八方美人な公爵令嬢は国家反逆の罪で処刑されるそうです

藍原美音

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2.国家反逆を企てます

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「何を馬鹿な! そこからどうやって──」

 第一王子の言葉を遮るように、まずは右手に軽く力を込めた。掌から発射したのは火炎爆弾。爆音と共に瞬く間に炎が立ち込め私の両手に纏わり付く縄を焼き払った。

「なっ! なんだこれは! お前何をした!!」
「破壊の魔法ですけど? 文書で読んだことありません?」

 おかしいわね、この世で最も危険だとされている魔法だから歴史でも最初の方に学ぶはずなんだけど。

「も、勿論知っている! な、何故お前がその魔法を…!」
「何故も何も、物心ついた時から使えるので…」

 といっても、そんな危険な魔法誰でも使えるわけではない。100年に1人現れるか否からしい。この魔法が使えると気付いた私は面倒ごとに巻き込まれるのが嫌だったのでずっと隠していた。生涯人の目には晒さぬつもりでいたのだが、状況が状況だ。出し惜しみしている場合ではない。

 何より自分の命が一番だ。第一王子には悪いけど、いや微塵も悪くないのだけど、さっさとこの場から退場させてもらおう。

「い、今すぐこの国家反逆者を捕らえろー!!」

 しかしこの馬鹿王子は懲りずにそんな命令を下した。
 馬鹿だ、馬鹿すぎる。何故こんなにも圧倒的な力を目にしておきながら食ってかかることができるのか。
 プライドがどれだけ高いんだ? 積み上げたらお空まで届くんじゃないかしら。

 一方第一王子に命令された王国騎士達は私を取り囲もうとしているが脚が小鹿のように震えている。そりゃそうよね、だって私、この世で最も恐れられている破壊魔法の使い手だもの。さっきの力だって10分の1も出していない。
 あなた達、こちらに一歩でも近付いたら怪我なんてものじゃ済まないわよ? 力を使うのが久しぶりすぎて加減ができそうにもない。
 縄を焼き払うだけのつもりが闘技場の入り口を木っ端微塵にしてしまったのだ。計算違いもいいところだが、見たところ死傷者はいないからセーフだろう。

「何をしている! 僕の言うことを聞け! お前ら皆処刑されたいのか!!」

 はい、出ましたお得意の処刑宣言。
 この男には人の心が備わっていないのだろうか。これを見て国王や王妃は何も思わないの?

 ……あっ、腰抜かしていてそれどころじゃないみたい。かなりご高齢だものね。無理もないか。それだけ私の存在に驚いたのだろう。
 隠していたことについては少し申し訳なく思っている。でも言ったら生涯国家兵器として扱われそうなんだもの。私、一生をかけて国に尽くすほど愛国心に満ち溢れてないし。
 だって尽くす相手がこの馬鹿王子ですよ? ……ないわぁ。天地がひっくり返っても有り得ないわ。

 普通に結婚とかしたいしね。……まあ今となっては結婚なんて夢のまた夢だけど。
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