四度目の勇者召喚 ~何度召喚したら気が済むんだ!~

遠竹

文字の大きさ
19 / 24
第二章 四度目の勇者の10年後

魔王退治へ行く前に

しおりを挟む

 ギルドに行き、ギルド役員全員に魔王退治に行くということを話すと、またかといった呆れの混じった雰囲気になった。

「なんだよ? なんでそんな雰囲気になるんだよ……」

 ふて腐れ気味に聞くと、副ギルド長であるフレイスが答えた。

「確かにギルド長は元とはいえ勇者であり、ただ一人のレベル最大をお持ちで、五度も魔王討伐を成した方です。しかし、今の貴方はこのギルドのギルド長です。もう他の異世界人に任せてもよろしいのでは?」

 仕事に専念しろ、と言外に言われた気がする。
 というかもう顔がそう言ってる。
 だが断る! 今回だけは!

「今回だけはやらせてくれ。じゃないと我が子達のために公園を造る計画が台無しになるんだ……!」

 俺がそう言った瞬間、フレイスを始めとするすべてのギルド役員がため息をついた。
 なぜそうなる!?
 俺にとって公園を造ることは、魔王退治より大事なことだぞ!?
 魔王退治なんて二の次……いや、百の次だ。
 今回は、公園を造る為には魔王退治をしなきゃいけないという条件だから倒しに行くだけだ。

「相変わらず親バカですね……」
「親バカだけど、それがどうかしたのか?」
「……まぁ、仕方ありませんね。今回だけですよ? 次回からは他の異世界人に任せてくださいね?」
「わかった」
「皆、聞きましたね? 言質は取りました。ギルド長、これで言い逃れはできませんよ」

 そこまでするのかと思ったが、ギルド長が留守にするのはよくないし、仕方なのないことだと受け入れるしかないか。


 ◆◇◆◇◆


 ギルド役員に魔王退治のことを話し終えた俺は、一旦家に戻った。
 そして、聖剣を押し入れから取り出し、さて城に行ってクロードにギルド役員の意見を通すかと思って家を出ようとした。
 すると、マルクスが頼み込んできた。

「お願いします祐人さん! 僕も連れていってください! 役に立って見せます!」

 まぁ、役に立たないなんてことは無いだろうけど……。
 なんせ忍術使えるわけだし。
 あ、そうだ、良いこと思いついた。
 今後の魔王の相手はマルクスに任せればいいんじゃないか?
 レベルも80越えてるらしいし。
 思い立ったが吉日、付いてくることを認めて城へと向かった。
 城に着くと、俺は早速クロードにマルクスを紹介した。
 それからギルド役員の意見を伝え、今後はマルクスを頼ってくれと言った。

「なるほど、異世界人の転生者であれば勇者同様の力を備えていても不思議ではない。わかった、今後はマルクス殿を頼ることとしよう」
「本当に僕がやってもいいんですか? そういうのは勇者にやってもらった方が外聞がいいんじゃないですか?」

 マルクスの質問に、クロードは「それなのだが……」と前置きすると、本音をぶちまけた。

「一々喚んで説明して訓練させて魔王と戦わせる、正直言って面倒なのだ……。ユウトが召喚されてからは一々説明せずともよかったし、この世界に残る選択をしてからも頼れた。しかし、これからまた召喚を行うとなると、当然、この世界のことを知らぬ異世界人がやって来ることになる。そうなるとまた一から説明して訓練させなければならんのだ……」

 長々と何を言うかと思えば……それもうほぼ愚痴じゃないかよ……。
 気持ちはわからんでもないけど。

「ま、まぁ、とにかく、これ以上異世界人を巻き込む訳にはいかんのだ。マルクス殿、どうか頼む……!」

 そう言ってクロードが頭を下げた。
 マルクスはと言うと、クロードが頭を下げたことに驚いた様子だ。
 たぶんイメージしていた王様という身分の人と違っていたのだろう。
 まぁ、大体の身分の高い人って自分の権力を振りかざしてくる人ばかりだから、マルクスの反応は当然と言えば当然と言えると思う。
 クロードはむしろ、そんなことをする身分の高い人を排斥するほど嫌ってるから、権力を振りかざしてくることはない。
 振りかざしてくることはないが、良いように使われることはある。
 現に俺がそうだ。
 完全に物に釣られて動いてるし……まぁ、我が子達の為だからなんの苦でもないけど。
 そして、クロードのお願いに対するマルクスの答えはというと、「わかりました。頑張ります」だった。
 表情が興奮ぎみだったのが気になるところだが、話は纏まったのでマルクスと共に魔王退治に向かうこととなった。
 城を出たところで、マルクスに提案した。

「マルクスの装備品揃えないか?」
「えっ? 僕のですか? 必要ないですよ。いつも防具着けずに毒針やら麻痺毒やら喰らってるんですから」

 そう言えばマルクスって、忍だったな。
 そうか、だから【麻痺パラライズ】を掛けても動けたのか。
 そんなマルクスの前世の死因はなんだったのだろうか……甚だ疑問だ。

「そ、そうか、でも、この世界では魔法での攻撃もあるんだ。装備はあって損はないぞ?」
「……確かに。じゃあ、お願いします」

 マルクスの了承を得たので、防具屋へ行くこととなった。
 防具屋に行くと、店主に驚かれた。

「なっ、なななっ、ゆ、勇者様ぁ!?」

 そんなに驚かれれると困るんだけど……。

「ほ、本日は、どのようなご用件で?」
「コイツの装備品を揃えたい。これから魔王退治に行くんだ」
「な、なるほど……その少年も連れていかれるということですか?」
「あぁ、見た目に反して強いんだ。俺と張り合えるくらいに」
「ちょっ、祐人さん!? 僕はそんなに強くないですよ!?」
「謙遜するなって。じゃあ親父さん、装備品、頼むよ」
「はい、任せてください!」

 店主の元気のある返事で話が終わり、マルクスは諦めたのかため息をついた。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...