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5.呆れと救いと手詰まりと
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「…………」
「…………」
沈黙が場を支配していた。
そこには荷物車のガタガタとした移動の際に発する音のみが聞こえている。
御者台に座る男二人。それぞれ視線を合わせたまま一言も喋らない。
静寂が場を包んでいた。
「………」
いや、気まずっ⁈
何この状況?何これ?なんかおっさん話せよ。つーか俺が言い返せばいいの?いや、でもさっき喋るなとかガチトーンで言われたし。
おじさんは未だに俺の首元に手刀を向けている。そして未だに俺に対してギラリとした瞳を睨め付けていた。
さも、言ってやったとでも言わんばかりの表情を俺に向けていた。
あー、うん。おっさんの娘に対する溺愛度はよく分かったからとりあえずその手刀どけない?
そんなことを考えてみるが、目の前のおじさんは手刀を引っ込める意思はないようだ。
なんやかんやで、そんな均衡状態が続いている。
何この空気、気まずっ。
「…娘はなぁ。」
⁈
俺がどうにかこの状況ぶっ壊れねぇかなぁと思い沈んでいると、再びおじさんが語り出した。
語り出してくれた。おじさんが声を発したことで、沈黙が崩れ去った。とりあえず、気まずい空気が立ち去ってくれた。が
「出来が良すぎる子なんだわ」
まだ惚気続ける気かよ!
このおっさんの娘ラブはさっき散々伝わったわ。
この親バカがぁ!
なんて事を胸の内側で俺は叫んでしまうが、おっさんはそれを気にも掛けない。
溺愛心を伝えようとしてきている。そして手刀はいまだ健在だ。(なんでだよ)
ちなみにというと、やっぱり娘さんはまだ書に嗜んでいた。
ーなんでだよ!娘ぇ!こっち気づけぇぇぇぇ。
俺は思念だけで言葉を飛ばそうと試みる。が、そんな俺の心の木霊はどこにも届かず、おっさんは娘に対する思いを語り出す。
「そんな娘を可愛いと思う輩がいるのは仕方ない。可愛いからな。」
あー、はいはい。そうですね。
「だがな、そんな娘によってたかる男どもは俺が許さん。」
うわぁー、理不尽。
「娘はどんな男にも渡さん。」
娘さんも大変だな。鳥籠じゃねえか。
「あの子は一生、我が家から出さずに過ごさせてやるんだ」
「…拉致監禁じゃねぇか‼︎」
ーあっ
止むを得ず俺は盛大におじさんの言葉につっこんでしまう。均衡状態が崩れ去る。御者台の雰囲気が様変わりする。
「…何だと、お前」
一言、俺に告げられるのはおじさんの静かな怒声だ。向けられる視線がさらに鋭くなる。
場の重い緊張感が一瞬にして跳ね上がった。
おっと、しまった。あまりにもおっさんの言うことが親心から離れすぎていたため大声を出してしまった。
いや、でも仕方ないよ。このおっさん言うことが怖いんだもん。
「…ちょっと!お父さん何してるの?」
すると、そんな重苦しい空気に対し、凛とした声音が響く。透き通るようで芯のある一言。
何を隠そう。先ほどまで書を嗜んでいた娘の一声だ。
ーあぁ~、やっと気づいたんか。遅いよぉ。
やっとこのムードからおさらば出来る一安心。
俺が安堵の瞳を浮かべながら娘さんを見ると、そこには腰に手を当てて口を尖らせながら突っ立っている少女の姿がそこにはあった。
急に現れた娘はおじさんにとってはすこぶる予想外だったようであり。
驚愕した表情を浮かべている。
おぉ、おっさん。なんかめっちゃ慌ててる。
「…い、いや、ニーナ。違うぞ。今は、この兄ちゃんに町に行ったらどうすりゃいいかとか教えてて」
「…違うって何が?私は何も言ってないよ?」
おじさんの心苦しい言い分。
それに対し、娘はキョトンと首を傾げ、見つめる。
見つめる、が…娘の目を見るとなんだか瞳に光がないように思えた。
ちょっと、怖いよ娘さん。なんか怖い。
口を滑らしてしまっているおっさんは軽くあたふたしている。娘さんはそんな様子を黙って静かに見つめていた。
というか、このおっさんめ。当たり前のように嘘言いやがって。俺は町のことなんてなんも聞いてねぇぞ。おまえの惚気しか聞いてねぇぞ。
「…その手は何?」
「あ、いやこれは…兄ちゃんの首に虫が止まってて」
いや、違います。これは敵意のこもった手刀です
「さっきのおっきな声は?」
「それは、ええっーとぉ、……」
娘さん。多分、俺の必死の叫びです。
「拉致監禁?とか聞こえたけど?」
「ち、違うぞ。ニーナ。それは何かの聞き間違いだ。」
いや、聞き間違いじゃありません。俺はしっかりとそう叫びました。
ていうか、このおっさん。実の娘に全然頭が上がらねぇじゃねえか。
娘の弁明から逃れるために当然のように嘘言うし。
「…お父さん。」
「な、なんだいニーナ。」
少し笑みを浮かべながら娘は実の父に顔を向ける。
それをおっさんは朗らかな瞳で見つめ返して、
「今度、今みたいなことしてたらもう口聞かないよ。」
「え?ニーナ?ニィーナァぁぁぁぁ⁈」
それだけ言葉を残すとぷいっと振り返り荷台にそそくさと戻る娘。
おじさんは思いもしなかった言葉なのか動揺を隠し切れていなかった。
「………」
俺は何を見せられてんだ。
なんて客観的に場を見やり、いつのまにか傍観者になっている俺。
だが、一つだけ知れたことが一つあった。
娘さんの名前、ニーナって言うんだね。
「…………」
沈黙が場を支配していた。
そこには荷物車のガタガタとした移動の際に発する音のみが聞こえている。
御者台に座る男二人。それぞれ視線を合わせたまま一言も喋らない。
静寂が場を包んでいた。
「………」
いや、気まずっ⁈
何この状況?何これ?なんかおっさん話せよ。つーか俺が言い返せばいいの?いや、でもさっき喋るなとかガチトーンで言われたし。
おじさんは未だに俺の首元に手刀を向けている。そして未だに俺に対してギラリとした瞳を睨め付けていた。
さも、言ってやったとでも言わんばかりの表情を俺に向けていた。
あー、うん。おっさんの娘に対する溺愛度はよく分かったからとりあえずその手刀どけない?
そんなことを考えてみるが、目の前のおじさんは手刀を引っ込める意思はないようだ。
なんやかんやで、そんな均衡状態が続いている。
何この空気、気まずっ。
「…娘はなぁ。」
⁈
俺がどうにかこの状況ぶっ壊れねぇかなぁと思い沈んでいると、再びおじさんが語り出した。
語り出してくれた。おじさんが声を発したことで、沈黙が崩れ去った。とりあえず、気まずい空気が立ち去ってくれた。が
「出来が良すぎる子なんだわ」
まだ惚気続ける気かよ!
このおっさんの娘ラブはさっき散々伝わったわ。
この親バカがぁ!
なんて事を胸の内側で俺は叫んでしまうが、おっさんはそれを気にも掛けない。
溺愛心を伝えようとしてきている。そして手刀はいまだ健在だ。(なんでだよ)
ちなみにというと、やっぱり娘さんはまだ書に嗜んでいた。
ーなんでだよ!娘ぇ!こっち気づけぇぇぇぇ。
俺は思念だけで言葉を飛ばそうと試みる。が、そんな俺の心の木霊はどこにも届かず、おっさんは娘に対する思いを語り出す。
「そんな娘を可愛いと思う輩がいるのは仕方ない。可愛いからな。」
あー、はいはい。そうですね。
「だがな、そんな娘によってたかる男どもは俺が許さん。」
うわぁー、理不尽。
「娘はどんな男にも渡さん。」
娘さんも大変だな。鳥籠じゃねえか。
「あの子は一生、我が家から出さずに過ごさせてやるんだ」
「…拉致監禁じゃねぇか‼︎」
ーあっ
止むを得ず俺は盛大におじさんの言葉につっこんでしまう。均衡状態が崩れ去る。御者台の雰囲気が様変わりする。
「…何だと、お前」
一言、俺に告げられるのはおじさんの静かな怒声だ。向けられる視線がさらに鋭くなる。
場の重い緊張感が一瞬にして跳ね上がった。
おっと、しまった。あまりにもおっさんの言うことが親心から離れすぎていたため大声を出してしまった。
いや、でも仕方ないよ。このおっさん言うことが怖いんだもん。
「…ちょっと!お父さん何してるの?」
すると、そんな重苦しい空気に対し、凛とした声音が響く。透き通るようで芯のある一言。
何を隠そう。先ほどまで書を嗜んでいた娘の一声だ。
ーあぁ~、やっと気づいたんか。遅いよぉ。
やっとこのムードからおさらば出来る一安心。
俺が安堵の瞳を浮かべながら娘さんを見ると、そこには腰に手を当てて口を尖らせながら突っ立っている少女の姿がそこにはあった。
急に現れた娘はおじさんにとってはすこぶる予想外だったようであり。
驚愕した表情を浮かべている。
おぉ、おっさん。なんかめっちゃ慌ててる。
「…い、いや、ニーナ。違うぞ。今は、この兄ちゃんに町に行ったらどうすりゃいいかとか教えてて」
「…違うって何が?私は何も言ってないよ?」
おじさんの心苦しい言い分。
それに対し、娘はキョトンと首を傾げ、見つめる。
見つめる、が…娘の目を見るとなんだか瞳に光がないように思えた。
ちょっと、怖いよ娘さん。なんか怖い。
口を滑らしてしまっているおっさんは軽くあたふたしている。娘さんはそんな様子を黙って静かに見つめていた。
というか、このおっさんめ。当たり前のように嘘言いやがって。俺は町のことなんてなんも聞いてねぇぞ。おまえの惚気しか聞いてねぇぞ。
「…その手は何?」
「あ、いやこれは…兄ちゃんの首に虫が止まってて」
いや、違います。これは敵意のこもった手刀です
「さっきのおっきな声は?」
「それは、ええっーとぉ、……」
娘さん。多分、俺の必死の叫びです。
「拉致監禁?とか聞こえたけど?」
「ち、違うぞ。ニーナ。それは何かの聞き間違いだ。」
いや、聞き間違いじゃありません。俺はしっかりとそう叫びました。
ていうか、このおっさん。実の娘に全然頭が上がらねぇじゃねえか。
娘の弁明から逃れるために当然のように嘘言うし。
「…お父さん。」
「な、なんだいニーナ。」
少し笑みを浮かべながら娘は実の父に顔を向ける。
それをおっさんは朗らかな瞳で見つめ返して、
「今度、今みたいなことしてたらもう口聞かないよ。」
「え?ニーナ?ニィーナァぁぁぁぁ⁈」
それだけ言葉を残すとぷいっと振り返り荷台にそそくさと戻る娘。
おじさんは思いもしなかった言葉なのか動揺を隠し切れていなかった。
「………」
俺は何を見せられてんだ。
なんて客観的に場を見やり、いつのまにか傍観者になっている俺。
だが、一つだけ知れたことが一つあった。
娘さんの名前、ニーナって言うんだね。
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