15 / 24
第一章 四度目の勇者の実力
その後と別れ
しおりを挟む魔王を倒しクロードの治める国に戻った俺達は、獣人の国,エルフの国,ドワーフの国でパレードモドキをしながらクロードの治める国に戻ってきた。
帰りはそのせいもあって、馬車でも1ヶ月半掛かった。
行きと合わせて3ヶ月しか経っていないため、送還用の魔力が貯まるまでの9ヶ月は異世界観光となった。
しかし、俺にとってのこの9ヶ月間は地獄のようだった……。
何かと言うと、クラスメイト達にも俺がこの世界に残ることを伝えたのだが、羨ましがる人達も含めて俺が残る理由を察していた。
察していたせいか、自分達が居る間に結婚式を挙げようということになり、俺の意見そっちのけで国を挙げての結婚式の準備が始まった。
まぁ、百歩譲って結婚式を挙げるのは良しとしよう。
菜奈もリーアもユールも喜んでくれてるし。
だがしかし、参列するのが親族やクラスメイト達や先生だけでなく、国民全員もというのが解せない。
どこでいつやるのかと思えば、クロードの演説をするための広場で野外結婚式を2ヶ月後にやるそうだ。
その2ヶ月の間、菜奈とリーアとユールは終始浮かれっぱなしだった。
俺はと言うと、嬉しいことは嬉しいのだが菜奈とリーアとユールを見る度に不安になって気が気じゃなかった。
これがマリッジブルーってやつか。
そんなことを思いながら2ヶ月を過ごし、ついに来てしまった結婚式当日。
誓いを立て、指輪を嵌めてキスをして式を終えると、これで終わりかと思いきやパレードをさせられ、それが終わると今度はパーティーがあり、それが終わるとようやく忙しさから解放された。
まぁ、夜にもしなければならないことが有ったので、それはそれで忙しかったけど。
それからというもの、妻になった三人は今まで以上に俺に対して積極的になった。
ただ、リーアとユールは今までの延長線でベタベタくっついてきたり食事の時にあーんをしてきたりするだけであまり変わってない。
それに比べ菜奈は、くっついてくるのとあーんをしてくるのに加え、俺が一日出掛けると知れば一人で頑張って作った弁当を渡してくれたり、家事全般をしてくれたりと、非常に妻らしいことをしてくれる。
料理くらいはやろうか? と聞いた時の菜奈の答えが、「それは子どもができてお腹が大きくなった時と育児が大変な時期だけ。祐人には、家に居るときぐらいは休んでいてほしいから」だった。
その言葉があまりにも嬉しくて、ついその場の勢いで抱き締めてしまった……恥ずかしい……。
そんなこともありつつ、残りの7ヶ月が過ぎていった。
◆◇◆◇◆
そしてついに召喚されてから一年になり、送還用の魔力が貯まった。
元々帰りたかったという気持ちを持っていたクラスメイトは素直に「やっと帰れる!」と喜んだが、それでも一年過ごしてみたら思ってたよりもこの世界で住むのが楽しいと思ったクラスメイトは「えぇ? もう帰んの?」と名残惜しそうにした。
しかし、鳴神先生の“帰ったら焼き肉を奢る宣言”により「えぇ? もう帰んの?」が「よっしゃ、すぐ帰ろう!」になった。
焼き肉の力ってスゲェー!
というか、この人数の焼き肉を奢るって、鳴神先生の懐事情はどうなってるんだ?
ただ、まだ一部帰りたいような帰りたくないような微妙なクラスメイトが居た。
すると、鳴神先生が俺に向かってこう言った。
「いやぁ、石崎くんに奢れないのは残念だなぁ。本当に残念」
わざと言ってるのを察した俺は、先生の作戦に乗ることにした。
「そうですね。帰らなかったら焼き肉なんてこっちじゃ一生食べれませんからね。心優しい鳴神先生だったら、さぞ美味しいお店に連れてってくれるんでしょうね」
最後にちょっとハードルを上げて返すと、鳴神先生はなんの躊躇もせず、任せろと言った後こう続けた。
「駅前にできた有名店に連れてってあげるよ」
なっ!? 駅前にできた有名店!?
そこに行くとか、先生の作戦に乗らなくても羨ましいんだけど!?
というか、本当に先生の懐事情はどうなってるんだ?
確かあの店、結構お高いお肉ばかりだった気が……。
まぁ、そのお陰でクラスメイト全員が帰る気になったけど……。
しかも、クラスメイト達が喜びのあまり先生を胴上げして大騒ぎする始末。
これには、焼き肉を知らないクロードを始め騎士団の人達,グラン,フーリエ,リーア,ユール達などは何が起きているのかさっぱりだという表情をした。
「ゴホン、そろそろ送還したいのだがよろしいか?」
クロードがそう言うと、我に返ったクラスメイト達は恥ずかしそうに先生を降ろして鎮まった。
それを見てからクロードは言葉を続けた。
「そこにある魔法陣に乗れば送還が始まる。ユウトやクラハシ殿に言いたいことがあれば、今のうちに言っておくとよいだろう」
その言葉を聞いた後、真っ先に先生が話し掛けてきた。
「石崎くんと倉橋さんならこの世界でもやっていけると先生は信じてる。ご両親にはきちんと説明するから安心して。あと、この世界は医療が進んでないから、病気にならないように手洗いうがいをちゃんとすること。自分の命はもちろん、他人の命も大切にすること。むやみに人の命を奪わないようにね。あとは……」
「先生、長い! 早く帰って焼き肉食べようよ!」
「そうそう、そんなハーレム野郎なんて放っといてさ!」
「そうだそうだ!」
焼き肉食べたさに先生の長い別れの言葉に横やりを入れ、サラッと俺の悪口も言ってくるクラスメイト達。
先生はため息をつくと、まとめに入った。
「まぁ、とにかく、体には気をつけてほしいことと、立派な家庭を築いてほしいってことを言いたかったんだよ」
笑ってそう言った後、先生はクロードにも挨拶をしてからクラスメイト達と共に魔法陣に乗った。
すると、魔法陣が光だし、皆の姿が足から消えていった。
消える間際、先生が手を振ってきたので俺と菜奈が振り返したところで、皆の姿は跡形もなく消え去った。
賑やかな連中が居なくなったため、急に静かになって寂しさを感じる俺だった。
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる