旅する二人の小説家

夜船 銀

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次の目的地とそれにまつわる作戦会議

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「それではぼちぼち腹も膨れたところで次の旅の作戦会議を始めたいと思います。」
カレーを食べ終わった後、燕先生はこう切り出した。
我が家で次の目的地を決める大まかな流れはこうだ。まず、お互いが書きたいものを書くために必要な取材先のポイントをすり合わせること。今回はニューヨークで燕先生が言っていたようにきれいな海がある所にする、ということで一致している。次にお互いにいいと思える場所をリサーチする。この時なぜ自分はその場所がいいと思ったのか明確に考えておくことが重要である。そして最後に互いにいいと思った場所を紹介しあってどちらかの案を採用するのだ。何かとうまくいっている方法で、いままで燕先生も私も取材で何かしらのアイデアを持ち帰って文章を書くことができていた。しかしこの方法、重大な欠点がある。
「絶対こっちの方がいいって!」
「いやこっちの方がいい」
「そもそもなんで今更モルディブなの?」
「作品の雰囲気を掴みたいんだよ!」
そう、かなりの高確率で喧嘩が勃発するのだ。そりゃあ、お互いに自分の行きたい所を押し通そうとするのだから揉めるのは目に見えている。今回、きれいな海が見たいという方向性は合致していたのだが、私はイタリアの地中海、燕先生はモルディブと大分雰囲気が異なるのだ。どうやら燕先生は自然豊かな島国でのファンタジーが書きたいらしい。ちなみに私は海の見える街の旅行記が書きたい。ここまで方向性が違うと、今夜も長くなりそうだ。
その後説得を続け、街が舞台のファンタジーを考えてみてはと提案した所、次の次の旅の目的地は燕先生が決める、という条件付きで納得してもらえた。
「毎度毎度粘るなぁ、ベル・ブラウンさん。」
「それはお互い様ですよ、燕 海渡小説家先生。」

そういうわけで私たちの次の行き先はイタリア、アマルフィ海岸。
世界で最も、きれいだと言われる海。
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