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第1章: 初等部
闘技大会とお友達と。
しおりを挟む日はすぎて、現在10月頃。
学校には慣れたが、現在も親しいと呼べる友達はいない悲しい現実、しくしく。
そして今日は何の日かと言うと、「3学園合同闘技大会」である。基本的には四年に一度なのだが、去年行われるはずの大会が他の学園で大きな事件があったらしく、異例の翌年への延期となったらしい、その為、出ることが出来るのは去年学園の生徒だった者のみ。去年の高校科の卒業生が出場できる分、今年の新入生は出ることができない。
この四年に一度という制度だと歳によって不利だという意見があるがそんなことはない、初等科の人でも優勝したという歴史がある。
年により優勝する人の学年はまちまちだし、一番上の学年だと決まっているわけではないのだ。
大抵の場合は、私たち鳳来学園では剣士科と魔法科の生徒がメインだが、もちろん普通科の生徒も出ることができる。
残る二つの学園は「枢木くるるぎ学園」と「聖セントルジアンナ学園」である。
これは実のところゲームのイベントであり、好感度の高い人物やどのルートかをしっかり見極められるイベントで、更に言えばゲーム内では人気の高いイベントだ。
正直、今の私には一切関係ない上に、そもそも所詮はモブなのでイベントなんて事象は少しも関係ないのだけれど。
枢木学園は西日本の学園で、剣士科や魔法科はもちろん、武道科や銃弓科に加え鍛治科など専門職に長けている。また枢木学園のみ存在する妖術科というものもある。そのため、遠方にも関わらず枢木学園に通う人も多い。
聖ルジアンナ学園は、海外圏の学園でヨーロッパあたりを代表としている。
日本にはない白魔法や黒魔法を扱っている。
剣士科なども勿論あるが主に魔法に長けている学園だ。
闘技大会は、個人戦とチーム戦の二つがある。
まず個人戦を2日にわけて行い、それから3日ほど日を空けてチーム戦を2日にわけて行う。
闘技大会に出場するものは2週間前から鳳来学園へ来て鍛錬を行う。そこで親交を深めることも多い。そして、療養として一週間ほど期間をおいてから自分の学園へ帰るため1ヶ月ほどこちらに滞在することになる。
この闘技大会はとてもハイレベルで世界的に有名で注目度が高いため、ここで優勝をおさめると名のある討伐隊(魔物を討伐するための組織)などから声がかかる。
「個人戦のトーナメント表が出てたけど、篤也さんは3試合目だったよ。」
円香がトーナメント表をみて私にそう伝えてくれる。
そうなのだ、あの激戦の中をお兄様は勝ち抜いたのだ。総計実質数千人の中を予選で勝ち上がったお兄様。正直、人数を見た瞬間規模がデカすぎると思ったけれど、それだけ大きな大会なのだと実感した。数千人の中から本戦にあがれるのはたったの64人だけ。
予選1グループにつき500人程を一気に戦いの場に上げてそこから1グループ8人ずつ残るようにする。
時に異例はあれど基本はそのようにしている、出場人数が多い場合は各グループの人数を増やしている。
「流石、篤也さん。かっこよすぎるぞ俺の師匠。」
梓が師匠の部分を少し強調して言う。
そして自慢げにふふんと鼻をならした。
「綾ちゃん、早く席に行こう。いい席がなくなっちゃうよ。」
相当広いから大丈夫だと思うけどね。
どこにいても見えるし、でも確かになるべく近くで見たい。
そう思って四人で席を探して会場へと入る。
想像以上に広すぎて驚く。こんな中で戦うのは緊張してしまいそうだ。
「綾ちゃん! 席あったよ!」
いつの間にか円香は前から数列目くらいの席を見つけて私に呼びかける。素晴らしい探索能力。
そうして、その席に座ると隣から「あっ」という声が上がった。
そちらを向くとそこには華京院 雫さんがいた。
「あ、こんにちは、華京院さん。」
「こんにちは、三ヶ森さん。君のお兄さん凄いね、あたしも応援してるよ。」
「ありがとう。」
やっぱり華京院さんはかっこいいなぁ。
「……ああ、雫のクラスの人か。」
華京院さんの向こう側から、男の子がひょっこり顔を出す。それからジトリと私の顔を見てボソリと言葉を溢した。
それは華京院 雨香くんで、私にとっては知ってる人であれど対面するのは始めてのことだった。
「雨香、この人はあたしのクラスメイトの三ヶ森 綾子さんだよ。」
「……あぁ、雫が良く話題に出す人でしょ? 知ってるよ。」
「い、いや、それは、何言ってんの!?」
華京院さんは恥ずかしそうにあわあわと慌てて、その後にバッとこちらに顔を向けた。
「そ、その、話題に出してるっていうのは、あの。」
「雫、あんたのこと気になってんだよ。自分と同じくらい剣の技術があって、それを過信しないからって。」
華京院さんが、顔を真っ赤にしながら俯く。
なんだこの子可愛すぎる。ゲームに登場してもおかしくないくらい可愛すぎる。
「せっかく同じクラスだもの、私も仲良くしたいな!」
私が笑いかけると、華京院さんはとても嬉しそうな顔をしてコクコクと頷く。
「あたしのことは雫って呼んでよ! 綾子って呼んでもいい……?」
「ええ、ぜひ!」
私たちが打ち解けたところで隣の円香が私の服の裾をくいっと引っ張る。
「……仲間外れは良くないわ。」
口をつんと尖らせる円香、とても可愛い。
「私の友人の天龍寺 円香。普通科だけど同じ学園の同級生だよ!」
円香と雫が顔を合わせて、それからよろしくと手を取り合った。
それから3人で談笑している途中に、雫がはっとして華京院くんの腕をくいっと引き自己紹介を勧めた。
「別に、ボクは……。」
華京院くんがモゴモゴとしながら躊躇うが、覚悟を決めたように私たちに向き直る。
「ボクは華京院 雨香。雨香って呼んでもいいよ……。」
雨香くんは口下手なようであまり多くを語らない。雫と同じようなベリーショートの青髪、顔立ちは確かに似ているがはっきりと2人を見分けることは出来る。
雨香くんが少しでも心を開いてくれたことに、私は何だか嬉しさを感じる。
それにしても、何でこの世界は乙女ゲーの登場人物に負けないようなキャラがそれなりに居るんだろう。正直、雨香くんも攻略対象いけると思う。下手したら雫がライバルキャラもいけちゃう気がする。どうしよう、私の周りで新たな乙女ゲーが展開されかけているわ。
私はそんなことを考えつつも、雫と雨香くんと円香と共に会話を繰り広げる。
幸いにも、年上の2人は楽しく談笑している。気でも使っているのかもしれないがこちらの話には入ってくる気配はない。そのおかげか、同い年の4人で大いに親交を深めることが出来たわけだ。
楽しい時間を過ごしていると、あっという間に個人戦の第1試合が始まった。
流石、本戦というだけあって強者揃い。剣の道を極めている私にとっては剣以外を使う者の動きも勉強になった。なんせ、回避や簡単な魔法の応用などは私にも必須の動きであるから。
お兄様の出る第3試合までは有名な人もおらず、更に違う学校の人ばかりで見ていて白熱はしなかった。
しかしお兄様が出た瞬間、会場がわっと盛り上がる。なんせ、若くして討伐隊に所属しているお兄様の知名度は高い。
その討伐隊が名のあるもので、『虧月楼』という東日本支部国家機関の討伐隊である。
日本には二大討伐隊があり、虧月楼の対極として西日本支部国家機関に『盈月楼』がある。
その虧月楼に最年少で入隊したのがお兄様である。なんか、お兄様ってチートすぎる存在だわ。ちなみに入隊したのはお兄様が8歳の頃である。その頃から学園の初等部では桁外れの剣術を持ち合わせていて、その才能を買われたのだ。
そんなこんなで、お兄様はかなりの有名人。学園で友達が出来ないと嘆くが、周りがただ近づけないだけではなかろうか。
住む世界が違い過ぎて。
「篤也くーん!!!」
「篤也くん、頑張れー!」
などとこのように声援が来ているわけである。
そんなお兄様の相手は知らない剣士さん。
「一回戦、第3試合……始め!」
その掛け声と共にお兄様はぐっと間合いをつめて相手の剣士に一撃を食らわせる。
しかし、相手はその剣を受け止めて跳ね返す。
お兄様が着地すると、相手はそこへバッと近づき剣を一振りする。お兄様は一瞬油断していた気を引き締めるかのように剣をぐっと握りしめて、相手の剣を受け止め、それを自分の剣の軌道に乗せて弾く。
それは、一年ほど前に私と手合わせをした時に私に対して使った技だった。名称こそ無いが、お兄様の技である。その時、私は剣ごと弾かれてしまったが、相手は腕を少し上に弾かれただけであった。
しかし、その一瞬の隙が命取り。
「三ヶ森流、伍の舞、水仙」
相手の一瞬の隙を作ったお兄様は、瞬時に自身の奥義を発動させる。
お兄様は剣を構えてそこに魔力を注ぐ。そして水を纏った刀が相手を斬る。
水の滴という魔力の刃は無数の傷を与える。相手が怯んでいる隙にとどめと言わんばかりに渾身の力で吹き飛ばし一気に場外へ。
それはまさに一瞬の出来事。
「勝者、三ヶ森 篤也!」
その勝利宣言で会場は一気に湧き上がった。
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