DachuRa 3rd story -天使と讃えられたのは、悲劇に堕ちた哀れな教唆犯-

白城 由紀菜

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LX 衝突-II

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 トレーに1人分の紅茶を乗せキッチンを出ると、ホールには既に着替え終わった彼女がソファに座っていた。その髪はここに来た時と変わって綺麗に結い上げられていて、先程とはまた別の印象を抱く。

「洗面所にあった、リボン、勝手に借りちゃったけど良かったかしら」

「……私の口から良いとは言えないけど。どうしてあれがセディのだって分かったの?」

 紅茶を彼女の前に出し、やや無愛想に問い掛ける。すると、彼女が少々困った様な顔をして「分かるものは分かるのよ」と言った。
 ブレの無い優雅な動きで、彼女が紅茶を手に取り、カップに口を付ける。その姿は何故だか、もう長らく思い出していなかったマリアの存在と重なった。マリアの動きも、彼女と同じ様に優雅でブレが無かった。

「……貴女、あの手紙の差出人でしょ」

 目を伏せながら紅茶を飲む彼女に問い掛けると、彼女がパチリと瞳を開いた。ストロベリーピンクの瞳が私を射る様に見つめる。

「……確か、名前はメイベル・バルフォア」

 言葉を続けると、彼女が薄く笑った。

「貴女は記憶力が良いのね。そうよ、私がメイベル。手紙を出したのは私で間違いないわ」

「なんで、ここに来たの?」

「あら、先程話したじゃない。貴女の幼馴染さんが、此処で休んでいって良いと言ってくれたのよ」

「セディと話したの?」

「ええ、少しだけ」

 返答が見つからず、沈黙が流れる。
 そこでふと、とある事に気が付いた。私は、彼女――メイベルから
 その事に今まで気付かなかったのは、マクファーデンと居て感覚が鈍ってしまったからだろうか。心を読まない事が、今は当たり前のように感じていた。
 しかし、更にもう1つの事実に気付く。
 私はメイベルの心が“読めない”のではなく、心を“読まないように”しているのだ。
 メイベルの心を読もうとすると、脳がびりびりと痺れるような恐怖を感じ、心を読んではいけないと生得的とも言える警報が脳内に響き渡る。
 読んでしまったら最後、私は私で居られなくなる様な。その先に待つのは精神の崩壊だという事を、僅かに感じ取った。それほど、彼女の中に流れる情報は多いということだ。
 自身の能力をコントロールする事が出来たなんて、と驚きながらも、玄関扉に目を遣った。
 セドリックが戻ってくる気配は未だ無い。間に合わなかったのだろうか。嫌な思考が頭を回り始め、額を手で押さえて溜息を吐く。

「彼等の未来、教えて差し上げましょうか。貴女――ミセス・レイノルズにはまだあと1回チャンスがあるのよ」

「……1回?」

「そう。私は1人の人間に3回までしか予言をしないの」

「なにそれ、なんかの法則でもあんの?」

「いいえ、ただのポリシーの様なものよ」

 メイベルがくすりと、余裕のある笑みを浮かべる。
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