旅する二人の小説家

夜船 銀

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取材開始

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朝食を食べ終わり、ホテルを出ると、時計は九時半を指していた。ここからアマルフィ大聖堂まで歩いていけば開館時間くらいには到着できるだろう。
 ベルにとって旅先の街を歩く、というのは最も大事なことの一つだった。みんなも旅行とかで知らない街を歩いている時、感じたことはないだろうか。

特に特別なことをしているわけではないのに、どうも退屈ではない。

ましてはベルは旅が日常の一部なのに、どこへ行ってもこの『非日常』の浮足立つような感覚は衰えることを知らず、それがとても心地いい。
 スマホで道を確認しながらアマルフィを感じ続ける。そもそも、アマルフィの街は山と海の間にすっぽり収まるような形でつくられた街で、海の180°逆には険しい山がどっしりと構えている、まさに自然の要塞なのだ。
 ぽけっと上を見るとやはり今日は気持ちのいい快晴。それを背景にアマルフィ特有のカラフルで高すぎない建物や住居が作り物のようにちょこちょこと整列している。歩く。思っていたより観光客の数が多い、世界一の海の街の称号は伊達ではないのだろう。大柄な黒人男性、ブロンドヘアの白人女性、黄色人種の中年夫婦。
 大勢の人がいる場所で、自分の瞳の青に似ている目をしている人を探してしまう癖がついたのはいつからだったのだろうか。もしかしたらとわずかに期待を抱き続けるのは、いつからだったのだろうか。
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