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VI 晩餐
エインズワース家の人間だけが使う事を許された晩餐室。
大きなテーブルの中心に置かれた花瓶と、活けられた色とりどりの花。背の高い豪華な燭台。並べられているのは、3人分の食事。
父は仕事で常に忙しく、普段は母と2人で食事をする事の方が多い。その為、家族揃っての食事は非常に珍しい。
だがそれは私にとって決して喜ばしい事では無く、寧ろ息の詰まる、拷問の様な時間だった。
特に会話が無く、無言で進められていく食事。恐怖心からかあまり食が進まず、もう食事の時間は残り僅かだというのに、皿には半分以上の料理が残ってしまっている。
――もう随分と前の事になるが、今日の様に3人で食事をした際、出された料理を全て食べきれなかった事があった。その後の事は、大体の察しが付くであろう。
それを見た父が晩餐室に料理人を呼びつけ、そして彼に私が食べ残した料理を浴びせ「娘の口に合わない料理人などこの家に要らない」と酷く叱責した。
幸いその料理人が解雇になる事は無かったが、彼は酷く心を痛め、結果この屋敷を去ってしまった。
その時彼が私に残した最後の言葉。
『貴族の御機嫌取りをする為に料理を学んだのでは無い』
それは今でも、私の心から消える事は無かった。
早く、食べなければ。時間内に全て食べきらなければ。また、料理人が叱責されてしまうかもしれない。時計の秒針の音が自身を急かし、少しずつ心音が上がっていく。
だがどれだけ料理を口に運ぼうとしても、緊張なのか恐怖心なのかどうしても躊躇ってしまい、結局口の中に含む事が出来ずフォークを皿の上に戻してしまう。
この際、食が進んでいない事を父に悟られる前に、「体調が優れない」等と言って早めに退席してしまおうか。
――いや、それはなんの解決にもならない。
父の事だ。きっと何かと理由を付けて使用人を責めるだろう。もう、父から理不尽に叱責される使用人を増やしたくない。
ワイングラスに注がれた水を飲み干し、込み上げる吐き気を何とか抑える。
「――エル」
突如父から声を掛けられ、思わず身体が大きく震えた。早鐘を打つ心臓を父に悟られない様表情を引き締め、顔を上げる。
「なぁに、お父様」
貴族の令嬢らしく、穏やかに、淑やかに、精一杯の笑顔を顔に作る。
食が進んでいない事を指摘されるか、それとも、食事のマナーが悪いとでも言われるか。
私の瞳を見据える父の顔は無表情で、感情を読み取る事が出来ない。止まらない動悸に、そろそろ笑顔が崩れてしまいそうだ。
笑顔が崩れる前に、話を早く進める様にと首を傾げて見せる。
「スタインフェルド家の事は、お前も知っているな」
「…え?」
まるで想像していなかった話題に、思わず間抜けな声を出してしまう。
父の言ったスタインフェルド家とは、エインズワース家と肩を並べる程の名家だ。だが、スタインフェルド家は多額の財産を隠し持っていると噂されていて、その噂が真実であればエインズワース家よりも優等な家である。
「も、勿論、知っているわ。それが、どうかしたの…?」
思考を埋め尽くす嫌な予感。
恐らく、その予感は的中すると、本能が意地悪く告げる。
出来る事なら聞きたくない。だが、それは許されない。父が口を開くのを黙って見つめながら、耳を塞ぎたい衝動を何とか抑える。
「スタインフェルド家のご子息から、今朝手紙が届いた」
父が徐に、ジャケットの内ポケットから1通の手紙を取り出す。そして私に、読めとでも言うようにテーブルの上に“それ”を落とした。
父の顔を一瞥し、その手紙に手を伸ばす。
「私は、悪い話では無いと思っている」
手紙を手にした私に、父がワインを飲みながら軽い口調で告げた。
十分すぎる程の高品質な紙に、スタインフェルド家の家紋が押された封蝋。スタインフェルド家から出された正式な手紙に間違いは無い様だ。
すでに開封済みのその封筒から便箋を1枚抜き取り、ゆっくりと開く。
「……」
予想は的中、とでも言うべきだろうか。
1枚の便箋に書かれた文章。それを簡潔に言うならば、スタインフェルド家の嫡男、キース・スタインフェルドからの婚約の申し出だった。
「お前にとっては、良い話だろう?」
父が一瞬だけ見せた、嘲笑にも似た笑み。その意味が分からず、首を傾げる。
「キース君はお前を大層気に入っている様でね。あの家は金遣いが荒い事で有名だが、それでも今の地位を維持出来ているという事は、それだけの財産があるという事だろう。お前も、欲しい物は何でも与えられる生活が出来る筈だ」
「……私、そんな生活を望んでいる訳じゃないわ」
反射的に、漏らしてしまった言葉。ハッと我に返り、慌てて手紙から顔を上げ父の顔に視線を合わせる。
「…ほう?じゃあ、どんな生活を望んでいるんだ」
父は相変わらず無表情だ。だが、私の発言で目の色が変わった事ははっきりと分かった。
「言ってみろ」
バン、と強くテーブルに置かれたワイングラス。その拍子にグラスの中のワインが波打ち、白いテーブルクロスに飛び散った。
「…あ…の、…なんでもないの、ただ、その、あまり我儘を言ってしまってはキース様を困らせると思って、その…エインズワース家の人間として、慎ましく暮らすべきだと思っただけよ」
口から零れた、出まかせの言葉。だが、我ながら上手い言い訳が出来たのではないかと自負する。
私の言葉を聞いた父が満足げな顔で微笑み、頷いた。
「あぁ、そうか。嬉しいよ、やはりお前は、私の自慢の娘だ」
父の言葉に、ずきりと胸が痛む。
「心配する事は無い。キース君はとてもいい青年だよ。お前には勿体ない程の…ね」
「ええ…そうね」
彼――キース・スタインフェルドと顔を合わせたのは過去に1度だけだった筈だが、それだけで私の事を気に入ったりなどするだろうか。端正な顔立ちをした彼は女性からの人気も高く、社交界では女性に囲まれていた記憶がある。
本能的に感じる不自然さ。だがそれを追求する事は出来る筈も無く、私は父の言葉に微笑みを返す事しか出来なかった。
「スタインフェルド家とは交流を深めておきたかったんだ。キース君がお前を気に入ってくれて良かったよ。彼はお前が18歳になったら正式に婚約したいと言っている。きっとお前の誕生日パーティーでも顔を合わせる事になるだろう。失礼の無いようにしなさい」
「…はい」
18歳。それは、この国を生きる人間が“成人”と見なされる年齢。
私の18歳の誕生日まで、あと2ヵ月。残された時間は短い。
きっと私は何も出来ないままこの2ヵ月を過ごし、スタインフェルド家に嫁ぐ事になるのだろう。
もう、感情なんて物を持ってはいけない。そんな思考が少しずつ自身の中に広がっていくのを感じながら、手紙を閉じ、封筒の中に戻した。
――“貴方は、幸せ”。
いつかの母が言った言葉。母も、エインズワース家に嫁いだ時今の私と同じ気持ちだったのだろうか。
母は今も顔色1つ変えず、話に関与するつもりも無い様で黙々と食事を口に運んでいる。私の婚約には、興味を一切示していない様だ。
――私は、幸せ。
心の中で、そう唱えてみる。だが、それをすればする程、心が石化していく様に重くなっていく。
「エル、どうしたんだ。食べないのかい?」
父の声。それが、やけに遠くで聞こえた様な気がした。
自分が自分でなくなってしまった様で、酷く気分が悪い。だが、その気分の悪ささえも、段々と私では無い人間の物の様に感じてくる。
「少し、婚約の話に驚いただけよ。大丈夫」
父に、再び笑顔を見せる。
「ただ、ごめんなさい。今日は先に失礼するわ」
皿には料理が残ったまま。この後、父が料理人を叱責するかどうかは私には分からない。
だが今の父は婚約の話で頭がいっぱいの様で、私が席を立っても咎める様な事はしなかった。
「キース君に合う日の為にも、今から十分に休息を取っておくといい。睡眠と休息が、女性の美を保つ秘訣だと良く言われているだろう。お前も、今は自分の容姿を磨く事を最優先に考えなさい。――キース君の為に」
父の声を背で聞きながら、晩餐室の扉に手を掛ける。
私は今から何処へ戻るというのだろう。
寝室に戻り、少し早いが寝間着に着替え、ベッドに潜り込む。きっと、今晩も眠りにつくことは出来ない。だが、どう足掻いても陽は昇り、日付は過ぎていく。
私に、戻れる場所などない。私に、休息をとれる場所は無い。
私はもう、止まる事は出来ない。
何処にも、戻れない。
大きなテーブルの中心に置かれた花瓶と、活けられた色とりどりの花。背の高い豪華な燭台。並べられているのは、3人分の食事。
父は仕事で常に忙しく、普段は母と2人で食事をする事の方が多い。その為、家族揃っての食事は非常に珍しい。
だがそれは私にとって決して喜ばしい事では無く、寧ろ息の詰まる、拷問の様な時間だった。
特に会話が無く、無言で進められていく食事。恐怖心からかあまり食が進まず、もう食事の時間は残り僅かだというのに、皿には半分以上の料理が残ってしまっている。
――もう随分と前の事になるが、今日の様に3人で食事をした際、出された料理を全て食べきれなかった事があった。その後の事は、大体の察しが付くであろう。
それを見た父が晩餐室に料理人を呼びつけ、そして彼に私が食べ残した料理を浴びせ「娘の口に合わない料理人などこの家に要らない」と酷く叱責した。
幸いその料理人が解雇になる事は無かったが、彼は酷く心を痛め、結果この屋敷を去ってしまった。
その時彼が私に残した最後の言葉。
『貴族の御機嫌取りをする為に料理を学んだのでは無い』
それは今でも、私の心から消える事は無かった。
早く、食べなければ。時間内に全て食べきらなければ。また、料理人が叱責されてしまうかもしれない。時計の秒針の音が自身を急かし、少しずつ心音が上がっていく。
だがどれだけ料理を口に運ぼうとしても、緊張なのか恐怖心なのかどうしても躊躇ってしまい、結局口の中に含む事が出来ずフォークを皿の上に戻してしまう。
この際、食が進んでいない事を父に悟られる前に、「体調が優れない」等と言って早めに退席してしまおうか。
――いや、それはなんの解決にもならない。
父の事だ。きっと何かと理由を付けて使用人を責めるだろう。もう、父から理不尽に叱責される使用人を増やしたくない。
ワイングラスに注がれた水を飲み干し、込み上げる吐き気を何とか抑える。
「――エル」
突如父から声を掛けられ、思わず身体が大きく震えた。早鐘を打つ心臓を父に悟られない様表情を引き締め、顔を上げる。
「なぁに、お父様」
貴族の令嬢らしく、穏やかに、淑やかに、精一杯の笑顔を顔に作る。
食が進んでいない事を指摘されるか、それとも、食事のマナーが悪いとでも言われるか。
私の瞳を見据える父の顔は無表情で、感情を読み取る事が出来ない。止まらない動悸に、そろそろ笑顔が崩れてしまいそうだ。
笑顔が崩れる前に、話を早く進める様にと首を傾げて見せる。
「スタインフェルド家の事は、お前も知っているな」
「…え?」
まるで想像していなかった話題に、思わず間抜けな声を出してしまう。
父の言ったスタインフェルド家とは、エインズワース家と肩を並べる程の名家だ。だが、スタインフェルド家は多額の財産を隠し持っていると噂されていて、その噂が真実であればエインズワース家よりも優等な家である。
「も、勿論、知っているわ。それが、どうかしたの…?」
思考を埋め尽くす嫌な予感。
恐らく、その予感は的中すると、本能が意地悪く告げる。
出来る事なら聞きたくない。だが、それは許されない。父が口を開くのを黙って見つめながら、耳を塞ぎたい衝動を何とか抑える。
「スタインフェルド家のご子息から、今朝手紙が届いた」
父が徐に、ジャケットの内ポケットから1通の手紙を取り出す。そして私に、読めとでも言うようにテーブルの上に“それ”を落とした。
父の顔を一瞥し、その手紙に手を伸ばす。
「私は、悪い話では無いと思っている」
手紙を手にした私に、父がワインを飲みながら軽い口調で告げた。
十分すぎる程の高品質な紙に、スタインフェルド家の家紋が押された封蝋。スタインフェルド家から出された正式な手紙に間違いは無い様だ。
すでに開封済みのその封筒から便箋を1枚抜き取り、ゆっくりと開く。
「……」
予想は的中、とでも言うべきだろうか。
1枚の便箋に書かれた文章。それを簡潔に言うならば、スタインフェルド家の嫡男、キース・スタインフェルドからの婚約の申し出だった。
「お前にとっては、良い話だろう?」
父が一瞬だけ見せた、嘲笑にも似た笑み。その意味が分からず、首を傾げる。
「キース君はお前を大層気に入っている様でね。あの家は金遣いが荒い事で有名だが、それでも今の地位を維持出来ているという事は、それだけの財産があるという事だろう。お前も、欲しい物は何でも与えられる生活が出来る筈だ」
「……私、そんな生活を望んでいる訳じゃないわ」
反射的に、漏らしてしまった言葉。ハッと我に返り、慌てて手紙から顔を上げ父の顔に視線を合わせる。
「…ほう?じゃあ、どんな生活を望んでいるんだ」
父は相変わらず無表情だ。だが、私の発言で目の色が変わった事ははっきりと分かった。
「言ってみろ」
バン、と強くテーブルに置かれたワイングラス。その拍子にグラスの中のワインが波打ち、白いテーブルクロスに飛び散った。
「…あ…の、…なんでもないの、ただ、その、あまり我儘を言ってしまってはキース様を困らせると思って、その…エインズワース家の人間として、慎ましく暮らすべきだと思っただけよ」
口から零れた、出まかせの言葉。だが、我ながら上手い言い訳が出来たのではないかと自負する。
私の言葉を聞いた父が満足げな顔で微笑み、頷いた。
「あぁ、そうか。嬉しいよ、やはりお前は、私の自慢の娘だ」
父の言葉に、ずきりと胸が痛む。
「心配する事は無い。キース君はとてもいい青年だよ。お前には勿体ない程の…ね」
「ええ…そうね」
彼――キース・スタインフェルドと顔を合わせたのは過去に1度だけだった筈だが、それだけで私の事を気に入ったりなどするだろうか。端正な顔立ちをした彼は女性からの人気も高く、社交界では女性に囲まれていた記憶がある。
本能的に感じる不自然さ。だがそれを追求する事は出来る筈も無く、私は父の言葉に微笑みを返す事しか出来なかった。
「スタインフェルド家とは交流を深めておきたかったんだ。キース君がお前を気に入ってくれて良かったよ。彼はお前が18歳になったら正式に婚約したいと言っている。きっとお前の誕生日パーティーでも顔を合わせる事になるだろう。失礼の無いようにしなさい」
「…はい」
18歳。それは、この国を生きる人間が“成人”と見なされる年齢。
私の18歳の誕生日まで、あと2ヵ月。残された時間は短い。
きっと私は何も出来ないままこの2ヵ月を過ごし、スタインフェルド家に嫁ぐ事になるのだろう。
もう、感情なんて物を持ってはいけない。そんな思考が少しずつ自身の中に広がっていくのを感じながら、手紙を閉じ、封筒の中に戻した。
――“貴方は、幸せ”。
いつかの母が言った言葉。母も、エインズワース家に嫁いだ時今の私と同じ気持ちだったのだろうか。
母は今も顔色1つ変えず、話に関与するつもりも無い様で黙々と食事を口に運んでいる。私の婚約には、興味を一切示していない様だ。
――私は、幸せ。
心の中で、そう唱えてみる。だが、それをすればする程、心が石化していく様に重くなっていく。
「エル、どうしたんだ。食べないのかい?」
父の声。それが、やけに遠くで聞こえた様な気がした。
自分が自分でなくなってしまった様で、酷く気分が悪い。だが、その気分の悪ささえも、段々と私では無い人間の物の様に感じてくる。
「少し、婚約の話に驚いただけよ。大丈夫」
父に、再び笑顔を見せる。
「ただ、ごめんなさい。今日は先に失礼するわ」
皿には料理が残ったまま。この後、父が料理人を叱責するかどうかは私には分からない。
だが今の父は婚約の話で頭がいっぱいの様で、私が席を立っても咎める様な事はしなかった。
「キース君に合う日の為にも、今から十分に休息を取っておくといい。睡眠と休息が、女性の美を保つ秘訣だと良く言われているだろう。お前も、今は自分の容姿を磨く事を最優先に考えなさい。――キース君の為に」
父の声を背で聞きながら、晩餐室の扉に手を掛ける。
私は今から何処へ戻るというのだろう。
寝室に戻り、少し早いが寝間着に着替え、ベッドに潜り込む。きっと、今晩も眠りにつくことは出来ない。だが、どう足掻いても陽は昇り、日付は過ぎていく。
私に、戻れる場所などない。私に、休息をとれる場所は無い。
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