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第一章
束の間の休息
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「あ"ああーーづがれたーーー」
「なんて声出してんだお前」
ショッピングモールにて死人の叫びのような声を出す。ああ、これがデスボってやつか。初めてできた。
―――あの日、救世主さながらに登場した佐伯先輩のおかげでどうにかその場は収束した。
いやーもうさ、まじでさ。いつからバイト先が戦場と化しちゃったの? 全く心が休まらないんだけど。
まだバイトが被ってない日は良い。全員揃ってる日に比べれば幾分かマシだ。でもみんなして俺にわざと被せてんの? ってくらい全員出勤の日が異常に多いんだが。
はあーあ、可愛い女の子に囲まれてチヤホヤされて、これ以上ないオアシスだったのになあ。
くそう……あの忌々しい男達のせいで!!
「バイト辞めたい……でも辞めたら辞めたで……うう」
「目を離した隙にそこら中で墓穴掘ってるんだもんな。お前はいつからそんなに馬鹿になったんだ?」
「うるさい……。そうだ、いっそアイツらを皆殺しにして……クックックこりゃ名案だ」
「(相当応えてんな)」
まずはやっぱり蘇芳からか? でもアイツ隙なさそうだしな……だめだ、返り討ちにあう気しかしない。
となると佐伯先輩? ……いや、先輩も先輩で何考えてるかわかんないしな……。クソ、バカな奴ほど思考が読めないのはどういうことだ!
あーもう、このままじゃ一向に状況が進歩しないじゃん……いや待てよ、この手があった!!
「誠至!!」
「……なんだ?」
「一緒にアイツらをコロ――」
「ッバカお前!! 場所わかってるか!? 通報されたらどうすんだ!!」
俺が突如あげた大声に、きょろきょろしながらビビる誠至。
フン、この腑抜け野郎め!
「なんだよもーいいじゃんか別に。一人でダメなら二人で……って常識だろ?」
「俺を勝手に共犯者にすんな」
ちぇ、意地悪な奴。
それに何も本気で殺そうなんて思ってないよ~。ただちょっとやそっとじゃ動けないくらい再起不能にするだけ……。
「……千秋、そのいかにも犯罪者みたいな顔をやめろ。俺まで捕まるから」
「犯罪者って失礼な。どっからどう見てもセクシー系イケメンだろうが!!」
「……」
踏ん反り返って声高々に言うと、誠至は死んだ魚のような目で後ろを指した。
その目をヤメナサイ。俺だって傷付くんだから。……って後ろに何かあるの?
――――ハッ!!
「今は『女』だってこと忘れてた!!」
「だろうな」
誠至が指した先――すなわち窓ガラスに映った自分を見て愕然とする。
最初はなんだこの美少女なんて思ったけどよく見たら私じゃん!! 外でこの姿なの久しぶりすぎてすっかり忘れてたよ!!
いつもは無造作にセットしている藍色の髪は胸元でウェーブを描いており、薄い唇はピンク色に艶めいている。垂れ目がちな瞳はキラキラと輝き、その目元には美人の象徴泣きぼくろ。高すぎず低すぎない鼻は小さい顔の中心に位置しており、パーツ全てが黄金比を守っている。
いや~やっぱいつ見ても可愛すぎるわ~。そんな私がトドメとばかりに花柄のワンピースを着ているんだから悩殺されない男はいないだろう。
「おい……おい! 恥ずかしいから窓ガラスに映った自分に見惚れるのはやめてくれ」
パタリと歩みを止め窓ガラスを凝視しているとポカリと頭を叩かれた。
「いったあ!! こんな美少女に対してなんて酷い仕打ちなの!?」
「さっきまで男口調男歩きしてた癖によく言う」
「それはそれ、これはこれ!」
「はいはい、超絶可愛い美少女様を叩いてしまってすみませんね。脳細胞死滅して馬鹿になっちゃったかな? ……あ、元からか」
「……ッこんの!!」
どこまでも馬鹿にしてくる誠至にイライラゲージがマックスまで溜まりムキーー!! と腕を振りかざす。
「はははっ、酷い顔!」
「誰のせいじゃこんちくしょー!」
最早キャラ崩壊どころじゃないが構わず逃げる誠至を追いかける。
この千秋様をコケにして……絶対に許さん!! 人目なんて気にしない!! 成敗してやる!!
爆笑しながら走る誠至に、髪を振り乱して爆走する私。
「お客様!! 館内で走るのは危険ですのでおやめください!!」
……ハイ、当然ながら注意されました。
◆◇◆
「あーあ、怒られちゃったな。まあ当たり前っちゃ当たり前か。いい歳して恥ずいな」
「はあ、はあっ、ふぅーー」
「ふはっ、相変わらず運動神経いいくせに体力はないよな」
「う、るさい……」
まだ整う気配のない肺を掴み涙目で睨みつける。
クソ、いい気になりやがって……! 女と男の差はどうやっても埋められないでしょ!?
「……ッ」
――っておい!! 私の渾身の睨みを見てないじゃんか!!
さっきの今で無性にムカついたので思わず誠至に掴みかかる。
「何顔隠してんのよ! 馬鹿にするのもいい加減に……!」
「おま、上目遣いでそれは反則だって……不意打ちやめろよまじで……」
「はあ!? 聞こえないんだけど! もっと大きな声で喋って!?」
「また計算か……? いや、このバカのことだから無意識だよな……ったく見た目だけはいいんだからもっと気をつけろよ」
「オーケイよく聞こえないけど馬鹿にしてるのはわかった。そこに座りなさい」
やれやれといった顔で心底呆れた眼差しを寄越されたら誰だって気付くわ!!
でかい図体に必死に圧をかけて床に跪かせようとする。……が、ビクともしない。
やっぱりムカつく!!!
――――ここで一つ、補足を挟もう。
私と誠至は休日にショッピングモールに来ていた。
オーナーが高熱で倒れてしまったためShangri-laは臨時休業。ふん、日頃の行いだな。
そんな中最近ストレスが溜まりに溜まっている私を見兼ねて、誠至が誘ってくれたのだ。
気が利かないアイツにしては珍しく『なんでも好きなもん買ってやる』なんて言うから、ゲンキンな私は『欲しかったバッグ買ってもらお~』と二つ返事で承諾。
そこでふと、男二人でショッピングはキモいなと今までの記憶を呼び起こし考えた結果、いつぶりかの女姿を披露したというわけだ。
いや~待ち合わせ場所に行った時の誠至の反応は見応えあったな~。これ見よがしに目を見開いて硬直だからね。見惚れてんのバレバレだっつーの。
まあ仕方ないよね~こんな美少女そうそういないもんね~。
ついでとばかりに、『ごめんね……待った……?』なんて彼女よろしく上目遣いでやってあげたらすぐさま『調子乗んな』って突っ込まれたけど。
会話してるうちに自分が女の格好してること忘れたのは予想外だったわ……。慣れって怖い。
……話が逸れたな。
まあ何が言いたいかって、目的を忘れギャースカ騒いでいた私達は気付かなかったのだ。
ただでさえショッピングモールで騒いでいたら目立つ。しかも、私と誠至は人より容姿が秀でているのだ。『美男美女カップルが小学生みたいな喧嘩をしている』なんて醜聞が立つのに時間はかからなかった。
いつのまにか野次馬ができて、警備員さんに派手に怒られたのもありプチ騒動状態。
……だから、好奇心旺盛な人だったら気になって近寄るのも無理はない。
「あれ? お前誠至か?」
……そう、この好奇心の塊のようなワンコが興味を持つのも無理はない!!
「さえ――!?」
反射的にその人の名前を呼ぼうとしたら、さっきまで心ここに在らずだった誠至が素早く私の口を封じた。強引に塞がれたためもごもごと情けない声が漏れる。
「お前には気付いてないみたいだ。暫く大人しくしてろ」
状況判断がお早いことで。
小声で囁いた誠至にコクリと頷いてみせると、意を決したように振り向いた。
頼むぞ誠至……! バレたらマジで洒落にならん!!
「なんて声出してんだお前」
ショッピングモールにて死人の叫びのような声を出す。ああ、これがデスボってやつか。初めてできた。
―――あの日、救世主さながらに登場した佐伯先輩のおかげでどうにかその場は収束した。
いやーもうさ、まじでさ。いつからバイト先が戦場と化しちゃったの? 全く心が休まらないんだけど。
まだバイトが被ってない日は良い。全員揃ってる日に比べれば幾分かマシだ。でもみんなして俺にわざと被せてんの? ってくらい全員出勤の日が異常に多いんだが。
はあーあ、可愛い女の子に囲まれてチヤホヤされて、これ以上ないオアシスだったのになあ。
くそう……あの忌々しい男達のせいで!!
「バイト辞めたい……でも辞めたら辞めたで……うう」
「目を離した隙にそこら中で墓穴掘ってるんだもんな。お前はいつからそんなに馬鹿になったんだ?」
「うるさい……。そうだ、いっそアイツらを皆殺しにして……クックックこりゃ名案だ」
「(相当応えてんな)」
まずはやっぱり蘇芳からか? でもアイツ隙なさそうだしな……だめだ、返り討ちにあう気しかしない。
となると佐伯先輩? ……いや、先輩も先輩で何考えてるかわかんないしな……。クソ、バカな奴ほど思考が読めないのはどういうことだ!
あーもう、このままじゃ一向に状況が進歩しないじゃん……いや待てよ、この手があった!!
「誠至!!」
「……なんだ?」
「一緒にアイツらをコロ――」
「ッバカお前!! 場所わかってるか!? 通報されたらどうすんだ!!」
俺が突如あげた大声に、きょろきょろしながらビビる誠至。
フン、この腑抜け野郎め!
「なんだよもーいいじゃんか別に。一人でダメなら二人で……って常識だろ?」
「俺を勝手に共犯者にすんな」
ちぇ、意地悪な奴。
それに何も本気で殺そうなんて思ってないよ~。ただちょっとやそっとじゃ動けないくらい再起不能にするだけ……。
「……千秋、そのいかにも犯罪者みたいな顔をやめろ。俺まで捕まるから」
「犯罪者って失礼な。どっからどう見てもセクシー系イケメンだろうが!!」
「……」
踏ん反り返って声高々に言うと、誠至は死んだ魚のような目で後ろを指した。
その目をヤメナサイ。俺だって傷付くんだから。……って後ろに何かあるの?
――――ハッ!!
「今は『女』だってこと忘れてた!!」
「だろうな」
誠至が指した先――すなわち窓ガラスに映った自分を見て愕然とする。
最初はなんだこの美少女なんて思ったけどよく見たら私じゃん!! 外でこの姿なの久しぶりすぎてすっかり忘れてたよ!!
いつもは無造作にセットしている藍色の髪は胸元でウェーブを描いており、薄い唇はピンク色に艶めいている。垂れ目がちな瞳はキラキラと輝き、その目元には美人の象徴泣きぼくろ。高すぎず低すぎない鼻は小さい顔の中心に位置しており、パーツ全てが黄金比を守っている。
いや~やっぱいつ見ても可愛すぎるわ~。そんな私がトドメとばかりに花柄のワンピースを着ているんだから悩殺されない男はいないだろう。
「おい……おい! 恥ずかしいから窓ガラスに映った自分に見惚れるのはやめてくれ」
パタリと歩みを止め窓ガラスを凝視しているとポカリと頭を叩かれた。
「いったあ!! こんな美少女に対してなんて酷い仕打ちなの!?」
「さっきまで男口調男歩きしてた癖によく言う」
「それはそれ、これはこれ!」
「はいはい、超絶可愛い美少女様を叩いてしまってすみませんね。脳細胞死滅して馬鹿になっちゃったかな? ……あ、元からか」
「……ッこんの!!」
どこまでも馬鹿にしてくる誠至にイライラゲージがマックスまで溜まりムキーー!! と腕を振りかざす。
「はははっ、酷い顔!」
「誰のせいじゃこんちくしょー!」
最早キャラ崩壊どころじゃないが構わず逃げる誠至を追いかける。
この千秋様をコケにして……絶対に許さん!! 人目なんて気にしない!! 成敗してやる!!
爆笑しながら走る誠至に、髪を振り乱して爆走する私。
「お客様!! 館内で走るのは危険ですのでおやめください!!」
……ハイ、当然ながら注意されました。
◆◇◆
「あーあ、怒られちゃったな。まあ当たり前っちゃ当たり前か。いい歳して恥ずいな」
「はあ、はあっ、ふぅーー」
「ふはっ、相変わらず運動神経いいくせに体力はないよな」
「う、るさい……」
まだ整う気配のない肺を掴み涙目で睨みつける。
クソ、いい気になりやがって……! 女と男の差はどうやっても埋められないでしょ!?
「……ッ」
――っておい!! 私の渾身の睨みを見てないじゃんか!!
さっきの今で無性にムカついたので思わず誠至に掴みかかる。
「何顔隠してんのよ! 馬鹿にするのもいい加減に……!」
「おま、上目遣いでそれは反則だって……不意打ちやめろよまじで……」
「はあ!? 聞こえないんだけど! もっと大きな声で喋って!?」
「また計算か……? いや、このバカのことだから無意識だよな……ったく見た目だけはいいんだからもっと気をつけろよ」
「オーケイよく聞こえないけど馬鹿にしてるのはわかった。そこに座りなさい」
やれやれといった顔で心底呆れた眼差しを寄越されたら誰だって気付くわ!!
でかい図体に必死に圧をかけて床に跪かせようとする。……が、ビクともしない。
やっぱりムカつく!!!
――――ここで一つ、補足を挟もう。
私と誠至は休日にショッピングモールに来ていた。
オーナーが高熱で倒れてしまったためShangri-laは臨時休業。ふん、日頃の行いだな。
そんな中最近ストレスが溜まりに溜まっている私を見兼ねて、誠至が誘ってくれたのだ。
気が利かないアイツにしては珍しく『なんでも好きなもん買ってやる』なんて言うから、ゲンキンな私は『欲しかったバッグ買ってもらお~』と二つ返事で承諾。
そこでふと、男二人でショッピングはキモいなと今までの記憶を呼び起こし考えた結果、いつぶりかの女姿を披露したというわけだ。
いや~待ち合わせ場所に行った時の誠至の反応は見応えあったな~。これ見よがしに目を見開いて硬直だからね。見惚れてんのバレバレだっつーの。
まあ仕方ないよね~こんな美少女そうそういないもんね~。
ついでとばかりに、『ごめんね……待った……?』なんて彼女よろしく上目遣いでやってあげたらすぐさま『調子乗んな』って突っ込まれたけど。
会話してるうちに自分が女の格好してること忘れたのは予想外だったわ……。慣れって怖い。
……話が逸れたな。
まあ何が言いたいかって、目的を忘れギャースカ騒いでいた私達は気付かなかったのだ。
ただでさえショッピングモールで騒いでいたら目立つ。しかも、私と誠至は人より容姿が秀でているのだ。『美男美女カップルが小学生みたいな喧嘩をしている』なんて醜聞が立つのに時間はかからなかった。
いつのまにか野次馬ができて、警備員さんに派手に怒られたのもありプチ騒動状態。
……だから、好奇心旺盛な人だったら気になって近寄るのも無理はない。
「あれ? お前誠至か?」
……そう、この好奇心の塊のようなワンコが興味を持つのも無理はない!!
「さえ――!?」
反射的にその人の名前を呼ぼうとしたら、さっきまで心ここに在らずだった誠至が素早く私の口を封じた。強引に塞がれたためもごもごと情けない声が漏れる。
「お前には気付いてないみたいだ。暫く大人しくしてろ」
状況判断がお早いことで。
小声で囁いた誠至にコクリと頷いてみせると、意を決したように振り向いた。
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