふふふ、そうですか。それなら教えてあげましょう。」
昔々、今より狐という種族は変化の術を用いて人間を超える栄華を誇っていました。そんな狐の社会は一族の中でもっとも変化の術がうまい家系が当主として代々治めるのが伝統でした。しかし、そんな狐にも敵対相手がいました。狐以外で変化の術を使う唯一の種族、狸達です。互いに変化の術を使うこともあって何かとぶつかり合うことがあり2つの種族はあまりいい仲とはいえませんでした。
そんな中、一つの事件が起こります。狸の当主の息子と狐の当主の娘が結婚すると言い出したのです。
二匹の当主は強く説得を繰り返しましたが、子どもたちの意志は固く、中々上手くいきませんでした。そこで二匹の当主はこっそり落ち合い話し合いました。
「やい、タヌ助。お前の息子がうちの娘をたぶらかしたと聞いたぞ。いったいどうなっている。」
「知るか狐野郎。お前の娘が俺のせがれを引っ掛けたんじゃないのか?」
こんな感じで仲は悪いものの、子供の幸せを考え渋々ながら結婚を認めることにしました。
しかし、結婚にあたって一つの問題が。狐の娘が嫁に行くのか。狸の息子が婿に来るのか。どっちにするか決められないのです。今とは違って厳しいしきたりが多い時代でしたから、この問題はかなり深刻でした。普通は世間的に強い家のほうに籍を入れる、というのが一般的でしたが、この2つの種族は甲乙つけがたいほどその強さは拮抗していました。当主たちは話し合った挙げ句、一つの方法を思いつきました。それは変化の術が強いほうに籍を入れるというものです
「しかし、どうやって変化の術を比べればいいのか。」
「俺にいい考えがあるぞ、狸。俺は術を使って、天気を晴れにし続ける。そしてお前は逆に天気を雨にし続ける。そうやって術をかけ続け、先に疲れて術をかけられなくなった方が負けだ。」
「なるほど、そりゃあわかりやすい。早速始めよう」
二匹は向かい合って互いに空に向かって術をかけはじめました。狐は晴れに。狸は雨に。
術をかけられた空は荒れに荒れ、青くなったと思えば土砂降りになり、小雨になってはいきなり快晴になったりと、まるで魚がのたうち回っているようでした。そんなであったため、狐も狸もたまったものではなく気づけば二人の周りには誰もいなくなってしまいました。二匹の戦いは三日三晩続きました。
そしてとうとう二匹は力尽きて、一緒になってひっくり返ってしまいました。
突然術が途切れた空は雨と晴れが混ざり合い、晴れ渡っているのに雨が降っているという不思議な天気が生まれた。
ひっくり返った二匹に狐の娘と狸の息子は駆け寄りながら言った
「見てください。狐と狸が力を合わせればこんなにも美しい景色を作り出せるのです。」
「狸と狐は共に生きていけます。」
狐と狸の当主は子どもたちの言葉に胸を打たれ、仲良く生きていくことをきめた。
その後、狐の娘が狸の息子に嫁いりして2つの種族は仲良く過ごすようになりました。結婚式の日、空は晴れているのに雨が降っていたそうです。
「というわけよ。あ、ごめんなさい。喋りすぎてしまいました。それでは、私はこれで…」
女性はその栗色の髪をなびかせながら去っていった。
雨はまだ降り止まない。
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