ニュートンの林檎のアップルパイ

はなえ

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面接官の男の子にバカ丁寧な対応で送り出されて派遣会社のオフィスを出た私は、ビル内のトイレを探す。
 エレベーターホールを通り過ぎ、ビルの端にあった女子トイレに入ると、3つ並んだ洗面台に、窓から太陽の光が注いでいた。
 洗面台の上の鏡の中に映った自分を見る。・・・・・・自然光はキツイ。
 この歳になって、照明の大切さがしみじみと分かってきた。
 百貨店の気の利いたトイレにあるような、下から照らされる照明でなら見るに耐えられるけど、容赦なく自然の光に照らされた自分の顔をみると、ぞっとする。
もう旬が過ぎたんだ、ってことを思い知らされる。
 なんだろう。
 全体的に垂れ下がってきている。
 重力に負けてきている。
 重力って何だ?
 ニュートン?
 りんご?
 理数科目が苦手な私には、小学生の頃にマンガで読んだような、重力=ニュートン=りんご? みたいな、あいまいなイメージしかない。
 たしかこんな話だったはずだ。
 おだやかな午後、大きなりんごの木下で、足を投げ出して座り物思いにふける青年。
 ふいに落ちてくるりんご。
 地面に到達したりんごは、コロコロと転がったかもしれない。
 それをじっと見つめる青年。
 その瞬間、彼は確信する。
 「やっぱあるじゃん、重力!!」
 そのあと、ニュートン青年はどうしたんだろう。
 自分に重力の存在を気付かせてくれたりんごを拾っただろうか。
 それとも、りんごには目もくれず、世紀の大発見に高鳴る鼓動を抑え、家路へと急いだのだろうか。
 できれば、拾ってあげていてほしい。
 大手柄を立てたりんごを。
 ニュートンの両手に包まれ、誇らしげなりんごを想像する。
 そのりんごは、日本のりんごとは少し形が違うかもしれない。
 洋風な、いつか見た絵本の中の白雪姫が口にしたりんごのように、少し縦長で、真っ赤で、つやのあるりんご。
ビルを出て、電車に乗り込んでも、私はぼんやりとりんごのことを考えていた。
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