異世界最強の『農家』様 〜俺は農家であって魔王じゃねえ!〜

農民ヤズ―

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九章

村の改良が終わって……

 
「っと、その前に……他になんか言いたいことがあるやつはいるか? 言いたいことがあるなら今のうちに言っておけ。逆らうなとは言ったが、それが真っ当な意見だったら怪我させることなくしっかり話聞いてやるから安心しろ」

 だが、先程の流れを見ていたからか、誰もが青い顔をしたまま喋ることもなくこっちを見ているだけ。質問を投げかけようとする奴なんて一人もいない。そうだろうなとは理解できるけどな。

「ないな? それじゃあここにトレントの種を植えるが、構わないな?」

 広場として使われている、かは分からないが、なんか村の真ん中あたりにある空き地だから似たような使われ方をしているだろう場所。
 そんな場所に何かを設置しようものならすごく邪魔だと思うが、トレントに村を守ってもらうんだとしたらここがちょうどいいんだ。
 それに、ここで村民たちの前で種を植えれば、そこにあるんだ、ってことを理解するだろうし、成長した後も何かあったら異変に気がつきやすい。まさにいいことづくめだ。……場所をとって邪魔なこと以外はな。

「それじゃあ、まずは肥料を作って……」

 そう言いながらスキルを使い、台にしていた木材を肥料へと変える。
 位階が上がったことで今では肥料から臭いもしなくなったし、こんな場所でも迷うことなく使うことができる。

「次に水と土だな。肥料と地面を混ぜて……」

 次に天地返しと潅水を使って地面と肥料を混ぜて土の調子を整えていく。

「最後に——フローラ、ちょっと力貸してくれ」
「わかったー」

 トテトテと寄ってきたフローラの手をとって、一緒に地面に向けて手を翳してスキルを使う。

「《生長》」

 生長させていると、見上げるくらいの高さ——いわゆる普通の木と同じ程度の大きさになったところでフローラからの力の供給が止まったので俺もスキルを止める。

「これくらいでいいのか?」
「いいよー。あとは勝手に育つー」
「そうか」

 フローラの力を借りなくても俺一人でこれくらい育てることはできたんだが、聖樹からの力もあった方がいい感じに強く育つと言うことなので、今回協力してもらった。
 だがその生長はフローラの体を作った時とは違ってまともに育った。やっぱりあれは、聖樹の力が小mられているかどうかではなく、操作することのできるものなんだと思う。

「これであとは村の方々に任せます。そんなすぐに枯れるもんでもないんで、真面目に育てていればしっかりとした樹に育ってくれるんで」
「は、はいっ……」

 突然村の真ん中に木が育ったことで、村民たちは唖然とした様子で育ったトレントのことを見上げているが、その中で村長はこっちを見ながら頷いた。

「それじゃあ次だな」
「ま、まだ何かされるのでしょうか?」
「ああ。聞いてるはずですが? 税の他に恩恵があるって」
「それはトレントの件では……」
「トレントは恩恵の〝一つ〟ですよ。むしろ本命はこっちです」

 元はそっちがメインだったんだ。トレントなんて俺の思いつきでしかなく、言ってしまえばついでだ。

「坊ちゃん。準備はできてっすぜ!」
「ありがとう」

 エミールの言葉に返事を返した俺は、エミールの後をついて場所を移動することにした。

「村長。一応確認しておきますけど、このあたり使ってないですよね?」

 そうしてたどり着いたのは村の端だ。それも、家も何も、畑すらない場所。
 前回この村に人を送ったときに調査してもらった内容を参考に今回手を加える計画を立てたんだが、調査した内容は間違いじゃなかったようだな。

「え、あ、はい。ええ、使っていませんが……」
「ならよかった。それじゃあ、ちょっと手ェ入れさせてもらいますね」
「は、え、な、何をされるつもりですか!?」

 だが、俺が手を加えると言うと、村長は一瞬何を言っているのか分からないと言うような反応を示したが、まあ当然だろうな。もし変な風に手を加えられて村に影響が出るようなら、場合によっては村民たちの死活問題になるんだから。
 だが、こちとら『農家』だ。問題ない。

「大丈夫ですよ。まあ影響が出るって点では違わないけど、いい影響ですんで」
「いい影響……?」

 村長に説明するよりも実際に見てもらった方が早いので、俺は地面に手を当てて一気に肥料生成を行なう。

「いちいち触らなくてもまとめて肥料にできるってのは、随分と便利になったもんだよな」

 何か材料を入れたわけじゃないからそんなに変化はないだろうけど、土の調子を整えるくらいはできたはずだ。それに、肥料化したことで踏み固められていた土も柔らかくなった。

「これでおしまいです。あとはこれを。ささやかですが恩恵の一つです」

 それから適当に《天地返し》で地面を混ぜ、《播種》を使って種を蒔いて、《生長》を使って一定の大きさまで育てて……よしオッケー。これで三日もすれば収穫できるだろう。

「こ、これは……?」

 村長は先ほどまでは雑草くらいしか生えていなかった地面が突然色を変え、動き出し、さらに何かの植物が生えてきたことに目を丸くしているが、まあ俺が何やってるか分からなければそんなもんかもな。
 でもあんた、さっきも木が大きくなるのを見ただろうに。

「ここよりも北でできる植物です。寒い地方の果物なのでこれからの時期にも育つでしょう。ここは畑として作りかえたので、畑として使いたくなったら普通に引っこ抜いて使っても構いません」
「よ、よろしいのですか?」
「ええ。まああんなことをしたあとなんで怖がられてるとは思いますけど、理不尽な暴力をするつもりはありませんよ。何かしらの理由があって必要だったから、と言われればこちらだって、そうなのか、と納得しますし、無駄に逆らうつもりがないのであれば庇護もします。何せこの地はすでに我々の領土なんですから」

 それに、ただ信じろって言われてもそう簡単には信じられないだろう。安全についても、土地の開墾についても。
 信じてもらうためには実際に見せつければいい。

「まあ、逆らうつもりがないのなら、と言いましたけど、成り上がりたいのであれば好きにしてくれて構いませんよ。周辺の土地を開墾したり、人を増やしたりって感じで。村から町にしたいと願い、その可能性をこちらに提示できれば支援もします。その辺はその気があればいずれ要相談ですね」
「そ、そこまでしていただいてよろしいのですか? 本当に?」
「言ったでしょう、ここはすでに我々の領土だ、と。努力する奴が力をつける。成り上がりたい奴が成り上がる。カラカスはそんな場所ですから、その支配下の村も同じようにすればいい。なんだったらあなたがこの村を支配してくださっても構いませんよ? それで今よりも大きくすることができるのなら。まあ今よりも成績が落ちたら何がしかのテコ入れが派遣されると思いますけど」

 村長は目の前の地面をチラチラと見ながら、思わぬ待遇の良さに驚いた様子を見せている。

 だが、実際カラカスは成り上がりを認めているのだ。でかくなりたいなら好きにすればいいし、こっちに利益のある話なら手助けもする。

 そのことが今更になってようやく理解できてきたのか、村長は何度か俺の顔を見て村を見て新しい畑を見て、と視線を動かすと、はあ~、と大きく息を吐き出した。

「さて、他の場所も手を加えないとですね」
「え……他の場所もやっていただけるのですか?」
「ええ。ここ一つで恩恵というには些か大袈裟でしょう?」

 その後は村にある使っていない空き地全てを開墾しているうちに日が落ちてきたので、村長宅に泊めてもらうことになった。ちなみに、連れてきた部下達は村の端に滞在用の家を先に来てたエミール達が立てていたらしくそっちに泊まっている。

 そして翌日。

「見た感じは異常異変の類はないな」

 今日は昨日植えたトレントの様子を見にきたのだが、まだ自我を持って動き出すような様子は見られない。《意思疎通》を使っても答えてくれないってことは、まだまともに答えられるような状態にはなってないんだろうな。
 《生長》を使って無理やり大きくした異変も見られないから、その点では良かったと思うけど。

「フローラ。これってどれくらいで動き出すんだ?」
「んー。もうちょっとー?」
「もうちょっとって……」

 どれくらいだよ。数日程度だろうか?

「フローラの感覚と人間の感覚は違うでしょうから、一月程度は最低でもかかると見た方がいいのではないでしょうか?」
「まあ、異変があったらわかるし今は放置でもいいだろ」

 そのまま待っているわけにもいかないので、その後は村長以下村民たちに再度トレントの扱いについて言い含めてから村を出発することにした。
 そして残っているいくつかの村を周り、同じように話しと作業している間に二週間が過ぎていった。

「おっし、戻ってきたな」

 村巡りの旅が終わってカラカスに戻っていったのだが、親父の館に着くとなんでか親父が玄関の前で待っていた。
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