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第一章 怖くて偉大で大きな木
13.大樹戦 挨拶
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二人は颯爽と木の枝に立つ。目の前にそびえ立ち、存在を発揮している大樹を凝視する。
「どうしますか。ラザク。」
「そうだな」
カウラは一声かけてラザクの方を向く。
ラザクは愛刀を手に持ち、臨戦態勢に入っていた。顔には笑いが見え、童のように待ちきれないといった様子だ。
カウラは頭の中で戦況を整理する。どのように天樹と渡り合うか、軽んじて相対したら命の保証はできない敵だ。しっかりと対策を立てるに越したことはないだろう。
だが、ラザクはカウラのそんな心境になど目もくれなかった。
刀を担いだかと思うと、
「まずは、挨拶だな」
と天樹を見ながら、構えを取った。
「挨拶?」
カウラは言葉の真意がわからずキョトンと首をひねる。が、ラザクはそんなの関係なしに天樹に向かって飛躍した。
「…⁈」
カウラはいきなり横の男がとった行動に目を見開く。
「おらぁ!これでも喰らっとけ!」
ラザクは空中で飛翔したまま上段の構えで刀を握る。すると、刀身が紅の色のように光ったかと思うと、刀に炎が纏われた。
刀に纏った炎は刀身のリーチより長く、業々と燃え盛っており、触れたもの全て焼き尽くすかのようである。
ラザクは炎を纏った刀をそのまま振り下ろし、豪炎を天樹に向かって薙ぎ払う。高熱を帯びた炎の塊が大木に向かって放たれた。
メラメラと燃え盛る塊は大木に辿り着くと、否応無しに、触れる全てを焼き尽くさんとする。バチバチといった轟音を立て、紅蓮の光景を作り上げる。
「はぁ!木偶がぁ!」
「ラザク!」
ラザクが攻撃をくらわした瞬間、下から焦燥感の含まれた声がかけられる。
ラザクにその声音が耳に入った瞬間と、本能が直感的に危険を察知したのは同時だった。
「ぐぅっ…!」
空にいたラザクの元に一つの巨大すぎる根が襲いかかる。地から勢いをつけ、ラザクへと迫ってきたのだ。
致命的な大傷を避けるためラザクは無理やり腕で防ごうとしたが、巨大な根は問答無用にラザクの身体を叩き払う。そのまま、地に叩き落とされたラザクを天樹は二つ目の根を使い、ラザクの身体を縛り付け、
「がぁっ………、くそっ、が…」
縛り付ける力は人間程度では計り知れないほどの剛力だ。ラザクの腕が、胴体が、キシキシと悲鳴をあげる。
「はぁぁ!!」
突如、ラザクを縛り付けた根の元に槍のような電撃が突き刺さる。
カウラの放った雷の一撃。人呼んで「雷突」。カウラの得意技の一つだ。電撃は根を痺れさせ、動きを硬直させた。
「おらぁ!!」
ラザクは根が縛り付ける力を一瞬無くしたことを感知し、持ち前の腕力と刀を使い、根の縛りから無理矢理脱出する。
「うひょあー、焦ったぜ。少し。」
ラザクはカウラのいる所に降り立ち、天樹に直接、盛大に叩き払われた腕をぶらぶらとさせる。そんな様子を見、カウラは今日何度目なのかわからない不満気な表情をラザクに向けた。
「どうして、あなたは身勝手に行動してしまうのですか。一緒にいる者のことも少しは考えてください。」
「別に勝手じゃねえだろ。言ったろ?挨拶するって」
「あなたの常識はどうなっているのですか。」
ラザクは眉を上げて自分したことの愚かさに気づけていないようである。「炎をぶっ放す事が挨拶なのですか?」という指摘したい気はあったが、この男に言っても無意味かと思い吐き出さず、カウラは嘆息気味に呟いた。
「別にいいだろ。無事だったんだし。それより見ろよあれ。」
「誰のおかげで無事だったと。……………?」
カウラは愚痴をこぼすように言い、ラザクの指差したものを見る。それを見ると、不可解な点が見受けられた。
「………私は、割と本気で打ちましたよ。」
「それは、間近で見たから俺も知ってる。けどな、根っこさんは焼かれて焦げただけって感じだな。」
二人の見たものは先ほどラザクを縛り付けた根をカウラが槍のような雷撃で撃ち放った残骸である。根に直撃した部分は表面は焦げてこそいるものの折れたり、貫通などはしていなかった。
「雷突が効いていないというのは結構こたえますね。」
「そう、僻むなよ。お前の雷が尋常じゃない威力だってのは俺がよく知ってる。それで、あの被害ってことは、あの天樹とやらが異常すぎるほどに現実離れしてるってことだ。」
「そうですね。全く、教官もどれほど厄介な任務を私達にやらせるのか。」
カウラは額に手を当てて溜息を出しつつ、状況を見定め、なんとか打開策はないかと思案する。
どうやら、今回の相手は相当手がかかるようだ。
「そういや。」
「?どうしました。ラザク。」
カウラの横でラザクが眉をひそめ、考え込む。そんな様子を見かねたカウラが話しかける。
「いやぁよ、さっき俺がくらわせた炎はどこいった?」
「え?」
カウラとラザクは揃って天樹を見る。しかし、先程までラザクが挨拶だと言い、メラメラと燃えゆる業火を放った所には炎はない。
そこには、焦げた燃え後すら残っていなかった。
「どうしますか。ラザク。」
「そうだな」
カウラは一声かけてラザクの方を向く。
ラザクは愛刀を手に持ち、臨戦態勢に入っていた。顔には笑いが見え、童のように待ちきれないといった様子だ。
カウラは頭の中で戦況を整理する。どのように天樹と渡り合うか、軽んじて相対したら命の保証はできない敵だ。しっかりと対策を立てるに越したことはないだろう。
だが、ラザクはカウラのそんな心境になど目もくれなかった。
刀を担いだかと思うと、
「まずは、挨拶だな」
と天樹を見ながら、構えを取った。
「挨拶?」
カウラは言葉の真意がわからずキョトンと首をひねる。が、ラザクはそんなの関係なしに天樹に向かって飛躍した。
「…⁈」
カウラはいきなり横の男がとった行動に目を見開く。
「おらぁ!これでも喰らっとけ!」
ラザクは空中で飛翔したまま上段の構えで刀を握る。すると、刀身が紅の色のように光ったかと思うと、刀に炎が纏われた。
刀に纏った炎は刀身のリーチより長く、業々と燃え盛っており、触れたもの全て焼き尽くすかのようである。
ラザクは炎を纏った刀をそのまま振り下ろし、豪炎を天樹に向かって薙ぎ払う。高熱を帯びた炎の塊が大木に向かって放たれた。
メラメラと燃え盛る塊は大木に辿り着くと、否応無しに、触れる全てを焼き尽くさんとする。バチバチといった轟音を立て、紅蓮の光景を作り上げる。
「はぁ!木偶がぁ!」
「ラザク!」
ラザクが攻撃をくらわした瞬間、下から焦燥感の含まれた声がかけられる。
ラザクにその声音が耳に入った瞬間と、本能が直感的に危険を察知したのは同時だった。
「ぐぅっ…!」
空にいたラザクの元に一つの巨大すぎる根が襲いかかる。地から勢いをつけ、ラザクへと迫ってきたのだ。
致命的な大傷を避けるためラザクは無理やり腕で防ごうとしたが、巨大な根は問答無用にラザクの身体を叩き払う。そのまま、地に叩き落とされたラザクを天樹は二つ目の根を使い、ラザクの身体を縛り付け、
「がぁっ………、くそっ、が…」
縛り付ける力は人間程度では計り知れないほどの剛力だ。ラザクの腕が、胴体が、キシキシと悲鳴をあげる。
「はぁぁ!!」
突如、ラザクを縛り付けた根の元に槍のような電撃が突き刺さる。
カウラの放った雷の一撃。人呼んで「雷突」。カウラの得意技の一つだ。電撃は根を痺れさせ、動きを硬直させた。
「おらぁ!!」
ラザクは根が縛り付ける力を一瞬無くしたことを感知し、持ち前の腕力と刀を使い、根の縛りから無理矢理脱出する。
「うひょあー、焦ったぜ。少し。」
ラザクはカウラのいる所に降り立ち、天樹に直接、盛大に叩き払われた腕をぶらぶらとさせる。そんな様子を見、カウラは今日何度目なのかわからない不満気な表情をラザクに向けた。
「どうして、あなたは身勝手に行動してしまうのですか。一緒にいる者のことも少しは考えてください。」
「別に勝手じゃねえだろ。言ったろ?挨拶するって」
「あなたの常識はどうなっているのですか。」
ラザクは眉を上げて自分したことの愚かさに気づけていないようである。「炎をぶっ放す事が挨拶なのですか?」という指摘したい気はあったが、この男に言っても無意味かと思い吐き出さず、カウラは嘆息気味に呟いた。
「別にいいだろ。無事だったんだし。それより見ろよあれ。」
「誰のおかげで無事だったと。……………?」
カウラは愚痴をこぼすように言い、ラザクの指差したものを見る。それを見ると、不可解な点が見受けられた。
「………私は、割と本気で打ちましたよ。」
「それは、間近で見たから俺も知ってる。けどな、根っこさんは焼かれて焦げただけって感じだな。」
二人の見たものは先ほどラザクを縛り付けた根をカウラが槍のような雷撃で撃ち放った残骸である。根に直撃した部分は表面は焦げてこそいるものの折れたり、貫通などはしていなかった。
「雷突が効いていないというのは結構こたえますね。」
「そう、僻むなよ。お前の雷が尋常じゃない威力だってのは俺がよく知ってる。それで、あの被害ってことは、あの天樹とやらが異常すぎるほどに現実離れしてるってことだ。」
「そうですね。全く、教官もどれほど厄介な任務を私達にやらせるのか。」
カウラは額に手を当てて溜息を出しつつ、状況を見定め、なんとか打開策はないかと思案する。
どうやら、今回の相手は相当手がかかるようだ。
「そういや。」
「?どうしました。ラザク。」
カウラの横でラザクが眉をひそめ、考え込む。そんな様子を見かねたカウラが話しかける。
「いやぁよ、さっき俺がくらわせた炎はどこいった?」
「え?」
カウラとラザクは揃って天樹を見る。しかし、先程までラザクが挨拶だと言い、メラメラと燃えゆる業火を放った所には炎はない。
そこには、焦げた燃え後すら残っていなかった。
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