DachuRa 3rd story -天使と讃えられたのは、悲劇に堕ちた哀れな教唆犯-

白城 由紀菜

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XLII 悪魔は忘れた頃にやってくる-II

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――
Dear Miss Reynolds, 《親愛なる ミス レイノルズ》

The devil comes when he forgets.《悪魔は忘れた頃にやってくる。》

But never forget.《でも決して忘れないで。》

What he is waiting for is none other than you.《彼が待っているのは他でもない貴女。》 

Mabel Balfour《メイベル・バルフォア》
――

 ゴールドのインクで書かれたその文字は、前回同様手本の様に癖が無く美しい。
 しかし、相変わらずメッセージの意味を理解する事は出来なかった。

「……予言するなら、もっと分かり易く書いて欲しいんだけどなぁ」

 誰も居ないホールで1人呟き、封筒にカードを戻しながら溜息を吐く。
 だが、心の何処かで安堵していた。“悪魔”という単語が気になるものの、今回はあまり大きな予言では無さそうだ。
 少なくとも、“前回の様な事”は起こらないだろう。
 
 ――私の身に、何かが起こる分には一向に構わない。もし万が一、アルフレッドの件で警察の目がセドリックに向いてしまった時。全ては私が企てた事であり、あの男も私が殺したと証言して彼の代わりに留置所へ入る位の覚悟は最初から出来ていた。
 不幸になるのは、私1人でいい。その不幸に、セドリックやエル等の周囲の人間を巻き込みたくない。巻き込む必要は無い。
 私はあくまで、彼等を守る為に存在しているのだから。


「――珍しいな、お前が紅茶飲んでないの」

 突如自身の近くで聞こえた声に、大きく肩が揺れる。
 顔を上げると、いつの間に屋敷に入ってきたのかセドリックが私の顔を覗き込んでいた。
 玄関が開いた音に気が付かない程考え込んでいただなんて、と思いながらも、彼の呑気な台詞に苛立ちが沸き上がる。

「あんたが依頼者放り出して直ぐ家に帰っちゃうからでしょ! 面談に追われて紅茶淹れる時間無かったの!」

「そうか」

 なんの悪びれも無く、かといって感謝する訳でも無く、彼が無表情のまま私の言葉に頷いた。
 私は頷いて欲しい訳でも、紅茶を飲んでいない理由を分かって欲しい訳でも無い。ただ、仕事をして欲しいだけなのだ。
 彼の態度次第では大目に見てあげようとも思っていたが、この様子じゃ無理そうである。

「私! 今日用事あるから! 出かけるから!」

「は?」

「だから、あんたは今日1日此処に居てよね!」

「ちょ、ちょっと待て」

 困惑の声を上げる彼を尻目に、革の鞄にマクファーデンから受け取った例の本と黒の封筒を押し込んだ。
 そして、鞄を引っ掴み玄関へと足を向ける。

「エルを家に1人にしたくないんだが」

「エルちゃんを理由にすんな馬鹿! 大事な大事なエルちゃんを支える為にも、あんたは黙って仕事してろ馬鹿!」

 子供の様にセドリックに向かって暴言を吐き、バタン、と大きな音を立て玄関を閉めた。
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