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LX 衝突-III
しおりを挟む「……てか、3回って言ったけど、私既に3回予言されてるから」
「先程の手紙の事かしら。あれはノーカウントにしてあげるわ。私の力を貴女に貸しただけだもの」
彼女の言葉に溜息を吐き、向かいのソファに身を投げる様に腰を下ろした。
「……予言は聞かない。私はセディ達が間に合うって、3人を助けられるって信じてる」
「信じる心だけでは人を救えないわ」
「……!」
メイベルの言葉は、何も間違っていない。信じる心だけでは何も救えない事位分かっている。
しかし、未来を聞いて何になる?
未来を止める事なんて出来ない。目の前の彼女は涼しい顔をして紅茶を啜っているが、私にとっては人生を左右する程大事な事なのだ。“予言”なんてもので、未来を知りたくないというのが本音だった。出来る事なら、寸前まで彼等を信じていたい。
「まぁ、そうね。貴女が未来を知った所で、今の貴女に出来る事は何も無いかもしれないわね。今はただ“彼の帰りを待って”、そして“彼の口から真実を聞いて”初めて貴女に出来る事が生まれる」
「なにそれ、予言?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。これはちょっとした親切心よ」
「残りの1回に、カウントされんの?」
「しないでおいてあげるわ。特別よ。でも、私は貴女が望む時には決して貴女の前には現れない。だから、最後の1回は今使っておくべきだと思うけど」
嫌味の籠った彼女の言葉に、ただ黙って唇を噛みしめる。
彼女は確かに、「彼の帰りを待って、そして彼の口から真実を聞いて初めて貴女に出来る事が生まれる」と言った。それは、予言の1つだと捉えて良いだろう。
――彼の口から、真実を聞く。
――そこで初めて、私に出来る事が生まれる。
つまりは、私が3人の為に部屋を用意するのは無駄だという事だ。では、間に合わなかったという事か? 私が見たあの光景は“未来”だった? それとも“現在”だった?
抑々、私が見たあの光景は何だったのか?
「……力、貸すって言ったよね。あれ、なんだったの」
「あら? 何も見えなかった?」
「……いや、変な映像が見えた。でも、あれだけじゃ何が起こったのか分からない。ちゃんと説明して」
ソーサーにカップを戻し、テーブルに置いた彼女が小さく咳払いをする。そして何かを考えこむ様な表情を浮べた。
「私の血液を体内に取り込むと、私と同じ様に未来が少しだけ見える様になるの。貴女は聞いた事が無いかしら、掌を切って合わせて、血液を混ぜて契りを交わす、というの」
「そんなの、ただの都市伝説でしょ」
「そうね、それは都市伝説かもしれない。けれど、私の場合はそれが出来るのよ。勿論、どれだけ見えるかは混ぜた血液の量にも依るわね。でも、あまりにも多量に血液を流し込むと感染症を引き起こしてしまったり、血液が体内で固まって最悪の場合死に至る。だから、無暗に出来る行為では無いの」
「回りくどい。簡潔に話して」
「貴女は随分せっかちね。幼馴染さんとは大違い」
「……」
心底、鼻につく女だ。先程から彼女は、余計な一言で私を苛つかせる。しかし何よりも気に食わないのは、“我関せず”と言った顔をしている事だった。
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