19 / 24
第二章 四度目の勇者の10年後
魔王退治へ行く前に
しおりを挟むギルドに行き、ギルド役員全員に魔王退治に行くということを話すと、またかといった呆れの混じった雰囲気になった。
「なんだよ? なんでそんな雰囲気になるんだよ……」
ふて腐れ気味に聞くと、副ギルド長であるフレイスが答えた。
「確かにギルド長は元とはいえ勇者であり、ただ一人のレベル最大をお持ちで、五度も魔王討伐を成した方です。しかし、今の貴方はこのギルドのギルド長です。もう他の異世界人に任せてもよろしいのでは?」
仕事に専念しろ、と言外に言われた気がする。
というかもう顔がそう言ってる。
だが断る! 今回だけは!
「今回だけはやらせてくれ。じゃないと我が子達のために公園を造る計画が台無しになるんだ……!」
俺がそう言った瞬間、フレイスを始めとするすべてのギルド役員がため息をついた。
なぜそうなる!?
俺にとって公園を造ることは、魔王退治より大事なことだぞ!?
魔王退治なんて二の次……いや、百の次だ。
今回は、公園を造る為には魔王退治をしなきゃいけないという条件だから倒しに行くだけだ。
「相変わらず親バカですね……」
「親バカだけど、それがどうかしたのか?」
「……まぁ、仕方ありませんね。今回だけですよ? 次回からは他の異世界人に任せてくださいね?」
「わかった」
「皆、聞きましたね? 言質は取りました。ギルド長、これで言い逃れはできませんよ」
そこまでするのかと思ったが、ギルド長が留守にするのはよくないし、仕方なのないことだと受け入れるしかないか。
◆◇◆◇◆
ギルド役員に魔王退治のことを話し終えた俺は、一旦家に戻った。
そして、聖剣を押し入れから取り出し、さて城に行ってクロードにギルド役員の意見を通すかと思って家を出ようとした。
すると、マルクスが頼み込んできた。
「お願いします祐人さん! 僕も連れていってください! 役に立って見せます!」
まぁ、役に立たないなんてことは無いだろうけど……。
なんせ忍術使えるわけだし。
あ、そうだ、良いこと思いついた。
今後の魔王の相手はマルクスに任せればいいんじゃないか?
レベルも80越えてるらしいし。
思い立ったが吉日、付いてくることを認めて城へと向かった。
城に着くと、俺は早速クロードにマルクスを紹介した。
それからギルド役員の意見を伝え、今後はマルクスを頼ってくれと言った。
「なるほど、異世界人の転生者であれば勇者同様の力を備えていても不思議ではない。わかった、今後はマルクス殿を頼ることとしよう」
「本当に僕がやってもいいんですか? そういうのは勇者にやってもらった方が外聞がいいんじゃないですか?」
マルクスの質問に、クロードは「それなのだが……」と前置きすると、本音をぶちまけた。
「一々喚んで説明して訓練させて魔王と戦わせる、正直言って面倒なのだ……。ユウトが召喚されてからは一々説明せずともよかったし、この世界に残る選択をしてからも頼れた。しかし、これからまた召喚を行うとなると、当然、この世界のことを知らぬ異世界人がやって来ることになる。そうなるとまた一から説明して訓練させなければならんのだ……」
長々と何を言うかと思えば……それもうほぼ愚痴じゃないかよ……。
気持ちはわからんでもないけど。
「ま、まぁ、とにかく、これ以上異世界人を巻き込む訳にはいかんのだ。マルクス殿、どうか頼む……!」
そう言ってクロードが頭を下げた。
マルクスはと言うと、クロードが頭を下げたことに驚いた様子だ。
たぶんイメージしていた王様という身分の人と違っていたのだろう。
まぁ、大体の身分の高い人って自分の権力を振りかざしてくる人ばかりだから、マルクスの反応は当然と言えば当然と言えると思う。
クロードはむしろ、そんなことをする身分の高い人を排斥するほど嫌ってるから、権力を振りかざしてくることはない。
振りかざしてくることはないが、良いように使われることはある。
現に俺がそうだ。
完全に物に釣られて動いてるし……まぁ、我が子達の為だからなんの苦でもないけど。
そして、クロードのお願いに対するマルクスの答えはというと、「わかりました。頑張ります」だった。
表情が興奮ぎみだったのが気になるところだが、話は纏まったのでマルクスと共に魔王退治に向かうこととなった。
城を出たところで、マルクスに提案した。
「マルクスの装備品揃えないか?」
「えっ? 僕のですか? 必要ないですよ。いつも防具着けずに毒針やら麻痺毒やら喰らってるんですから」
そう言えばマルクスって、忍だったな。
そうか、だから【麻痺】を掛けても動けたのか。
そんなマルクスの前世の死因はなんだったのだろうか……甚だ疑問だ。
「そ、そうか、でも、この世界では魔法での攻撃もあるんだ。装備はあって損はないぞ?」
「……確かに。じゃあ、お願いします」
マルクスの了承を得たので、防具屋へ行くこととなった。
防具屋に行くと、店主に驚かれた。
「なっ、なななっ、ゆ、勇者様ぁ!?」
そんなに驚かれれると困るんだけど……。
「ほ、本日は、どのようなご用件で?」
「コイツの装備品を揃えたい。これから魔王退治に行くんだ」
「な、なるほど……その少年も連れていかれるということですか?」
「あぁ、見た目に反して強いんだ。俺と張り合えるくらいに」
「ちょっ、祐人さん!? 僕はそんなに強くないですよ!?」
「謙遜するなって。じゃあ親父さん、装備品、頼むよ」
「はい、任せてください!」
店主の元気のある返事で話が終わり、マルクスは諦めたのかため息をついた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる