旅する二人の小説家

夜船 銀

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浅草のアジト

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いつだってこの街は人が多い。首都だからってどこもすし詰めになるくらい多い。あまりに多すぎてここを歩いている人たちはちゃんと全員に行き先があるのだろうか。本当は半分くらい都会を演出するためにあるき回っていサクラなのではないかと疑ったことも何度かある。でも、外国人観光客が多いから何かと目立つ私の目も変に目立つことはないから歩きやすくて私は好きだ。にぎやかで、人が温かい。
東京、浅草。燕先生の故郷。

私と燕先生は浅草にある拠点のマンションの一室に帰って来ていた。何も私達は根無し草の旅をしているのではない。ここで新たな旅の計画を立てたり仕事の段取りを整えるために一度取材が終わると、ここへ帰ってくるのだ。何より、安心してただいまーと言える場所が必要なのだ。

私の部屋と燕先生の部屋とリビング兼ダイニングの三部屋にキッチンと風呂、トイレがあるくらいのそんなに立派な感じではない一室だけど、私が育った実家だ。

「ただいまー、今回も締め切りに超ギリギリで間に合ったから軽く怒られるくらいで済んだよー」
燕先生が小説の担当編集との打ち合わせを終えて帰ってきた。その編集さんというのは先生と昔からの友人らしい。ちなみに、私に目をかけてくれて旅行記や旅行記事を会社にプロデュースしてくれたのがその人。私の書いたものも実はその編集さんを通して本や雑誌に載せてもらっているのだ。私は締切に余裕をもって書いてるから自分のブログと並行して書いてても怒られたことなんてないけどね。
「おかえりー、夕飯カレーでいい?」
「いいよーありがとう」
夕飯を作るのはだいたい私の仕事だ。
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