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XV 危険なティータイム -IV
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目の前の彼女とは、今日で会うのが2回目だ。故にはっきりと分かった訳では無い。しかし、見た限り愛情に疎い子の様だ。マリアも、愛を育むのが下手だった。自身の意志が無いのかと思う程、“自身が愛す”事よりも、“自身が愛される”事を重視する。彼女がマリアと同じだとは思えないが、愛されたいと願っている所は少し重なる様に思えた。
マリアと関わっていた私は、どんな私だっただろう。マリアは人に多くを望まなかった為、彼女の求める“私”が分からなかった。故に、マリアに見せていた顔がどんな顔だったのかが思い出せない。その時その時で、見せていた顔が違ったのでは無いだろうか、なんて思ってしまう位だ。
「――エル、です」
やや俯きがちな彼女が、ぽつりと名を口にする。
「エルちゃんかぁ、可愛い名前だね」
柔らかくそう笑って、ビスケットをもう一枚口へ運んだ。
悶々とした疑問が、彼女――エルから流れてくる。彼女はあまり、疑問に思った事を本人には尋ねない性格の様だ。何を疑問に思っているのかは分からないが、私に不信感を抱いているのは確かだ。
今日は折角、彼女を訪ねて来たのだ。彼女の覚悟とセドリックへの想いだけでなく、私への不信感の理由を探るのも良いだろう。それともう一つ、彼女とこれから付き合っていく上でどのような“私”で居ればいいかも知りたいところである。
現在分かっている事は、彼女は強い口調の人物や心情が読めない人物を苦手としている、という事だけだ。何故そんな彼女がセドリックを選んだのかは分からないが、なるべく彼女を警戒させない様に口調は軽やかに、上機嫌で居る様に心掛けている。しかしそれでも、彼女はまだ私に心を開いてはくれない。
「ところでエルちゃん、歳幾つ? 大人びて見えるけど、私達と同じ位かな」
「……えっと、18よ」
「えっ! 想像していたより若い! でも、一応成人はしてるんだね」
正直彼女の年齢は、聞く迄見当がつかなかった。大人しい所を見ると自分達と同じ様に感じるが、その幼さの残る愛らしい顔を見ていると少々子供っぽくも見えてくる。
しかし、成人済みの女性だという事が知れて安心した。もし仮に彼女を匿う事に失敗した場合、未成年か、成人済みかでも罪の重さは変わってくる。
――だが、今の質問で彼女の不信感を増加させてしまった様だ。
彼女はどうやら、自身が屋敷を抜け出した事が知られた場合セドリックが“誘拐犯”に仕立て上げられてしまう事を分かっている様で、彼女自身もそれを危惧している様だった。セドリックを想う気持ちに、嘘偽りは無いらしい。
今の所彼女から伝わってくる感情を推測するに、彼女は私を、“自分を排除しようとしている人間”だと思っている可能性が高い。まだ確実と決まった訳では無いが、その思いは少なからず彼女の中に存在しているだろう。
「エルちゃんと、お洒落なバーとか行ったら楽しそうだなあ。私結構お酒は強い方なんだけど、エルちゃんは?」
私は決して、彼女を排除しようとしている訳では無い。勿論彼女がいい加減で我儘な令嬢であれば元居た場所に帰すつもりであったが、そんな子では無い事はもう既に分かっていた。
彼女の警戒心を解く様に、頭に並べ立てた話題の中から最も他愛のないものを選ぶ。
「……お酒は、まだ得意では無くて」
「ざんねーん。でも、確かにお酒あんまり得意じゃなさそうなイメージはあったかも」
そろそろ、踏み入った話をしても良いだろうか。これ以上他愛のない話を重ねても、彼女の警戒心は解けない。ならばいっそ、踏み込んだ話をして彼女の心情を探ってしまった方が早いかもしれない。なんて思いながらも、ふふ、と1人笑みを零す。
すると、意外にも彼女の方から話題を切り出した。
マリアと関わっていた私は、どんな私だっただろう。マリアは人に多くを望まなかった為、彼女の求める“私”が分からなかった。故に、マリアに見せていた顔がどんな顔だったのかが思い出せない。その時その時で、見せていた顔が違ったのでは無いだろうか、なんて思ってしまう位だ。
「――エル、です」
やや俯きがちな彼女が、ぽつりと名を口にする。
「エルちゃんかぁ、可愛い名前だね」
柔らかくそう笑って、ビスケットをもう一枚口へ運んだ。
悶々とした疑問が、彼女――エルから流れてくる。彼女はあまり、疑問に思った事を本人には尋ねない性格の様だ。何を疑問に思っているのかは分からないが、私に不信感を抱いているのは確かだ。
今日は折角、彼女を訪ねて来たのだ。彼女の覚悟とセドリックへの想いだけでなく、私への不信感の理由を探るのも良いだろう。それともう一つ、彼女とこれから付き合っていく上でどのような“私”で居ればいいかも知りたいところである。
現在分かっている事は、彼女は強い口調の人物や心情が読めない人物を苦手としている、という事だけだ。何故そんな彼女がセドリックを選んだのかは分からないが、なるべく彼女を警戒させない様に口調は軽やかに、上機嫌で居る様に心掛けている。しかしそれでも、彼女はまだ私に心を開いてはくれない。
「ところでエルちゃん、歳幾つ? 大人びて見えるけど、私達と同じ位かな」
「……えっと、18よ」
「えっ! 想像していたより若い! でも、一応成人はしてるんだね」
正直彼女の年齢は、聞く迄見当がつかなかった。大人しい所を見ると自分達と同じ様に感じるが、その幼さの残る愛らしい顔を見ていると少々子供っぽくも見えてくる。
しかし、成人済みの女性だという事が知れて安心した。もし仮に彼女を匿う事に失敗した場合、未成年か、成人済みかでも罪の重さは変わってくる。
――だが、今の質問で彼女の不信感を増加させてしまった様だ。
彼女はどうやら、自身が屋敷を抜け出した事が知られた場合セドリックが“誘拐犯”に仕立て上げられてしまう事を分かっている様で、彼女自身もそれを危惧している様だった。セドリックを想う気持ちに、嘘偽りは無いらしい。
今の所彼女から伝わってくる感情を推測するに、彼女は私を、“自分を排除しようとしている人間”だと思っている可能性が高い。まだ確実と決まった訳では無いが、その思いは少なからず彼女の中に存在しているだろう。
「エルちゃんと、お洒落なバーとか行ったら楽しそうだなあ。私結構お酒は強い方なんだけど、エルちゃんは?」
私は決して、彼女を排除しようとしている訳では無い。勿論彼女がいい加減で我儘な令嬢であれば元居た場所に帰すつもりであったが、そんな子では無い事はもう既に分かっていた。
彼女の警戒心を解く様に、頭に並べ立てた話題の中から最も他愛のないものを選ぶ。
「……お酒は、まだ得意では無くて」
「ざんねーん。でも、確かにお酒あんまり得意じゃなさそうなイメージはあったかも」
そろそろ、踏み入った話をしても良いだろうか。これ以上他愛のない話を重ねても、彼女の警戒心は解けない。ならばいっそ、踏み込んだ話をして彼女の心情を探ってしまった方が早いかもしれない。なんて思いながらも、ふふ、と1人笑みを零す。
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