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3.それでも俺は強く行きたい
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ガタガタと荷物車は道に沿って走っていた。道横には草が茂っており、前方には少し小さな橋が見える。
荷物車に乗っている俺の体に揺れる振動が直接に伝わっている。こんなのは、子供の頃、おばあちゃんの軽トラの荷台に乗って以来の感覚だ。
あぁ、元の世界のみんな元気してるかな。
ちなみに俺は今とても切羽詰まった状況です。
なんて感慨にふけっているが現在進行形でそんな浸れる間もない。
荷物車の前席はとても重苦しい空気を醸し出していた。
「…喋るな」
と、低い声音で言い放つのは俺の首元に手刀を掲げたおっさんだ。鋭利な眼差しを俺に向け先ほどまでの温厚さとは打って変わった雰囲気を醸し出していた。
なんでこんなことになってしまったのだろう
俺はおじさんから鋭い目つきを晒されながらも少しばかり悲観じみて瞳をくもらした。
ーーーーーーーーーー
時は数十分遡る。
俺たち荷物車いっこうは順調に街までの道のりを進んでいた。盗賊に囲まれるとかゴブリンなどが襲来するとかそんなおきまりの展開などはなく、淡々と、駄弁りながら土竜とやらに運ばれていった。
「ところでおっさん、この世界ってどんなとこなんだ?」
「なんだい兄ちゃん、改まって。曖昧とした質問だな。」
「いやいや、俺は記憶喪失なんだぜ?名前以外のこと覚えてねえんだ。つまり、なんつーか、いろいろ教えて欲しいんだよ。」
俺とおっさんは荷物車の御者台で駄弁り合う。
記憶喪失とは言ったがあくまでもそれは表向きに俺が作った設定だ。
だが、それを生かし俺は知れることがあれば知るべきだと考えた。ここは俺の元いた世界とは根本的に違う世界のはずなのだ。そのため、このおじさんからでも知れることは大いにあるはずだ。
「あぁー、そっか兄ちゃん何もしらねぇんだな。つーか、本当に知らないのか?記憶喪失になった人に会うのは俺ぁ初めてだからよお。にわかに信じられない感じだぜ。」
「いやぁ、俺は記憶喪失なんだぜ。いやぁもう、自分の名前以外はさっぱりだ!いやぁもうこの世界ってどんな世界なんだぁ!」
「記憶喪失ねぇ」
「いやもう、無知!」
「…いや、そんな堂々と言われても…」
なんだか、弱冠おっさんの声のトーンが落ちた気がしたが気にせず、俺は情報を求め手招きする。
なんとも奇怪な光景だ。
「つってもよぉ~。何から話せば良いのやら。」
「なんでもいいんだよ。多分、俺ほとんどのこと知らねえから。」
「人は赤ん坊の姿で生まれて大人になるんだぞ?」
「そんなことは知っとるわ!」
おっさんがあまりにも真面目な声で話し出すから何を聞かされるのかウキウキしていたが、なんだがカウンターを喰らったみたいだ。
なんでだよ。そういうとこじゃねぇよ。
「急に大声出すなよ。…びっくりするじゃねえか。」
「こっちがびっくりだわ!なんでそんな当たり前のこと言うんだよ!」
「…なんでも知らないって言ったから」
「違う。求めてるのと違う!」
「…分からんなぁ。」
おっさんはお手上げという風に手をあげる。そのまま土竜の操作に耽り始めた。
「あ、いや、待ってよ。おっさん。もうちょっと。」
「…兄ちゃん、その手の質問は屯所に行った方が早いと思うぞ?」
「…屯所?」
俺がおっさんに対し、せがもうとしたと同時に唐突に言葉を発せられた。
屯所?屯所ってのは多分、兵士とかがいるところか?おそらく、元の世界でいう交番とかにあたる場所だろう。
「そうだ。そこに行けば兄ちゃんの聞きたいことが聞けるだろうし、もしかしたらかくまってくれるかもしれねぇからな。兄ちゃん、どうせ行くあてとかないんだろ?」
「…あぁ、ない。」
「んじゃ、決まりだ。」
と、いう風におっさんは話を進める。
なんとなく、俺の質問避けをされた気もしたが、いや…うん、そんなことはないだろう。こんな優しい人がそんなことをするはずがない。
「…ふむ、屯所とな」
そして、俺は行き先を決められたことで少しこれからのことを考えた。
屯所か。なるほど確かにそこに行けばいろいろと聞ける気がする。
多分、責任者?統率者?とかそのあたりの人もいるだろうし。うん、今俺が行くべき場としては最適解だろう。
「…そうだな。その屯所に行って、いろいろと整理するよ。ありがとなおっさん。」
「いいんだ、いいんだ。ま、屯所の前に兄ちゃんは病院だけどな。」
「いや、いい、いい、いい。そっちはもう大丈夫だから。」
「いや、大丈夫じゃねぇな。重傷だぞ。兄ちゃんはもっと自分の言動を自覚した方がいい。病院行け。」
俺の反対意見に耳を貸さずおっさんは俺を病院に行きたがらせる。こっちは拒否してんのにやたらしつこいんだよなあ。
ねえ。わざとやってる?それとも本気で頭の中見てもらえって心配してくれてんの?どっちにしろ俺の心は今ズタズタよ?
不満げな思念を浮かべながら俺はジト目でおっさんを見ていたのだが、この土竜を操作している人、全く俺の方を見向きをせずに温かな笑みを浮かべていた。
言動を自覚すべきはそっちだよ?
俺のライフはもうゼロだよ。
荷物車に乗っている俺の体に揺れる振動が直接に伝わっている。こんなのは、子供の頃、おばあちゃんの軽トラの荷台に乗って以来の感覚だ。
あぁ、元の世界のみんな元気してるかな。
ちなみに俺は今とても切羽詰まった状況です。
なんて感慨にふけっているが現在進行形でそんな浸れる間もない。
荷物車の前席はとても重苦しい空気を醸し出していた。
「…喋るな」
と、低い声音で言い放つのは俺の首元に手刀を掲げたおっさんだ。鋭利な眼差しを俺に向け先ほどまでの温厚さとは打って変わった雰囲気を醸し出していた。
なんでこんなことになってしまったのだろう
俺はおじさんから鋭い目つきを晒されながらも少しばかり悲観じみて瞳をくもらした。
ーーーーーーーーーー
時は数十分遡る。
俺たち荷物車いっこうは順調に街までの道のりを進んでいた。盗賊に囲まれるとかゴブリンなどが襲来するとかそんなおきまりの展開などはなく、淡々と、駄弁りながら土竜とやらに運ばれていった。
「ところでおっさん、この世界ってどんなとこなんだ?」
「なんだい兄ちゃん、改まって。曖昧とした質問だな。」
「いやいや、俺は記憶喪失なんだぜ?名前以外のこと覚えてねえんだ。つまり、なんつーか、いろいろ教えて欲しいんだよ。」
俺とおっさんは荷物車の御者台で駄弁り合う。
記憶喪失とは言ったがあくまでもそれは表向きに俺が作った設定だ。
だが、それを生かし俺は知れることがあれば知るべきだと考えた。ここは俺の元いた世界とは根本的に違う世界のはずなのだ。そのため、このおじさんからでも知れることは大いにあるはずだ。
「あぁー、そっか兄ちゃん何もしらねぇんだな。つーか、本当に知らないのか?記憶喪失になった人に会うのは俺ぁ初めてだからよお。にわかに信じられない感じだぜ。」
「いやぁ、俺は記憶喪失なんだぜ。いやぁもう、自分の名前以外はさっぱりだ!いやぁもうこの世界ってどんな世界なんだぁ!」
「記憶喪失ねぇ」
「いやもう、無知!」
「…いや、そんな堂々と言われても…」
なんだか、弱冠おっさんの声のトーンが落ちた気がしたが気にせず、俺は情報を求め手招きする。
なんとも奇怪な光景だ。
「つってもよぉ~。何から話せば良いのやら。」
「なんでもいいんだよ。多分、俺ほとんどのこと知らねえから。」
「人は赤ん坊の姿で生まれて大人になるんだぞ?」
「そんなことは知っとるわ!」
おっさんがあまりにも真面目な声で話し出すから何を聞かされるのかウキウキしていたが、なんだがカウンターを喰らったみたいだ。
なんでだよ。そういうとこじゃねぇよ。
「急に大声出すなよ。…びっくりするじゃねえか。」
「こっちがびっくりだわ!なんでそんな当たり前のこと言うんだよ!」
「…なんでも知らないって言ったから」
「違う。求めてるのと違う!」
「…分からんなぁ。」
おっさんはお手上げという風に手をあげる。そのまま土竜の操作に耽り始めた。
「あ、いや、待ってよ。おっさん。もうちょっと。」
「…兄ちゃん、その手の質問は屯所に行った方が早いと思うぞ?」
「…屯所?」
俺がおっさんに対し、せがもうとしたと同時に唐突に言葉を発せられた。
屯所?屯所ってのは多分、兵士とかがいるところか?おそらく、元の世界でいう交番とかにあたる場所だろう。
「そうだ。そこに行けば兄ちゃんの聞きたいことが聞けるだろうし、もしかしたらかくまってくれるかもしれねぇからな。兄ちゃん、どうせ行くあてとかないんだろ?」
「…あぁ、ない。」
「んじゃ、決まりだ。」
と、いう風におっさんは話を進める。
なんとなく、俺の質問避けをされた気もしたが、いや…うん、そんなことはないだろう。こんな優しい人がそんなことをするはずがない。
「…ふむ、屯所とな」
そして、俺は行き先を決められたことで少しこれからのことを考えた。
屯所か。なるほど確かにそこに行けばいろいろと聞ける気がする。
多分、責任者?統率者?とかそのあたりの人もいるだろうし。うん、今俺が行くべき場としては最適解だろう。
「…そうだな。その屯所に行って、いろいろと整理するよ。ありがとなおっさん。」
「いいんだ、いいんだ。ま、屯所の前に兄ちゃんは病院だけどな。」
「いや、いい、いい、いい。そっちはもう大丈夫だから。」
「いや、大丈夫じゃねぇな。重傷だぞ。兄ちゃんはもっと自分の言動を自覚した方がいい。病院行け。」
俺の反対意見に耳を貸さずおっさんは俺を病院に行きたがらせる。こっちは拒否してんのにやたらしつこいんだよなあ。
ねえ。わざとやってる?それとも本気で頭の中見てもらえって心配してくれてんの?どっちにしろ俺の心は今ズタズタよ?
不満げな思念を浮かべながら俺はジト目でおっさんを見ていたのだが、この土竜を操作している人、全く俺の方を見向きをせずに温かな笑みを浮かべていた。
言動を自覚すべきはそっちだよ?
俺のライフはもうゼロだよ。
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