DachuRa 3rd story -天使と讃えられたのは、悲劇に堕ちた哀れな教唆犯-

白城 由紀菜

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XL その後の話-II

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「そういえばアリアちゃん、私ウォーレンさんから伝言預かってるんだ」

「伝言?」

 パイントグラスに口を付けながら、彼女が首を傾げる。

「うん。『君を愛していた』、『つらい思いをさせてしまって申し訳なかった』って、亡くなる直前に言ってた」

「――……」

 グラスをテーブルに置いた彼女の瞳が、僅かに揺れた。

「……わ、私も」

 私から視線を外し、俯いた彼女が言葉を漏らす。

「私も、彼を愛してた」

 彼女の瞳に、滲んだ涙。しかしそれを零す事無く、彼女は笑った。

「ねぇ、おねーさん」

「ん?」

「もし、もしもの話だよ。私とウォーレンさんがいつか生まれ変わったら、その時はちゃんと結ばれますようにって……神様にお祈りしても良いかなぁ。神様はそんな私の願いを、許してくれるかなぁ」

「……!」

 彼女の言葉に思わず涙がじわりと滲んでしまい、それを隠す様に咄嗟に彼女から顔を背けた。彼女の言葉は、私にとってあまりに残酷で、苦しいものだった。
 もっと、別の方法で救う事が出来れば。もっと早く、事件に気付いていれば。そんな後悔が次々と溢れて止まない。

「……うん。私も、来世で2人が結ばれる事を祈ってる」

 自身の、酷く震えた声。抑える事が出来なかった涙が、テーブルに落ちる。

「やだ、おねーさん泣かないで」

 そう言って私の肩を揺すった彼女も、同じ様に泣いていた。そんな彼女の涙を見て、更に涙が溢れ頬を伝い落ちる。

「――ごめん、ごめんね」

 私にも、まだ人の心が残っていたのだ。そう実感しながらも、言葉を紡ぐ。

「2人を救ってあげられなかった。ごめん」

 ――私は、また“失敗”した。マリアの時に、私はもう二度と彼女の様な人は出さないと誓ったのに。再び、死を救済に使ってしまった。
 私はただ、人の幸せを願っていただけだった。なのに、残酷にも私の思いは悲劇に堕ちていく。

「――ごめんなさい……」


 
 その日、私は酒場が閉店する迄アリアと共に泣き続けた。子供の様に嗚咽を漏らし、ただ、この世にはもういないウォーレンやマリアの事だけを思いながら。

 ――店を後にした時に見えた、プレートが置かれた隅の席。この店に入って来た時には、ただ誰かに予約された席なのだと思い気にも留めていなかった。しかしよく見てみれば、置かれたプレートには“Warren Barclay Reserved seat〈ウォーレン・バークレイ 指定席〉”と書かれていた。
 ウォーレンはもうこの世には存在しない。もう、この店に来ることは二度とない。
 それでも、ウォーレンは今でもこの店の常連客なのだ。
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