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Ⅰ.出会い編
18.完璧な主人
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探りを入れようとローレンスを眺めていたら、輝きに溢れた羨望の眼差しとかち合ってしまった。
「お嬢様のお噂は遠方まで届いています。勉強に裁縫、料理に音楽、剣に魔法までなんでもお出来になると。その優秀さは誰もが認める天才と名高い王太子殿下より上だとか……!」
そう鼻息を荒くさせてにじり寄ってくるローレンス。
すごいな、熱が。ローレンスが近寄るたび室温が1度上がってる気がする。
「2年前まで王太子殿下にお仕えすることを信じて疑わなかった自分は愚かでした……。私が真にお仕えすべき主人はルリアーノお嬢様だったのです!!」
なるほどね。なんとなく読めたぞ。ローレンスがアゼン様ではなく私の元へ来た理由。
「つまり……あなたはより完璧な主人が欲しかったってことですね?」
「ッ! ぐっ……なんと可憐なお声なんだ……お嬢様は声まで完璧なのか……」
そう言ったきり胸を押さえて蹲るローレンス。
いや、あの。何やってるんですかちょっと。折角謎を解き明かせたというのにその答えを貰えるどころか何故か瀕死の状態なんですけど。
「も、申し訳ありません! お嬢様から頂いた質問にお答えするのが遅れるなど……! 私としたことがなんたる失態を……」
「いえ……大丈夫です」
「はあ……なんとお優しいのか……まるで女神のようだ……」
「……」
うん、本当にどうでもいいから早く答えてくれないかな。こんな些細なことで女神なんて言ってて大丈夫かこの人。
待って私この忠誠心が溢れるあまり変態にしか見えない男を攻略しないといけないの? シンプルに嫌なんだけど。
ていうかこれ攻略する必要ある? 今私が『死ね』って言っても平気で実行しそうだよ?
まああくまで忠誠心だから恋愛感情とは違うだろうけど……。
するとようやく発作が収まったのかまたもやレーザーのような瞳で私を射抜いてきた。ああもう顔が焼け焦げるわ。
「恐れながらこのローレンス、自分の能力を最も発揮できる方へお仕えするのが夢でした。つまり自分が最も尊敬する方が望ましかったのです。お嬢様はその点私の理想を軽く超えた存在でした……その優秀さは勿論のこと、初めてお見かけした時のなんとも言えない華麗さ……! 胸が焼けつくような鮮烈さを覚えました。まるで地上に舞い降りた天使です! いやお嬢様の美しさを表現するにはそんなものじゃ……やはり女神? 妖精? それとも──」
「ちょ、ちょっと一回黙りましょうか」
どんだけ喋るつもりだこの人。全く私が入り込む隙なかったんだけど。
え、本当にコレが私の専属騎士? これから毎日コレと一緒に行動しなきゃいけないの?
私の騎士になった理由はわかったけどここまでの感情をぶつけられる原因は不明だ。私の何かがローレンスの奥深くに眠っていた本質を刺激しちゃったとか……?
するとその時、早くローレンスを黙らせようと思わず口を塞いでしまった手をガッと掴まれた。
「ひ……っ、」
「ああなんと滑らかな手なのでしょうか。申し訳ありません、私なんかが触っていいものではないことは百も承知ですがなんとも離し難い……」
その瞬間私は気付いた。
あ、ダメだ私コレと行動するの無理だわ。攻略対象を遠ざけるのはちょっと気が引けるけど、心の安寧を保つためにもお父様になんとかしてもらおう……。
「お嬢様のお噂は遠方まで届いています。勉強に裁縫、料理に音楽、剣に魔法までなんでもお出来になると。その優秀さは誰もが認める天才と名高い王太子殿下より上だとか……!」
そう鼻息を荒くさせてにじり寄ってくるローレンス。
すごいな、熱が。ローレンスが近寄るたび室温が1度上がってる気がする。
「2年前まで王太子殿下にお仕えすることを信じて疑わなかった自分は愚かでした……。私が真にお仕えすべき主人はルリアーノお嬢様だったのです!!」
なるほどね。なんとなく読めたぞ。ローレンスがアゼン様ではなく私の元へ来た理由。
「つまり……あなたはより完璧な主人が欲しかったってことですね?」
「ッ! ぐっ……なんと可憐なお声なんだ……お嬢様は声まで完璧なのか……」
そう言ったきり胸を押さえて蹲るローレンス。
いや、あの。何やってるんですかちょっと。折角謎を解き明かせたというのにその答えを貰えるどころか何故か瀕死の状態なんですけど。
「も、申し訳ありません! お嬢様から頂いた質問にお答えするのが遅れるなど……! 私としたことがなんたる失態を……」
「いえ……大丈夫です」
「はあ……なんとお優しいのか……まるで女神のようだ……」
「……」
うん、本当にどうでもいいから早く答えてくれないかな。こんな些細なことで女神なんて言ってて大丈夫かこの人。
待って私この忠誠心が溢れるあまり変態にしか見えない男を攻略しないといけないの? シンプルに嫌なんだけど。
ていうかこれ攻略する必要ある? 今私が『死ね』って言っても平気で実行しそうだよ?
まああくまで忠誠心だから恋愛感情とは違うだろうけど……。
するとようやく発作が収まったのかまたもやレーザーのような瞳で私を射抜いてきた。ああもう顔が焼け焦げるわ。
「恐れながらこのローレンス、自分の能力を最も発揮できる方へお仕えするのが夢でした。つまり自分が最も尊敬する方が望ましかったのです。お嬢様はその点私の理想を軽く超えた存在でした……その優秀さは勿論のこと、初めてお見かけした時のなんとも言えない華麗さ……! 胸が焼けつくような鮮烈さを覚えました。まるで地上に舞い降りた天使です! いやお嬢様の美しさを表現するにはそんなものじゃ……やはり女神? 妖精? それとも──」
「ちょ、ちょっと一回黙りましょうか」
どんだけ喋るつもりだこの人。全く私が入り込む隙なかったんだけど。
え、本当にコレが私の専属騎士? これから毎日コレと一緒に行動しなきゃいけないの?
私の騎士になった理由はわかったけどここまでの感情をぶつけられる原因は不明だ。私の何かがローレンスの奥深くに眠っていた本質を刺激しちゃったとか……?
するとその時、早くローレンスを黙らせようと思わず口を塞いでしまった手をガッと掴まれた。
「ひ……っ、」
「ああなんと滑らかな手なのでしょうか。申し訳ありません、私なんかが触っていいものではないことは百も承知ですがなんとも離し難い……」
その瞬間私は気付いた。
あ、ダメだ私コレと行動するの無理だわ。攻略対象を遠ざけるのはちょっと気が引けるけど、心の安寧を保つためにもお父様になんとかしてもらおう……。
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