ニュートンの林檎のアップルパイ

はなえ

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なーんて。
 私は冷たく冷やされたプレミアムモルツを2本、スーパーのカゴに入れる。
 だけど、昔だったらこの幸せは無いよね。 
帰ったら3時くらいかな。昼下がりのプレモル最高!!
 お菓子売り場でポテトチップスを選んだあと、デザートをプリンにするかアイスにするか考えながら売り場を歩いていると、カバンの中でスマホが震えた。
 取り出して見ると、facebookで山野さんが大量の写真をアップしていた。
 ・・・・・・うわ、ビールに合いそう!!
 色んなスパイスにチキンを漬けてオーブンで焼いたらしい料理を見て、口の中によだれが溜まる。この写真でプレモル1本いけるかも。いや、それ悲しすぎるわ、なんか。
 そんなことを考えながら、写真をめくると、美味しそうな料理が次々と現れる。
 これ、カメラはデジタル一眼だな。写真の撮り方にも工夫が見られる。
 スーパーのアイス売り場で、私は1人笑ってしまった。
 自分が作った料理を、色んな体勢で必死でデジカメに収める山野さんの姿が容易に想像できる。
 本気だな、山野さん。これはすごいわ。
食卓のスナップ写真、というよりは、プロのような仕上がりの写真たち。
 それにしても大量だ。
 スマホ画面をタップすると、いろんなメニューが次々に現れる。
 その時、ある写真で自然と手が止まった。
 こんがりとやけたパイと、その奥にのぞく飴色のりんごとレーズン。
 美味しそうな写真の下のコメントを読む。
 「この時は、ちょっと落ち込むことがあったので、アップルパイを焼きました。美味しい物を食べたら、嫌なことなんか忘れちゃいます☆」
 アップルパイかー。長らく食べてないな。こんなの、家で作れるんだ。
 そっか。
 アップルパイを焼こうと思った。
 とりあえず、りんごの爆弾について考えるよりは建設的だ。アップルパイを焼く方か。
 「アップルパイ レシピ」で検索すると、大量のページがひっかかってきて、一番上に表示された有名なレシピサイトを開く。
 そのレシピサイトの中にも色んなレシピがあって、「本格派」とか「かんたん」とか「冷凍パイシートを使って」とか、いろんなキャッチコピーがついている。
 せっかく数年ぶりにお菓子なんて作るんだし、冷凍パイシートはちょっとなぁ・・・・と思って、「失敗が少ない! パイ生地から作る!」というレシピを見る。
・・・・・・・あまりの工程数に驚いた。
 全12工程。それぞれに写真と説明文。読むのがめんどくさくて、早くも挫折しかける。
 まぁでも、生地を作って、リンゴを煮て、オーブンで焼くってことでしょ。
 材料表を見ながら、りんご、小麦粉、バター・・・・次々とカゴに入れ、レジを通ると、既に一仕事終えた気分になる。
 スーパーの袋を指にくいこませながら家に帰ると、リビングで2時間ドラマの再放送を見ていたお母さんが、目を丸くする。
「どうしたの、それ。」
「あー、アップルパイ作ろうと思って。」
「なに急に」
「なんとなく~」
 まだ何か言いたげな顔の母を振り切り、洗面所で顔を洗い、部屋着に着替える。
「アップルパイなんかより、晩御飯作ってよ~。お母さんもタマにはゆっくりしたいの~」
 不満げな声を背中に聞きながら、私はスマホでアップルパイのレシピのページを開き、手順を確認する・・・・
「うわ」
 思わず、声を上げてしまう。
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