DachuRa 3rd story -天使と讃えられたのは、悲劇に堕ちた哀れな教唆犯-

白城 由紀菜

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XL その後の話-I

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「お待たせしましたぁ」

 ゴト、と鈍い音を立てテーブルに置かれたのは、パイントグラスに注がれた2人分の安酒。相変わらずふちギリギリまで注がれていて、持ち上げただけで零してしまいそうだ。

「お疲れ、アリアちゃん」

 顔を上げ、酒を持って来た女給――アリアにそう告げると、彼女が一瞬だけ切なげな表情を見せた。


 他の客から少し離れた、4人掛けの席。アリアと隣同士で座り、控えめな乾杯をしてグラスに口を付ける。

「ちゃんとおねーさんの言う通り、“ステラちゃん”の事迎えに行ったよ。ウォーレンさんが亡くなったばかりで憔悴しきってたけど、警察にはちゃんと、落ち着いて色々と話が出来たみたい」

「そう……、良かった」

「事件の真相にも、多分気付いてないと思う。ウォーレンさんがフレッドを殺して、自殺したって事で納得してるみたいだった。あと、ステラちゃんには娼婦の仕事はさせてないよ。一応この店は、暗黙のルールとしてお酒と女の子はセット、みたいな所があったんだけど、ステラちゃんまだ入ったばかりだからママが止めてた。幸いにもお客さん達も理解してくれてて、ステラちゃんに執拗に迫る人も今の所居ない。でも本人が、落ち着いたらそっちの仕事もするって言い張ってるから、いずれは娼婦になると思うけどね」

 彼女の言葉に耳を傾けながら、新しい女給――ステラの方へ視線を遣る。
 まだ仕事には慣れていない様だが、それでもステラは客と楽し気に会話をしていた。事件からまだ僅か4日しか経過していないが、笑顔を見せられる位には回復をした様だ。

「色々迷惑かけてごめんね、アリアちゃんもつらかったよね」

「うぅん、いいの。フレッドを殺してやりたいって思ってたのは私も同じだし、本当なら、被害者である私やウォーレンさんが手を下さなくちゃいけなかった。その仕事をおねーさん達に押し付けちゃったのは申し訳ないと思ってるんだ」

「計画を企てたのは私だから、そんな風に思わないで。私達は守りたい人を守る為に行動に移しただけ。アリアちゃん達の代わりに殺したって訳でもないから。それより、此処の御主人にはステラちゃんの事なんて話したの?」

「あぁ、えっと……、ウォーレンさんの妹だって話はしてある。ママには犯人グループの1人がウォーレンさんだって事話してなかったから、彼の事ただの1人の客として認識してたみたいなんだけど、新聞見て今回の事件を知ったみたいで……。最初こそ、『どんな理由があろうと殺人は許せる事では無い』なんて言ってたけど、ウォーレンさんに凄く同情してるみたいだった。ステラちゃんにも事件の話はせず、二つ返事で雇ってくれたし……邪険にする事無く、ちゃんとステラちゃんとも向き合ってくれてるよ」

「そっか」

 アルフレッドとウォーレンの事は、大きな騒ぎになる事は無かったものの夕刊紙に掲載はされた。貧民街での事件だからか、警察もあまり捜査をする事は無く、犯人は遺書を残して自殺したウォーレンという事で片づけられた様だった。
 しかし、1つだけ気になる事がある。それは、殺人事件の記事にロンドン市内を騒がせた“婦女暴行事件”が絡んでいた事が記載されていない事だ。
 遺書を残していた為、警察も婦女暴行事件の犯人グループ内で起こった揉め事だという事は分かっているだろう。その情報を、新聞社が入手しない訳がない。
 しかし、どれだけ疑問に思ったところでどうする事も出来ない。新聞に掲載された事が、この街での“真実”だ。何が起ころうと、私はセドリックに疑いの目が向かなければそれでいい。今はそう思っていた。
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