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第一章 怖くて偉大で大きな木
25.大樹戦 消息
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川辺から大きく跳躍したラザクは森内の木々をつたい、全速力で天樹本体の元へ向かう。
途中、天樹の根の残党がラザクを襲ってきたりしたが、根に対して抗える手段を手に入れたラザクの前には無意味な襲撃となった。進む先々で迫り来る根の襲撃があるがそれを片付けながらも進むラザク。
すると、ラザクの視界に眩い光が映り込んだ。光差す方向に目を向けると光源はどうやら空高い所のようだ。
森から天空を見上げると、空には黒雲が立ち込めており、さらには耳を研ぎ澄ますまでもなく轟音が甲高く鳴り響いていた。元々、太陽が出ていた今日の天候だったがその時とは打って変わって、今は黒い曇天となっている。
しかし、この黒雲で覆われている空のはずであり、大陽など上空のどこを探しても見当たらないというのに、この凄まじく眩い光はなんだというのか。
「……ちぃっ!」
だが、この光景を目にしたラザクには光の発生源がなんなのか思い当たる節があり、
「…あいつ!」
ラザクは空を睨みつけながら言葉を吐き捨てる。
そう、ラザクはこの暗雲と轟音を生み出した張本人がカウラであるとすぐさま勘付いていた。思わず眉間に皺を寄せ、手に握る力を強める。
この光源はカウラの作り出した雷突で間違いないだろう。陸地を移動しているこの場所からでもよくわかる。凄まじく、絶大な威力のある雷突だ。カウラの作り出した電撃は天樹を、山林を、日輪が光を大地に照らすように眩くさせていた。雷が起こす凄絶な轟音もカウラの雷突が莫大なエネルギーを生み出していることがわかる。
「…馬鹿野郎が」
ラザクは空にいるもう一人の相方に向かって罵言を投げる。今、放たれるカウラの一撃を否定するかのように。
たしかに、今のカウラの作り出した雷突は高威力のダメージを引き起こすだろう。天樹に対しても相当な損傷を与えるのではないだろうか。
しかし、それを創造した張本人に負荷はないのかと言われれば、否だ。あれだけの電圧を雷のエネルギーを間近で扱うというのはどれだけの負荷が、どれだけの重圧が身体全体にふりかかっているのだろうか。ラザクには想像を絶する事態である。まず、間違いなく無傷ではすまない。少なくとも、放った後はまともに身動きがとれるはずがない。
「間に合え…!」
ラザクは木々の枝を盛大に蹴った。今出せる限りのトップスピードを引き出し、韋駄天となり、戦線のど真ん中へと向かう。
一瞬だけ、上空を見上げると、天の光はすでに落下し始めていた。
ーーーーーーーーーーーー
目が朦朧とする。意識も朦朧としている。目の前の起こりうる事象が認識しきれない。身体に力が入らない。右腕に関しては感覚がない。
ー意識を…とばしてはだめ。目を…閉じるな。
空にとどまるカウラはギリギリ生きている視力で事の成り行きを見届けろと己に叱咤する。
横目でチラリと雷突を放った右腕を見ると無残な形姿になっていた。様々な箇所で皮膚はめくれており、多量の血がにじみ出ている。さらには、人の腕とは言い切れないほど黒く焦げてしまっており、痺れているのか神経が死んでいるのか、動かすことができなかった。
「……」
しかし、無言で自分の腕を見たカウラは安堵気味に笑む。正直、腕が引きちぎれているかと思っていたが、まだ見た目はともかく腕は顕在していたので一先ず、最悪は免れたといっていい。
掠れた半目でカウラは自分の放った雷突に目を向ける。疲労困憊で身体もズタボロで脳が機能を停止しそうな状態だったが自分の攻撃だけは見届けるために。
見届けて天樹が雷に打たれ殺される光景を目に焼き尽くすために。
凄絶な轟音を鳴り響かせながら美しく眩く圧縮された高電圧の一撃。
それに対し、天樹は持ちうる根を使えるだけ使い、上空に向けて巨大な壁を作るように迎え撃った。
『大轟の雷突』と化け物天樹がついに衝突する。当たった瞬間周りに凄絶な光を撒き散らし、甲高く、盛大な轟音が山林全体に鳴り響く。
上空にいるカウラからは雷の光のせいで細かなところまでは見きれない。しかし、瞳に映り込む美しい雷光は、耳に響かせる莫大な轟音は天樹に類い稀なく渾身の一撃をくらわしたことの証であり、
「……え?」
カウラは思わず掠れた半目を見開く。雷突の光により、天樹の真上にいるカウラからは下の根は光って見えていた。高電圧の雷塊がバチバチと高鳴っている光景がカウラの視界に映る。しかし、光の端っこでスルスルとにゅるにゅると蠢いている根が視界に入ってきて。
「…嘘、でしょ…?」
カウラは思わず呟いた。掠れ切った声音だったが声を出さずにはいられなかった。
嘘だと、見間違いだと、幻であるといって欲しかった。あれほど身を削り、命を削り、作り上げた最高最強の一撃。自然と同化し、威力の底上げも準じて放った一撃…それにより葬り去っていないなどと。
だが、カウラのそんな一言は空にかっ消えて、カウラのそんな思いは天樹の化け物じみた化け物らしさに無残にも打ち払われる。
天樹は対処法として根を集め、硬化させ、さらには分解させていた細身となった根たちをもう一度、一つの巨大な根へと変化させていた。それにより強固となった根を集め、何重にも密集させて雷突に立ちはだかったのだ。それにより、雷突の一撃を防ぎきった。
「……」
絶句し唖然してしまう。真下の現実についていけず、気が遠くなりそうになる。
ーだめ、だめよ。だ…め、
戦意を失ってはだめだ。天樹を倒さなければならない。
自分の攻撃が対処された。それも痛恨の一撃をあのようにもあっさりと。
見届けて倒す予定だった。全てを雷で焼き尽くすはずだった。
戦気が尽きたわけではない。私はまだ戦わなくては。
「……っ」
唐突にカウラの身体が空でふらつく。四肢は胴は脳はもう、ほぼ機能しない証拠だ。渾身の一撃が看破される。心の中で留めていた何かが尽きた。
意識がすうっと消えていく。気力を保とうとしても身体は今の状態に正直だった。
瞳が閉じられ、頭が落下していく。意識がきれ、カウラという人間が上空から降下していく。
もう、無理な話であり、戦う手段はもう出し尽くした。もう、自分にできることは、
「たくっ…やっぱりかよ」
意識が途切れそうな中、ふと、そんな聞きなれた声音が入り込み。
唐突に、肩と足を抱えられる感触があった。
途中、天樹の根の残党がラザクを襲ってきたりしたが、根に対して抗える手段を手に入れたラザクの前には無意味な襲撃となった。進む先々で迫り来る根の襲撃があるがそれを片付けながらも進むラザク。
すると、ラザクの視界に眩い光が映り込んだ。光差す方向に目を向けると光源はどうやら空高い所のようだ。
森から天空を見上げると、空には黒雲が立ち込めており、さらには耳を研ぎ澄ますまでもなく轟音が甲高く鳴り響いていた。元々、太陽が出ていた今日の天候だったがその時とは打って変わって、今は黒い曇天となっている。
しかし、この黒雲で覆われている空のはずであり、大陽など上空のどこを探しても見当たらないというのに、この凄まじく眩い光はなんだというのか。
「……ちぃっ!」
だが、この光景を目にしたラザクには光の発生源がなんなのか思い当たる節があり、
「…あいつ!」
ラザクは空を睨みつけながら言葉を吐き捨てる。
そう、ラザクはこの暗雲と轟音を生み出した張本人がカウラであるとすぐさま勘付いていた。思わず眉間に皺を寄せ、手に握る力を強める。
この光源はカウラの作り出した雷突で間違いないだろう。陸地を移動しているこの場所からでもよくわかる。凄まじく、絶大な威力のある雷突だ。カウラの作り出した電撃は天樹を、山林を、日輪が光を大地に照らすように眩くさせていた。雷が起こす凄絶な轟音もカウラの雷突が莫大なエネルギーを生み出していることがわかる。
「…馬鹿野郎が」
ラザクは空にいるもう一人の相方に向かって罵言を投げる。今、放たれるカウラの一撃を否定するかのように。
たしかに、今のカウラの作り出した雷突は高威力のダメージを引き起こすだろう。天樹に対しても相当な損傷を与えるのではないだろうか。
しかし、それを創造した張本人に負荷はないのかと言われれば、否だ。あれだけの電圧を雷のエネルギーを間近で扱うというのはどれだけの負荷が、どれだけの重圧が身体全体にふりかかっているのだろうか。ラザクには想像を絶する事態である。まず、間違いなく無傷ではすまない。少なくとも、放った後はまともに身動きがとれるはずがない。
「間に合え…!」
ラザクは木々の枝を盛大に蹴った。今出せる限りのトップスピードを引き出し、韋駄天となり、戦線のど真ん中へと向かう。
一瞬だけ、上空を見上げると、天の光はすでに落下し始めていた。
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目が朦朧とする。意識も朦朧としている。目の前の起こりうる事象が認識しきれない。身体に力が入らない。右腕に関しては感覚がない。
ー意識を…とばしてはだめ。目を…閉じるな。
空にとどまるカウラはギリギリ生きている視力で事の成り行きを見届けろと己に叱咤する。
横目でチラリと雷突を放った右腕を見ると無残な形姿になっていた。様々な箇所で皮膚はめくれており、多量の血がにじみ出ている。さらには、人の腕とは言い切れないほど黒く焦げてしまっており、痺れているのか神経が死んでいるのか、動かすことができなかった。
「……」
しかし、無言で自分の腕を見たカウラは安堵気味に笑む。正直、腕が引きちぎれているかと思っていたが、まだ見た目はともかく腕は顕在していたので一先ず、最悪は免れたといっていい。
掠れた半目でカウラは自分の放った雷突に目を向ける。疲労困憊で身体もズタボロで脳が機能を停止しそうな状態だったが自分の攻撃だけは見届けるために。
見届けて天樹が雷に打たれ殺される光景を目に焼き尽くすために。
凄絶な轟音を鳴り響かせながら美しく眩く圧縮された高電圧の一撃。
それに対し、天樹は持ちうる根を使えるだけ使い、上空に向けて巨大な壁を作るように迎え撃った。
『大轟の雷突』と化け物天樹がついに衝突する。当たった瞬間周りに凄絶な光を撒き散らし、甲高く、盛大な轟音が山林全体に鳴り響く。
上空にいるカウラからは雷の光のせいで細かなところまでは見きれない。しかし、瞳に映り込む美しい雷光は、耳に響かせる莫大な轟音は天樹に類い稀なく渾身の一撃をくらわしたことの証であり、
「……え?」
カウラは思わず掠れた半目を見開く。雷突の光により、天樹の真上にいるカウラからは下の根は光って見えていた。高電圧の雷塊がバチバチと高鳴っている光景がカウラの視界に映る。しかし、光の端っこでスルスルとにゅるにゅると蠢いている根が視界に入ってきて。
「…嘘、でしょ…?」
カウラは思わず呟いた。掠れ切った声音だったが声を出さずにはいられなかった。
嘘だと、見間違いだと、幻であるといって欲しかった。あれほど身を削り、命を削り、作り上げた最高最強の一撃。自然と同化し、威力の底上げも準じて放った一撃…それにより葬り去っていないなどと。
だが、カウラのそんな一言は空にかっ消えて、カウラのそんな思いは天樹の化け物じみた化け物らしさに無残にも打ち払われる。
天樹は対処法として根を集め、硬化させ、さらには分解させていた細身となった根たちをもう一度、一つの巨大な根へと変化させていた。それにより強固となった根を集め、何重にも密集させて雷突に立ちはだかったのだ。それにより、雷突の一撃を防ぎきった。
「……」
絶句し唖然してしまう。真下の現実についていけず、気が遠くなりそうになる。
ーだめ、だめよ。だ…め、
戦意を失ってはだめだ。天樹を倒さなければならない。
自分の攻撃が対処された。それも痛恨の一撃をあのようにもあっさりと。
見届けて倒す予定だった。全てを雷で焼き尽くすはずだった。
戦気が尽きたわけではない。私はまだ戦わなくては。
「……っ」
唐突にカウラの身体が空でふらつく。四肢は胴は脳はもう、ほぼ機能しない証拠だ。渾身の一撃が看破される。心の中で留めていた何かが尽きた。
意識がすうっと消えていく。気力を保とうとしても身体は今の状態に正直だった。
瞳が閉じられ、頭が落下していく。意識がきれ、カウラという人間が上空から降下していく。
もう、無理な話であり、戦う手段はもう出し尽くした。もう、自分にできることは、
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