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XXXVIII 生と死-IV
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――私の先程の言葉は、今になってこそ言える事だ。本当に、あの時彼が出て行ってしまっていたら、未来は無かったと言える。
こうして、自身の心中を隠す様に、彼を揶揄う様な言葉を掛けてしまうのは何故だろうか。
セドリックがあのまま屋敷を出て行ってしまわなくて良かった、引き止める事が出来て良かった、殺されなくて良かった。それが、私の本心の筈なのに、敢えて彼の神経を逆撫でするようなことを言ってしまう。
彼に心中を隠す必要は無い。だが、これが彼に見せている“私”なのだ。
セドリックとは幼少期から共にしていた筈なのに、いつの間にか私の中には彼だけに見せる私が生まれていた。
誰しもが、心の中に色んな自分を飼っているものだろう。しかし私の場合は、今の様に重要な場でも本来の私が見せられない。だいぶ重症である。
そんな中、マクファーデンには作り物ではない本当の私を見せていた気がした。ぼんやりと彼を思い、僅かに痛む胸を押さえ息を吐く。
「――おふざけはこの位にして、本題に入ろうか。今回は特別に、このマーシャ様が完全犯罪を伝授してあげよう」
「……今迄散々口出ししてきたと思ったら、今度は殺人の伝授だと? 笑わせるな」
「まぁまぁ、話は最後まで聞きなさいな」
ポケットに入れた、今回の計画で最も重要な物。それを取り出し、彼に手渡す。
無言で此方に視線を向ける彼に小さく頷いて見せると、彼がやや躊躇いながらもその手紙を開いた。
「――……」
手紙を読み終えた彼は、何も言わない。
その視線の動きを見るに、彼は何度も手紙を読み返している様だ。
理解が、追い付いていないのかもしれない。しかしそれも当然だろう。ウォーレンは、文字の読み書きが得意では無かった。
私が彼に文法を教え、誰でも理解出来る手紙に仕上げても良かったのだが、文字の読み書きが不得手な彼が完璧な遺書を残したら不自然だろう。ウォーレンの自殺さえも、他殺だと疑われてしまうかもしれない。だから敢えて、彼の書く文字で、彼の文章で遺書を書いて貰った。
理解出来ないなりにも、彼はその手紙が遺書だと言う事に気付いた様だ。
「……なんだこれ」
「見ての通り、遺書」
そう告げると、彼が再び手紙――及び遺書に視線を落とす。
「……その遺書を書いた人が、連続婦女暴行事件の主犯格、アルフレッド・ガーランドを殺害した犯人」
「……!?」
「に、なる人」
爆発しそうな程蓄積していた筈の彼の殺意は、もう伝わってこない。私の計画を、今はただ聞いて、理解をしようとしてくれている様だった。
「その人に、セディの罪を被って死んでもらう」
ゆったりと足を組みなおし、ふふ、と笑って告げた。
やはり、彼は分かり易い。感情に蓋をするつもりがないのか、彼の心がダイレクトに流れてくる。
きっと彼は今、こう思っている筈だ。――最も恐ろしいのは私だと。
遺書をテーブルに抛った彼が、ソファの背凭れに身を沈めた。
「お前、いつも何処でこんな情報仕入れてんの?」
「……ナイショ♡」
こうして、自身の心中を隠す様に、彼を揶揄う様な言葉を掛けてしまうのは何故だろうか。
セドリックがあのまま屋敷を出て行ってしまわなくて良かった、引き止める事が出来て良かった、殺されなくて良かった。それが、私の本心の筈なのに、敢えて彼の神経を逆撫でするようなことを言ってしまう。
彼に心中を隠す必要は無い。だが、これが彼に見せている“私”なのだ。
セドリックとは幼少期から共にしていた筈なのに、いつの間にか私の中には彼だけに見せる私が生まれていた。
誰しもが、心の中に色んな自分を飼っているものだろう。しかし私の場合は、今の様に重要な場でも本来の私が見せられない。だいぶ重症である。
そんな中、マクファーデンには作り物ではない本当の私を見せていた気がした。ぼんやりと彼を思い、僅かに痛む胸を押さえ息を吐く。
「――おふざけはこの位にして、本題に入ろうか。今回は特別に、このマーシャ様が完全犯罪を伝授してあげよう」
「……今迄散々口出ししてきたと思ったら、今度は殺人の伝授だと? 笑わせるな」
「まぁまぁ、話は最後まで聞きなさいな」
ポケットに入れた、今回の計画で最も重要な物。それを取り出し、彼に手渡す。
無言で此方に視線を向ける彼に小さく頷いて見せると、彼がやや躊躇いながらもその手紙を開いた。
「――……」
手紙を読み終えた彼は、何も言わない。
その視線の動きを見るに、彼は何度も手紙を読み返している様だ。
理解が、追い付いていないのかもしれない。しかしそれも当然だろう。ウォーレンは、文字の読み書きが得意では無かった。
私が彼に文法を教え、誰でも理解出来る手紙に仕上げても良かったのだが、文字の読み書きが不得手な彼が完璧な遺書を残したら不自然だろう。ウォーレンの自殺さえも、他殺だと疑われてしまうかもしれない。だから敢えて、彼の書く文字で、彼の文章で遺書を書いて貰った。
理解出来ないなりにも、彼はその手紙が遺書だと言う事に気付いた様だ。
「……なんだこれ」
「見ての通り、遺書」
そう告げると、彼が再び手紙――及び遺書に視線を落とす。
「……その遺書を書いた人が、連続婦女暴行事件の主犯格、アルフレッド・ガーランドを殺害した犯人」
「……!?」
「に、なる人」
爆発しそうな程蓄積していた筈の彼の殺意は、もう伝わってこない。私の計画を、今はただ聞いて、理解をしようとしてくれている様だった。
「その人に、セディの罪を被って死んでもらう」
ゆったりと足を組みなおし、ふふ、と笑って告げた。
やはり、彼は分かり易い。感情に蓋をするつもりがないのか、彼の心がダイレクトに流れてくる。
きっと彼は今、こう思っている筈だ。――最も恐ろしいのは私だと。
遺書をテーブルに抛った彼が、ソファの背凭れに身を沈めた。
「お前、いつも何処でこんな情報仕入れてんの?」
「……ナイショ♡」
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