旅する二人の小説家

夜船 銀

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帰り道

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「やーすごかったね!アラジン!」
ホテルまでの帰り道を歩きながら興奮した様子でベルははしゃいでいた。ブロードウェイの舞台を見るのは初めてだったが、音楽や役者の演技が生み出す臨場感は生でないと味わえないものだった。あとジーニーが最高に面白かった。そんなつもりはなかったのだがこれは記事にせざるを得ないだろう。
「あぁ、ジーニーってやっぱり面白いよな。セリフとかキャラクターがさ」
「分かるー」
現在時刻、午後10時。ニューヨークの街は眠ることを知らない。
「小説のネタになりそう?」
「もちろん。やっぱあれぐらいのユーモアが必要だってわかったよ。帰ったらすぐ仕上げにかからないとな…。それが終わったらそろそろ別の場所に行こうかね」
「候補は?」
「洒落た都市風景は十分目に焼き付けたしなー…。きれいな海が見える所がいい」
「いいね」
いつだって私達親子は、面白おかしい旅を求めている。

その晩、ベットの毛布にくるまって横になっているそばの机で燕先生は宣言通り小説の仕上げをしていた。流石にベルも17歳、いつもは二部屋とって部屋は別々なのだが今回は予約のミスによって一部屋しか部屋を確保できなかったのだ。

幼いときから燕先生は私の寝ている横で小説を書くことが多かった。そして、小説を書いている音を聞くと安心するのだ。その音はときにパソコンのタイプ音だったり、原稿にペンを走らせる音だったり、はたまた考え込むように「う~ん」と唸るような声だったり様々だったけど、隣で小説が出来上がっていく音を聞いていると、ベルは小さい子供が寝る前に読み聞かせをされたように幸せな心地で眠りにつけるのだ。

『次の目的地か…』
まだ見ぬ旅の行方に胸を膨らませながら若い物書きは夢に落ちていった。
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