四度目の勇者召喚 ~何度召喚したら気が済むんだ!~

遠竹

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第一章 四度目の勇者の実力

戦闘経験向上講座とドワーフの国

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 喧嘩両成敗を終え、食事も終えたので先程の続きをする。
 名付けて、戦闘経験向上講座だ。

「じゃあ、まず俺がモンスターを惹き付けるから、自分でタイミングを見計らって攻撃してみて」
「わかった」

 力強く頷いて答える奈菜に頷き返して、俺は手頃なモンスターを連れてくることにした。
 まぁ、訊いたところによると、奈菜のレベルは42で他のクラスの人達も似たような感じらしい。
 まぁ、他のクラスの人達ならこの辺はレベル均一で20のモンスターしか居ないから楽勝だろう。
 この辺ならまだ数の暴力でいける。
 ただ、今の俺が攻撃すると一撃どころか少し傷を付けただけでレベル差で倒してしまうので、今回は防御に徹することにする。

「おっ、あんなところにいい獲物が」

 見つけたのは、一角狼。
 攻撃力と俊敏性が高く、しかも知能も高いためこちらの攻撃を当てるのは初心者では困難という、鬼畜狼だ。
 思えば、最初に召喚されて最初に戦わされたのがコイツだったな……。
 グランとフーリエに、コイツがこの辺りで一番弱いからって言われて戦ったんだっけ。
 戦ってみて、実は物凄く厄介なモンスターだったって知って、嵌められたって思ったな。
 あれ? 思い出したらムカついてきたぞ?
 もう一回モニュラのパチス炒め激マズバージョン食わせるか?
 まぁ、まだ二人は昏倒中だから仕方ない、起きてからにしよう。
 そんなことを思いながら一角狼を奈菜のところへ連れていった。

「じゃあ惹き付けるから、攻撃よろしく」
「う、うん、わかった……!」

 弱冠怖じ気付いている気がしなくもないけど、そこは頑張ってもらうしかない。

『ガルルルルルルッ!!』

 俺に向かって威嚇する一角狼。
 そして次の瞬間、俺に噛みつこうと口を大きく開けて飛び掛かってきた。
 そこへ奈菜が【氷針アイスニードル】を放った。
 それは一角狼を貫き、大ダメージを与えた。

「いいぞ奈菜、その調子!」

 すると、一角狼が遠吠えをした。

『アオォォォォォォォン!』

 遠吠えを終えると、一角狼は倒れてピクリとも動かなくなった。
 ヤバい、仲間を呼ばれた。
 そう言えばこの一角狼、自分が死ぬ間際になると最後の力を振り絞って仲間を呼ぶんだった。
 俺が初めて戦ったときも呼ばれて大変だった覚えがある。

「な、なに? どうなったの?」
「仲間を呼ばれた。たぶん何十匹と押し寄せてくる」
「えぇ!? ど、どうすれば!?」
「大丈夫、ここには勇者歴4回目の奴がいるんだから。狼の10匹や100匹、魔王と比べたらなんてことないよ」
「そ、そうなの?」

 半信半疑な奈菜に俺が言ったことを証明するため、俺一人で相手して見せることにした。
 しばらくすると、一角狼の集団がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

「き、来たよ? 本当に一人でやるの?」
「大丈夫だから見てなって」

 あの固まり具合なら一発で全部倒せるな。
 そう思った俺は、集団に向けて手をかざす。
 そして【太陽の炎サンフレア】を唱えると、擬似太陽が空中に現れそこから炎の球が一角狼の集団に無数に逃げ場の無いように放たれる。
 炎の球が一角狼の集団に当たると、一角狼達は悲鳴のような鳴き声を上げながら跡形もなく燃え尽きた。

「な、大丈夫だっただろ?」

 そう言って奈菜の方を見ると、奈菜が唖然とした様子で立ち尽くしていた。

「奈菜?」
「祐人って、本当に勇者なんだね……」
「いや、奈菜も勇者だよ?」
「そうだけど……次元が違うっていうか、本当に三回も魔王を倒したんだなって……」

 自信を無くしましたと言いたげな奈菜。
 ん~。これは俺にアドバンテージがあるから仕方ないと思うんだけどな。
 なんせ三回も勇者やったからほとんどの魔法覚えちゃってるし。

「大丈夫だよ、クラハシさん。これから頑張ればユウト程でなくても、他の勇者よりは強くなれるよ!」
「なんせ魔王と直に戦った3人から学ぶのだからな。強くなって当たり前だ」

 いつの間にか復活したグランとフーリエが奈菜にそう言った。

「そうだ、グラン、フーリエ。一角狼と戦って思い出したんだけど、最初の召喚の時、俺に一番最初の実戦で戦わせたのが一角狼で、しかも俺のことが嫌いだからってサポートも何もせず一人で戦わせたよな? 厄介なモンスターと知りながら」
「あ、あれ? 嫌な予感がするよ、グラン……」
「あぁ、こればかりは、フーリエと同意見だ……」

 そう言った後、クルリと方向転換した二人が逃走を図ったので、二人に向けて【麻痺の矢パラライズアロー】を唱えて放った。
 矢は二人に命中し、二人は揃って「くふぅ」という声を上げながら倒れた。
 攻撃力は無いのでHPは減らないが、レベル最大の俺が放った矢の麻痺の効果は絶大なので、高レベルのグランとフーリエにもちゃんと効く。
 それから俺は二人のモニュラのパチス炒め激マズバージョンを持ってきて二人の前にしゃがむ。

「ま、待ってユウト! あの時はユウトの人格を知らなかったあたい達が未熟だったんだよ!」
「そうだぞ、ユウト! 今の私達がユウトを嫌いなはずがないだろう?」
「うん、それはわかってるけど、思い出したらムカついたんだよ。それに、あの時はまだ知り合ったばかりだったからその場で許したけど、今は仲良しだもんな。だから、快く罰を受けてくれるよな?」
「「ヒィッ!?」」
「天誅!!」

 そう叫びながら二人の口の中にモニュラのパチス炒め激マズバージョンを突っ込む。

「むぐっ!? んんんんんんんん!?」
「うぐっ!? ぐおぉぉぉぉぉぉ!?」

 そんな呻き声を上げると、二人は揃って夢の彼方に誘われた。
 安らかな眠りを……。
 死んだ訳じゃないけど。

「ゆ、祐人? 今のは、さすがにやり過ぎなんじゃ……?」
「だって、一角狼を一人で戦わさせられたんだよ? しかも、さっきみたいに遠吠えで仲間呼ばれて、それでも一人で戦わさせられた俺の気持ちがわかる!?」
「ま、まぁ、確かに、気持ちはわからなくもないけど……」
「しかもその間二人が何してたか、教えようか!?」
「う、うん」
「ずっと城で自分のことしてたんだよ! するか、普通!? この世界で右も左もわからない異世界人が、勇者として戦うのにそれを戦いの場に放置しやがって! あぁ、クソッ、またムカついてきた。もっかいこれ口にぶち込むか」

 そう言いながら俺が気絶している二人の口にモニュラのパチス炒め激マズバージョンを突っ込もうとすると、奈菜とリルに体ごと止められた。
 ふん、二人とも、奈菜とリルに感謝するんだな。
 その後、気を取り直してグランとフーリエが目覚めるまで奈菜の戦闘経験向上講座を続けた。


 ◆◇◆◇◆


 グランとフーリエが目覚めたので、奈菜の戦闘経験向上講座は中断し、陽も暮れてきたため次の国へ向かった。
 魔王が居る国へは、途中宿に泊まったり野宿したりするのを含めて歩いて1ヶ月半は掛かる。
 中々に遠いが、毎回のことなので慣れてしまった。
 次の国は、ドワーフが治める国で、当然王とも知り合いだ。
 その国の門まで行くと、門番が検問をしていた。
 結構並んでいて遅くなりそうだったが、ここからしか入れないので仕方なく並ぶ。
 やっとのことで俺達の番になって門番の傍に行くと、その門番に見覚えがあった。

「こ、これは、ユウト殿! お久しぶりです! また召喚されたのですね」
「そうなんだよ。もうなんか誰かの陰謀なんじゃないかって思ってるんだけどさ」
「確かに四度目ともなるとそう思わざるを得ませんよね……」

 俺の考えに門番が苦笑いしながら同意してくれる。
 それから荷物チェックなどを行った後、兵士の案内のもと城へ行くことになった。
 城に行く道すがら、町の人は俺を見るなり「あぁ、もう魔王復活の時期か」という、もう魔王が驚異ではないような何かの恒例行事的な感じで話し始める。
 中には、こんなことを言いに来る人も居る。

「ユウト様。魔王を倒してくださるのはありがたいのですが、今回もユウト様なのですか?」

 うん、それはこっちのセリフだよね。
 好きでこの世界に4回も召喚されてるんじゃない。
 ピンポイントで俺が召喚されるんだ。
 理由は不明だが座標が俺に固定されてるらしいし。
 今回はそのせいで周りにクラスの人達が居たために巻き込んでしまった訳だけど……。
 この時の返事は思ったことを言ったのではなく、門番に言ったことと同じことを言っておいた。
 その方が納得してくれる気がしたからだ。
 とまあ、そんなことがありつつも城に到着した。
 到着するとそのまま謁見の間に通され、ドワーフの国の王であるジャナックと対面した。

「……まぁ、なんだ、久しぶりとでも言っておこうか。ユウト」

 まるで会いたくなかったかのような物言いの彼は、見た目は青年だが年齢は三百五十とドワーフの中では最高年齢の人物だ。

「なに? もしかして、俺に会いたくなかった?」
「いや、そうではないが。さすがに4回目だぞ? 誰かの陰謀ではないのか?」
「クロード曰く、召喚の座標が俺に固定されているそうだ」
「それは最早もはや陰謀ではないのか?」
「まぁ、それは後々わかるんじゃないかな」
「なぜそう思う?」
「ただの勘」

 俺の言葉にジャナックがズルッと肘掛けからずり落ちる。
 俺はふざけてないぞ。大真面目だ。

「それでは、確証が無いではないか……。まあいい。それで、そこの見知らぬ女性は?」
「あぁ、今回俺の他にも勇者が大勢召喚されてるんだ。彼女はその中の一人で、倉橋奈菜だ」
「倉橋奈菜です」
「そうか、つまりユウトの召喚に巻き込まれたということだな」

 中々察しと理解がいいジャナックは、他の人が俺のせいでこの世界に来たことを理解したようだ。

「話は変わるが、今回も魔王退治の前にユウトにやってもらいたい依頼がある」
「今度はどんな仕事なんだ?」
「なに、前回よりは軽いものだ。最近ボルケイノドラゴンがこの辺りを飛んでいてな。その退治を頼みたい」
「前回より難易度上がってる!? 前回の仕事は鉱山に蔓延ったモンスター達の殲滅だっけど、今回はボルケイノドラゴン退治!? 絶対難易度上がってるって!」
「広い鉱山のモンスター殲滅よりは簡単だろう?」
「ボルケイノドラゴンの方が厄介に決まってるだろ!? アイツ、毒の霧とか広範囲のブレスとかあるんだぞ!」
「前回でレベルが最大になった勇者ユウトなら簡単だ。頑張ってこい」

 最早もはや確定事項なんですね、わかります。
 仕方ないので渋々ではあるが、ボルケイノドラゴン退治に繰り出すことにした。
 他人事だと思ってジャナックの奴、不適な笑みを浮かべやがって!
 無理やりにでも連れてってやろうかな。
 そうすれば弁えてくれるだろう。
 でも、無理なんだよなぁ……。
 ジャナックの護衛って意外と優秀なんだよ。
 レベルとか関係なく類い稀な息の合った集団戦法で捕まえに掛かるから手の出しようがない。
 というわけで、悔しいがやめておこう。

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