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第一章 四度目の勇者の実力
魔王襲来と鳴神先生
しおりを挟む「ねぇ、いいでしょ? ねぇってば!」
ユールに両肩を掴まれ前後にガックンガックン揺らされているのだが、何を聞かれているかと言えば、いわずもがな結婚についてだ。
俺と結婚したいと言いながらガックンガックン揺らされているせいで、考えられないし答えられない。
結婚したいって言われても、一人と結婚しても大変なところ既に二人も居るのに一人増えるのは、将来的な不安があるんだけど……。
主に子どもができた時の。
養育費って、この世界だとどのくらいかかるんだろうか。
今後のために誰かに聞いておくか。
「ねぇ、聞いてる? 僕と結婚しようよ!」
「ユールく……ちゃん、そんなに揺らしたら祐人答えられないよ?」
「あっ、そっか。でも、エヘヘ、ユールちゃんか……」
「あ、ごめんね、嫌だった?」
いや、明らかに嬉しそうな顔してるけど?
「ううん、嬉しいんだっ! 本当に女の子になったんだなって思って!」
ほらやっぱり。
「で、祐人、決まったの? 私としてはユールちゃんをお嫁にしても良いと思うけど」
「まぁ、そうなんだけど、リーアにも確認しないと……」
「呼びました?」
「「「うわっ!? ビックリしたっ!?」」」
開いていたドアからヒョコッと現れたリーアに驚く俺達。
いつからそこに?
「話は聞きました。私もユールさんをお嫁にしても良いと思います。あとはユウト様次第です」
リーアがあっさりとそう言い終えると、ユールと菜奈が俺の方を見る。
その目の真剣さに圧された俺は、観念することにした。
「……わかった。ユール、これからよろしく」
「……! うん!」
弾けるような笑顔で返事をしたユールは、菜奈とリーアと喜びを分かち合った。
い、言ってしまった……!
魔王を倒した後の生活基盤どうしよう……?
一応冒険者ギルドがあるにはあるけど、俺がなると目立つんだよな。
顔知られてるから。
まぁ、これはまた魔王を倒した後にでも考えるか。
「というか、ベタベタくっつくな!」
「えぇ、いいじゃん。それとも、僕のこと嫌い?」
「元が男の子だからまだ抵抗があるんだよ……。べつにユールのことが嫌いな訳じゃない」
「じゃあユウトのために女らしくなるように頑張るね!」
ニコッと笑顔でガッツポーズをしながらそう宣言した。
頑張ってくれるならそれに期待しよう。
それにしても、よく三人嫁にする決断をしたな、俺……。
三人とも美少女なのが不思議というか、それ以前に俺に彼女ができたことすら不思議だ。
フラグを立てた覚えはないし、第一顔が普通だから。
何をもって普通なのかは自分でもわからないが、周りと比べればイケメンでもブサイクでもないっていう顔だから、真ん中という意味での普通だと思う。
そんなことを思っていると、誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。
そして、その誰かは俺の部屋の開けっ放しのドアのところに立った。
それは、獣人の兵士だった。
兵士は慌てている様子で、余程急いで走ってきたからか肩で息をしていた。
取り敢えず息を整えさせてから話を聞くことにした。
「落ち着いたか?」
「はい、申し訳ありません。もう大丈夫です」
「で、どうしたんだ?」
「そ、それが……」
溜めた兵士が言い放った言葉は次のようなものだった。
「魔王です! 魔王がやって来ました!」
……マジか。退っ引きならない事だとは思ったが、まさか魔王がやって来たとは思わなかった。
「しかも、ユウト殿を出せと言っているのです!」
しかも俺を要求していると。
じゃあ仕方ないな。行くしかない。
「わかった、すぐ行く。菜奈とリーアとユールはどうする?」
「付いてくに決まってるでしょ」
「私もです」
「僕も付いてくよ」
当然とばかりに誇らしげに言う三人に頷き返して、一緒に魔王が居るところへ向かった。
魔王は、城の外の庭で仁王立ちをして待っていた。
クラスメイト達も入り口を出たところに全員居た。
魔王は相変わらず偉そうな奴だな。
しかも、俺と同じ年齢の容姿に見えて且つイケメンとか反則だろ。
口調がミスマッチだけど。
「来たか、勇者ユウト。待ちわびたぞ」
「こんなところへ単身で来るなんて、余程戦闘に自信があるんだな。俺に三回も負けたくせに」
「あれは貴様が我輩の弱点を突いてきたのが悪いのだ! 決して我輩が弱かったのではない!」
負け惜しみかよ。
若冠涙目なのは無視しておこう。
「じゃあ今回はちゃんと正々堂々戦ってやるよ」
「言ったな! 絶対だぞ! 絶対だからな! ズルするんじゃないぞ!」
「必死だな!?」
それでも魔王か……! って、こんなことをしてる場合じゃない。
なんでここに来たのか聞かないと。
「それより、なんでここに来たんだ?」
「我輩の右腕、プリンアラモードを返してもらいに来たのだ」
「プリンアラモードじゃなくて、クリスタラノードだろ?」
「あっ……ゴホン。我輩の右腕、クリスタラノードを返してもらいに来たのだ」
テイク2して無かったことにしようとしてるな?
そうはさせない。
「自分の部下の名前間違えるか、普通」
「わ、我輩は間違えておらんぞ! 間違えてないったら無いぞ! 間違えたのは勇者ユウト、貴様だ!」
確かに俺も一回間違えたよ、本人の前で。
でも今間違えたのは明らかに魔王だった。
冤罪にもほどがある。
「まぁ、それは置いといて、クリスタラノードを返してほしいんだっけ?」
「そうだ」
「なんで返してほしいんだ? 敵に捕まるような奴だぞ?」
「それは捕まえたのが貴様だったからだろうが! 貴様以外なら捕まるはずがないのだ!」
「いや、捕まったの仕掛けてあった落とし穴に引っ掛かったからだぞ?」
「……」
俺の言葉にしばらく黙り込む魔王。
そして、こう言った。
「きょ、今日のところは帰るとしよう……。勇者ユウトよ、貴様が来るのを首を長くして待っているぞ!」
そう言って踵を返した。
見捨てたな。あれは完全にクリスタラノードを見捨てた。
まさか落とし穴に引っ掛かったとは思ってなかったんだろうな。
そう思っていると、数歩歩いたところで魔王が立ち止まり、振り返って俺を指差してこう言った。
「いいか、正々堂々だからな! 忘れるなよ! 絶対だぞ!」
「わかったから早く帰れ!」
俺がそう言うと、魔王は転移魔法を使って帰っていった。
なんか子どもっぽいところがあるんだよな、あの魔王。
偉大な魔王って名乗るくせに。
偉大さの欠片もない振る舞いだったぞ。いつも通り。
俺と話すときは必ずああなるから不思議だ。
◆◇◆◇◆
「さすがはユウト様です! 魔王に向かって啖呵を切れるなんて!」
「えっ、そこ?」
「だって、魔王は残虐無慈悲な者なんですよ? そんな魔王に向かって啖呵を切れるユウト様は凄いです!」
そんなリーアの言葉に菜奈が同意した。
「そうだよ、祐人。よくあんな怖い人に啖呵切れるね。私は無理だよ」
「怖い? あんなのが? 俺に三回も負けた奴のことが?」
「だってあの人、祐人と話してるとき私のことチラチラ見てきたんだよ? 何されるかわからないから怖い」
魔王の奴、俺に喧嘩を売ってるのか?
正々堂々戦うと約束したが、菜奈に気があるなら話は別だ。
「大丈夫、何かされそうになる前に俺があの世へ送るから」
「祐人……」
安心させるために抱き締めてやると、ユールが羨ましがった。
「いいなぁ、僕も抱き締めてよ!」
「まぁ、それぐらいなら……」
「そしてユウトの匂いを嗅がせて!」
全然羨ましがってなかった。
むしろ画策してた。
というか、思いっきりバラしちゃってるけど……。
「お前、匂い嗅ぐのが目的だろ……!」
「テヘッ、バレちゃったっ」
いや、バレちゃったんじゃなくて、自分でバラしちゃったんだよ。
そんなやり取りをしていると、鳴神先生がやって来た。
「石崎くん。なんで三人に増えてるのかな?」
うわ、ヤバい。
鳴神先生、ニコッとしているけどお怒りのご様子だ。
額に青筋ができてるのがなによりの証拠だ。
というか、なんて説明すればいいんだ?
「えっと……」
「ユールです。女の子になったのでユウトと結婚します!」
「ちょっ、ユール!?」
「ユール? ユールって確か王子じゃなかった? 女の子になったってどういうこと?」
これは、どうしたらいいんだ?
まだ先生にこの世界に残るって伝えてないし、伝えたら伝えたで怒られそうだし……。
「女神様に女の子にしてもらいました。あと、ユウトはこの世界に残るらしいです」
「ユール!? なにサラッと言っちゃってんの!?」
終わった……絶対怒られる。
そう思いつつ先生の顔色を窺うと、先生はため息をついた後にこう言った。
「わかってたよ」
「えっ?」
「石崎くんがこの世界に残るだろうってこと」
「どうして……?」
「だって、倉橋さんとリーアさんが恋人なら、一夫多妻制のこの世界に残るだろうっていう予想はできるよね」
「あっ……」
「だから、残ることに関してはとやかく言わないし、ご両親にもなんとか話すよ」
さ、さすが鳴神先生……。
でも、これでお叱りは回避でき……
「でも、話さなかったことに関しては、言うことがあるよ?」
なかった……。
そしてこの後、鳴神先生のお説教を受け、罰として庭で正座を一時間くらいさせられた。
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