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第一章 四度目の勇者の実力
謁見と女神
しおりを挟むあの後、確実にホモということが明らかになりそれはもう歩きにくくなるくらいにベッタリとくっついたままのユールを連れ、城へ向かうこととなった。
そうそう、なんで俺が居ることがわかったのかと訊いたところ、返ってきた言葉が「ユウトの匂いがしたから」だった。
城から門まで数百メートル離れてるんだけど、獣人は鼻が利くから当然か……。
さらに、道すがら街の獣人達から「また召喚されたのですね」ということや、俺にベッタリのユールを見て「いつも大変ですね」ということを生暖かい目をしながら言われた。
そう思うなら、なんとかしてくれ……!
ユールはユールで、「僕とユウトは結婚するんだ!」と吹聴して回るから益々大変だった。
ここはビシッと言い聞かせないといけないな。
「いいか、ユール。俺はお前とは結婚しない。絶対だ。死んでもしない」
「えっ? 『お前と結婚のは絶対だ。たとえ死んでも結婚する』? そ、そんなこと言われたら、さすがに照れるよ……」
エヘヘと人差し指で自分の頬を掻くユール。
「うわコイツ、リーアと同じで鼓膜が機能してないぞ……!?」
俺がそう言うと、リーアが怒り出した。
「心外です! ユールさんと同じだなんて!」
それに対し、菜奈が的確なツッコミを入れた。
「いや、リーアちゃんもあんな感じの時あるよ?」
「菜奈さんまで!? 酷いです! ……まぁ、ユウト様の気を引くためにわざとしてましたけど……」
チラッと俺を見ながらそう言うリーア。
あっさり認めたな。
最後のはボソッと言っていたが、俺には聞こえたぞ。
まぁ、今の俺とリーアの関係を考えると、リーアの作戦は成功したということになる訳だから、俺としてはこれ以上は何も言えないけど。
「とにかく、男のお前とは結婚しないからな!」
「男の僕とは……ハッ、そうか! 僕が女の子になれば結婚してくれると、そういうことだね!」
なんか言い始めたぞ……!?
面倒臭いわぁコイツ。
「ねぇユウト? 女になるにはどうすればいいかな?」
どうすればって言われても、この世界は性転換の手術ができる程医療が進んで訳じゃないし……って、なに真面目に考えてるんだ俺は!?
「知るかっ! 自分でなんとかしろっ!」
「仲睦まいことだな。やはりユールを貰ってくれんか? ユウトよ」
「どこが仲睦まじいんだ!? お前の目は節穴か、ランギール! それに、俺は男と結婚する趣味はないっ!」
「そうか、それは残念だ……。ユールよ、今は諦めておけ。後で作戦を練ろう」
「はいっ! 父上っ!」
作戦ってなんだよ!?
女の子でならともかく、男の子で攻略されて堪るか!
「まぁ、それはさておきだ。此度の勇者召喚で召喚されたのはユウトだけではないとの話だが、正直ユウトのみで充分だと我は思っている。しかし、何分魔王軍は数が多い。魔王はユウトに任せて魔王軍の方に専念した方がいいと我は思うのだが、どう思う?」
意外と真面目な話にシフトしたので面食らったが、確かにその方が良いと俺も思う。
だって、まだ皆のレベルは70になったばかりで、魔王と戦うにはレベルが足りてないし。
そんなランギールの質問に答えたのは、鳴神先生だった。
「確かにその方がいいかもしれません。ですが、彼だけに任せるのは、同じ勇者として恥ずべきことです。ですから、一刻も早くレベルを上げ、彼の援護ができるぐらいまでにはしたいと思っております」
「ふむ……お主、名は?」
「鳴神瞬と申します」
「シュンか、覚えておこう」
なんか、知らないうちにランギールに気に入られたっぽい鳴神先生。
流れに思考が追いついていないのか、ランギールの言葉の後から鳴神先生は困惑した様子だ。
たぶん頭の中はクエッションマークで一杯だろう。そんな顔をしている。
「話はこれくらいにしておこう。長旅で疲れたであろう。部屋を用意するのでゆるりと休まれよ。ではユールよ、作戦を練るぞ」
「はいっ! 父上っ!」
そう言ってランギールとユールは去っていった。
その後、各々部屋へ案内され、休憩を取った。
……俺を除いて。
なぜかって? 部屋に入るなり菜奈がやって来て現在進行形で正座させられてるからだよ。
「祐人、私、怒ってるんだよ? なんでかわかる?」
「はい……ユールの事、ですよね?」
「そう。……なんであの子は祐人と結婚したいって言うぐらい慕ってるわけ?」
「えっと、ですね……。三度目に召喚された時にこの国に来た時、ユールが人間に拐われたことがきっかけで人間嫌いになり部屋に籠りっきりになったのをどうにかしてくれと頼まれまして、それであの手この手で色々頑張ってるうちに懐かれちゃって、その時からなぜかもう本当に不思議なことに今の感じになってました」
「ふぅん……」
菜奈の疑いの目が怖い……!
本当のことを言っていても動揺してしまう。
「まぁ、いいよ。今日一緒に寝てくれたら許してあげる」
「はい、喜んで」
というわけで、今日は菜奈と一緒に寝ることになった。
寛大な処置に感謝しないとな。
◆◇◆◇◆
翌日。
まだ寝ている俺の部屋に誰かが訪ねてきた。
部屋のドアのノックの音がしたので起き上がってドアを開けに行った。
ちなみに、菜奈はまだ寝ている。
「はい、どちらさ……ま……?」
ドアを開けた先に居たのは、リルと同い年ぐらいの獣人の美少女だった。
ん? いや、待てよ? よく見たらユールにそっくりだな……。
ま、まさか……!?
「どう、ユウト? 可愛いでしょ? 本物の女の子になったよ!」
「ゆ、ユール!? どうしたんだお前!? 本物の女の子ってどういうことだ!?」
何が起きてるのかさっぱりだ。
だが、確かなのは、目の前に居るのがユールで見た目が完全に女の子になっていること。
胸もそこそこ有るし、髪も地毛が伸びた感じだし、顔は元々美形だったから然程の違和感もないし、声も女の子のものになってるし……いやマジでどうなってるんだ?
「なんか、女の子になりたい! ユウトと結婚したい! って思ってたら夢の中で女神様が出てきて『その願い、叶えて差し上げましょう』って言われて、起きたら本当に女の子になってた!」
「いやちょっとなに言ってるかわからない……」
そう言いつつ、頭の中でユールの言葉を整理する。
まず、願望を強く思っていたら夢の中に女神様が出てきた。
それで、願いを叶えて差し上げましょうとか言われて起きたら本当に女の子になっていたと。
うん、さっぱりわからん。
この世界での神は、実在はしているが姿を現したことはないらしい。
最初の魔王との戦いが始まった時に現れ、勇者召喚の魔法陣をクロードの国の初代国王に授けたその一度っきりだけだそうだ。
「それでね、その女神様がユウトに伝えてほしいことがあるって言ってた」
「なんだ?」
「『召喚の座標を固定したのは私です。なぜなら、貴方の人徳や力がこれからのこの世界に必要だからです。この世界に残る決断をしてくれたこと感謝します。いずれ話す機会もあるかと思いますので、その時はよろしくお願いします』って言ってたよ」
犯人は女神だったか。
それにしても、俺の人徳と力がこれからのこの世界に必要ってどういうことだ?
まぁ、今はそれよりもユールのことだ。
「それはそうとユール。これから一生女の子だけどいいのか?」
「なんで? 女の子になったら結婚してくれるんじゃないの?」
「いや、べつに結婚するなんて言ってないんだけど……」
「いいじゃん祐人。それだけ祐人のことが好きってことなんだから」
「な、菜奈!? いつの間に!?」
声がした方へ振り向くと、目を擦りながら立つ菜奈が居た。
「話は全部聞いたよ。ユールくんが女の子になったのは驚きだけど、リーアちゃんも納得してくれると思う」
「そう言えば、ランギールには話したのか?」
「うんっ! 父上は『おぉ! こんなに可愛くなって! これならユウトも一ころだな! さぁ、すぐユウトのもとへ行け!』って言ってたよ!」
まぁ、確かに可愛いよ?
目を奪われるくらいには。
菜奈の言い分もわからないでもないし、ユールの気持ちも理解できないわけではない。
でも、可愛いことと結婚することは別である訳で、元男の子を嫁にする俺の気持ちにもなってくれよって話。
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