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12章
闇魔法の力?
「妹に負けて国を追い出された哀れでみっともないクソ雑魚王女。それがおまえだろ——っと。ムカついたから魔法を使って口封じか?」
フィーリアとのことがよほど気に入らないようだったから、こうして挑発すれば逃げることなく向かってくるだろうと思ったのだが、その考えはまさしくその通りだった。
よほど俺の言葉が気に入らなかったのだろう。話している途中だったってのにいきなり魔法を放ってきやがった。
なんの予備動作もなくただ力任せに放たれるのは黒い『ナニカ』の塊。
……闇魔法なんだろうけど、なんかこれ、以前とはちょっと違ってないか?
記憶にある闇魔法とは受ける感じが違くて、とてもではないが様子見だとしても喰らう気にはなれなかった。
飛んでくる魔法の射線上に案山子を作ってやれば、闇魔法は案山子に当たって遮られた。
だが、その後が問題だ。黒い『ナニカ』を食らった案山子はドロドロに腐り落ちていった。
それはまるで俺が《肥料生成》を使った時の腐敗に似ているが、その案山子の周辺には不快感というか、おぞましさを感じる。
その感覚はなんと言っていいか……ああ、あれだ。前に賊のアジトを潰した時に向けられた悪意と殺意と恐怖と嘆き。そんないろんな感情を混ぜて凝縮したような、そんな感じがする。
喰らったら……腐敗を防ぐことはできたとしても、まず間違いなくいい結果にはならないだろうな。その残滓ですら吸い込みたいとは思えない。
「……今のは闇魔法か。なんともまあ、いかにもな魔法だよな。使ってるやつは心が濁ってそうだ。そんな魔法を使う天職と扇動者なんて裏切りそうなもんが一緒んなってちゃあ、そりゃあ父親に捨てられもするわな」
「黙れ!」
コンプレックスになってるだろう父親のことを口にしてみれば、効果は抜群だったようではっきりと怒りを言葉に乗せて叫んできた。
そして先程のような闇の塊をこちらに放ってくるが、それは先ほどと同じように案山子で防いで終わりだ。
だが、姉王女の行動はそれで終わりではなかった。
「《ナイトメア》!」
姉王女が詠唱も魔法陣もなしに魔法の名前を叫ぶと、その瞬間姉王女の体から全方位に向けて、暗く、混沌とした色の光が放射された。
直線的な攻撃であれば避けることはできたが、流石にこれだけの面攻撃を避けることはできない。
反射的に顔を守りながらその場を跳び退いたが、まあ無意味なもので普通に食らってしまった。
「いっ、きゃあっ!」
一応飛び退く瞬間に種をばら撒いて姉王女を攻撃し、案山子を盾として生み出してみたが、少なくとも案山子の方は意味がなかったっぽいな。種の方は……どうだろうな。まだよくわからない。
相打ち、と言っていいのかわからないが、俺は黒い光を受けながら少し舐め過ぎたことを反省をし、自分がどんな攻撃を食らったのか確認していく。
「?」
……が、俺の体はなんともない。いったい今のはなんだったんだ?
何をしたのか問いかけるべく顔を姉王女へと向けたのだが、その周囲では敵が無防備に倒れていた。
どうしてだ? まさか今のを食らって?
一緒についてきたカイル含め配下の様子も確認してみると、敵と同じように苦しげにうめき声を上げながら意識を失っている。
……こいつ、味方ごと攻撃しやがったのか。
状況とさっきの全方位に向かって放たれた黒い光からしてそれは間違いではないだろう。だが、肝心の効果がわからない。
ナイトメア……名前と状況から考えるなら、悪夢を見せる魔法か? それなら意識を失ってることもうなされていることも納得できる。
だが、どうして俺には効かなかったんだ?
「なぜお前達は立ってるのよ!」
そんな疑問を相手も感じたのか、姉王女は驚きとともに苛立ちを混ぜて叫んだ。
だが、その様子は俺の攻撃でダメージを負ったようには見えない。
結構種をばら撒いたと思ったんだが……防がれたか。なんらかの防御系の道具を持ってんのかね?
「どうしてって言われてもな。そもそもどんな魔法なのか効果すら知らないのに説明できるわけないだろ」
悪夢を見せるってのはあくまでも俺の予想だ。
可能性としてはなんらかの発動条件が必要で、俺はその条件を満たしていなかった。あるいは、そうだな……俺の方が格上だから、だろうか。
スキルの中には格下には通用しないスキルが割と存在している。洗脳系、使役系は特にな。自分よりも位階が高いやつ相手だとうまく洗脳できないことはよくある。
なので、俺に効かなかったのはそれが理由ではないだろうか。
これだけのことができるんだから、相手も第十位階になったってのは本当のことなんだろう。そうであればお互いに第十位階で同じになる。
だが、それでも俺の方が上だろうと思う。
天職やスキルってのは、一説には使い続けると神に近づく、なんて話があるが、その話の中にはスキルの最大使用回数が出てくることがある。つまりは多くのスキルを使えると、より神に近い存在だってわけだ。
まあそんなのは実際に神様から聞いたわけじゃなくて単なる推測でしかない。だが、俺は今までスキルを使い続けてきて、スキルの最大使用回数は常人の十数倍になっている。もしその話が本当なら、俺より格が高いやつ……神様に近いやつはそうそういないだろう。
もっとも、こいつの場合はなんか外法を使ってそうだから例外かもしれないが、多少格が劣っていたとしても、その程度なら跳ね返すことができる。こちとら何年もありえないくらいの苦痛に耐えて修行してきたんだ。生半可な精神干渉じゃちょっと不快になるくらいで問題なんて起こらないに決まってんだろ。
「……これは光を浴びた者の最も遠ざけたい思い出を再現させる魔法よ。誰だって自分の傷からは逃げられない。悪夢に呑まれて衰弱していく」
俺がどんな魔法なのかわからないから~、なんて言ったからか、姉上様はわざわざ説明してくださった。
だが、その内容は『闇』魔法に相応しいものだと納得できるクソみたいな内容だった。
「つまりトラウマの再現を強いる魔法か。なんともまあ、『闇』に相応しい魔法だな」
「それなのに、そのはずなのに……どうしてお前達は!」
自分の魔法が俺に全く効果がなかったことに苛立っているようで、その感情が簡単にみて取れる。
ここで正直に格の差って言ったらどんな反応するだろうか? まあまず間違いなくさらに怒り狂うだろうな。こいつは上に誰かがいるのは気に食わない性格してるだろうし。同じ王族である兄や姉や父であればそれほど問題ないのかもしれないけど、俺みたいな奴が相手だと受け入れられないだろう。
まあいい。効かないんだったらそれならそれで問題ない。あとは俺がこいつを倒せば……ん? あれ、そういえば今、お前〝達〟って言わなかったか? 俺以外にも無事だった奴がいたか?
そう思って意識を目の前にいる姉王女から外さずに振り返ってみたのだが……
「え? え? 何? なんなの? なんでみんな倒れてるの? ねえ~……」
いきなり味方が倒れたことで混乱しているようだが、俺の他に立っていたもう一人は声に戸惑いや不安を滲ませながら仲間達に声をかけていた。
「お前は……」
リリアだ。こいつも俺と同じでどうしてなのかわからないが、この姉王女様の魔法の効果が効かなかったようで、問題なく動けている。
「……そうか。お前、悩みなんてないもんな」
こいつの言葉が正しければ、今の魔法は過去のトラウマの再現だ。そもそもトラウマどころか、後に引くような悩みや不安や恐怖を感じない奴なら、そんな魔法なんていくら食らったところで問題ない。何せ発動条件を満たすような記憶なんてないんだから。
「え? なにが? 悩みくらいあるんですけどー?」
リリアは俺の言葉にムッとした様子を見せているが、違う。そうじゃない。
確かにこいつにだって悩みの一つや二つはあるんだろう。多分どうでもいいようなくだらないことだろうが、まあそれも悩みは悩みだ。
だが、ここで言ってる悩みってのはそうじゃない。後に引くような恐怖や嘆き、そういった後悔って意味での悩みだ。
そんなもの、こいつにはないだろう。というかあそこの里出身のエルフ全般に言えることじゃないだろうか?
「そうじゃねえよ。この状況でそんな風にいってられるくらいの頭だから心配ねえって話だよ」
「……褒めてる?」
どこどどう聞いたら褒めてるように聞こえるのか不思議だが、そう感じることができるからこそトラウマなんてものがないんだろうな。
「ああ、お前はすげえよ。いやまじで色々とすげえよな」
百年も暮らしてて何の後悔も悩むほどの失敗もないってのは、本当にすごいと思うぞ。多分俺はそれだけ生きてたら一つ二つどころか、十や二十はあるだろうからな。
「くっ! なら今度はこっちよ! 《闇よ集え・我が意をここに示さん・我に仇なすものを踏み躙れ——」
姉王女はそんな俺たちのことが気に入らないのか、今度は別の魔法を使おうとスキルの詠唱をし始めた。
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