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L 愛の言葉-II
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「……ごめんね、先生。今のが嘘」
「嘘……?」
「うん。全部嘘、ってのが嘘。愛してるよ先生」
エルの言う通り、逃げ道でも無いとやっていけない。人の愛を疑い始めたら、不安や恐怖から抜け出せなくなってしまう。
飼い慣らされた末に捨てられてしまうのなら、その時は死を選べば良い。都合の良い“信じる”と言う言葉を使って、素直に飼い猫になってやっても良いかもしれない。
女の足音が、カーテンへと近づいてくる。その音を聞きながら、彼の唇に自らの唇を押し当てた。
「――エドワード先生?」
カーテンの前で女の足音がぴたりと止まり、そして何の躊躇いも無く、勢いよくカーテンが開かれた。仰向けになった私と、女の視線が交わる。
「な、何をしているんですの……!?」
小さな悲鳴を上げ、口元を両手で覆った女と、思わず苦笑いを浮かべてしまう私。マクファーデンは女の存在を少なからず気にはしている様だが、ぼんやりとしたままで使い物にはならなさそうだった。
「あぁ、えっと、驚かせてしまってごめんなさい」
咄嗟に口にしたのは、瞬時に思い浮かんだ嘘。又もや“嘘”だ。今日はよく嘘をつく日だな、なんて自業自得なのを棚に上げ、小さく息を吐いた。
「私、個人的に医学に興味があって先生から色々教わっていた者なんですが、ついうっかり転んでしまって。先生が庇ってくれようとしたみたいなんですが、先生もバランスを崩してしまって……この有り様です」
「あ、あら……そうでしたの……。とても、驚きましたわ」
女の声に、漸くマクファーデンが私の上から退く。
「此処は私的空間です。金輪際、勝手に入ったり覗いたりはしないように」
随分と、冷淡で辛辣だ。彼の言葉に、女の顔が怯えた様に引き攣る。この女の事は好きにはなれないが、流石に可哀想だと同情してしまう。
「ご、ごめんなさい! どうしても、エドワード先生にお会いしたくって……」
「僕に会いたいと思われるのはご自由ですが、診療所は遊びに来る場所ではありません。患者を受け入れる場所です。――と、以前にも申し上げた筈ですが」
「で、でも、今日はエドワード先生の為にエクルズケーキを焼きましたの! 是非食べて頂きたくて……」
「ご遠慮致します。お引き取りください」
マクファーデンが女の横を擦り抜け、カーテンの向こう側へと去っていく。その瞬間、女が私を恨めしそうに睨みつけた。
「どうせ、医学を学んでいるというのは嘘なのでしょう。エドワード先生に近付きたいだけの、卑しい雌猫が」
品位の欠片も無い、嫉妬に塗れた暴言。何処か元大家のシーラに重なり、少しでも同情した事を思わず後悔した。
彼女は随分と、マクファーデンに深い恋心を抱いている様だ。尚、マクファーデンはその気持ちを微塵も受け入れる気が無い様だが。
「待ってくださいまし! エドワード先生!」
女は振り返る事無く、マクファーデンの後を追いかける。静寂が訪れた部屋の中で、私は小さく溜息を吐きながら起き上がった。
「あの男の恋人になりました、なんて言ったら、袋叩きに合いそう……」
静かな部屋で独言を漏らし、服についた僅かな埃を手で払い落しながらふふ、と自嘲に似た笑みを零した。
「嘘……?」
「うん。全部嘘、ってのが嘘。愛してるよ先生」
エルの言う通り、逃げ道でも無いとやっていけない。人の愛を疑い始めたら、不安や恐怖から抜け出せなくなってしまう。
飼い慣らされた末に捨てられてしまうのなら、その時は死を選べば良い。都合の良い“信じる”と言う言葉を使って、素直に飼い猫になってやっても良いかもしれない。
女の足音が、カーテンへと近づいてくる。その音を聞きながら、彼の唇に自らの唇を押し当てた。
「――エドワード先生?」
カーテンの前で女の足音がぴたりと止まり、そして何の躊躇いも無く、勢いよくカーテンが開かれた。仰向けになった私と、女の視線が交わる。
「な、何をしているんですの……!?」
小さな悲鳴を上げ、口元を両手で覆った女と、思わず苦笑いを浮かべてしまう私。マクファーデンは女の存在を少なからず気にはしている様だが、ぼんやりとしたままで使い物にはならなさそうだった。
「あぁ、えっと、驚かせてしまってごめんなさい」
咄嗟に口にしたのは、瞬時に思い浮かんだ嘘。又もや“嘘”だ。今日はよく嘘をつく日だな、なんて自業自得なのを棚に上げ、小さく息を吐いた。
「私、個人的に医学に興味があって先生から色々教わっていた者なんですが、ついうっかり転んでしまって。先生が庇ってくれようとしたみたいなんですが、先生もバランスを崩してしまって……この有り様です」
「あ、あら……そうでしたの……。とても、驚きましたわ」
女の声に、漸くマクファーデンが私の上から退く。
「此処は私的空間です。金輪際、勝手に入ったり覗いたりはしないように」
随分と、冷淡で辛辣だ。彼の言葉に、女の顔が怯えた様に引き攣る。この女の事は好きにはなれないが、流石に可哀想だと同情してしまう。
「ご、ごめんなさい! どうしても、エドワード先生にお会いしたくって……」
「僕に会いたいと思われるのはご自由ですが、診療所は遊びに来る場所ではありません。患者を受け入れる場所です。――と、以前にも申し上げた筈ですが」
「で、でも、今日はエドワード先生の為にエクルズケーキを焼きましたの! 是非食べて頂きたくて……」
「ご遠慮致します。お引き取りください」
マクファーデンが女の横を擦り抜け、カーテンの向こう側へと去っていく。その瞬間、女が私を恨めしそうに睨みつけた。
「どうせ、医学を学んでいるというのは嘘なのでしょう。エドワード先生に近付きたいだけの、卑しい雌猫が」
品位の欠片も無い、嫉妬に塗れた暴言。何処か元大家のシーラに重なり、少しでも同情した事を思わず後悔した。
彼女は随分と、マクファーデンに深い恋心を抱いている様だ。尚、マクファーデンはその気持ちを微塵も受け入れる気が無い様だが。
「待ってくださいまし! エドワード先生!」
女は振り返る事無く、マクファーデンの後を追いかける。静寂が訪れた部屋の中で、私は小さく溜息を吐きながら起き上がった。
「あの男の恋人になりました、なんて言ったら、袋叩きに合いそう……」
静かな部屋で独言を漏らし、服についた僅かな埃を手で払い落しながらふふ、と自嘲に似た笑みを零した。
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