旅する二人の小説家

夜船 銀

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朝ご飯

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朝食はベーコンや焼きたてパン、チーズにハム、地元産の新鮮なフルーツなどシンプルながらも種類が豊富で美味しそうだった。何より嬉しかったのは卵料理はその場でシェフが作って席まで運んでくれる所だった。黄金に輝く半熟オムレツが運ばれてきた時はさすがにテンションが上がってしまった。でもその後、ブラックコーヒーが運ばれてきて上がった分のテンションは少々冷めた。

テラス席から海を眺めつつ、朝食を食べる。
『あぁ、なんて贅沢…。私は朝からなんて罪深いことを…』
黄金の半熟オムレツにナイフを入れる。期待どおり、光り輝く黄身があふれる。
『自分ではどんなに頑張ってもできないのに料理人の人はさも簡単そうにつくるんだよね…魔法でも使ってるのかな』
オムレツの味を堪能しながら海を眺める。絵画のようなその景色は見つめ続ければ続けるほど細かい所に気づく。
『あ、あそこに見たことない鳥が飛んでる。日本には多分いないんだろうなぁ。あのヨット、私有物っぽいな。どんだけのお金持ちなんだろ。』
そうか、これは絵そのものなんだ。画家が美しいと思い、絵に落とし込もうとした風景そのものなんだ。
そりゃあ、きれいな訳だ。
目の前の食器達に向き合う。食べ物は食べ尽くし、目の前には一滴も飲んでいないブラックコーヒーのカップが残るのみ。
『お残しはしない主義なんだよなぁ』
コーヒーを口に含む。当たり前だけど凄く苦い。これを好んで飲むような人のために『大人』という言葉があるのだと思えるほどに。思わず顔をしかめて見るものの、どうしようもない。すました顔でブラックコーヒーを飲む『大人』になったつもりでコーヒーを飲む。飲みながらも海を眺め続ける。席に来たときより太陽が少し高い位置に動いていた。

今日見た海の景色とブラックコーヒーの味を、私は覚えておくことにした。
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