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VIII 深まる謎
VIII Deepening mystery (8 深まる謎)
カーテンが全て閉め切られた薄暗い寝室。
今は、何時頃だろうか。昨晩から微睡んでは目覚めてを繰り返している為、体内時計が狂い時間感覚が麻痺してしまっている。
強制的に肺から吐き出される咳に喉を傷めながら、ゆっくりと身体を起こした。その拍子に、ぽとり、と膝の上に湿ったタオルが落ちる。使用人の誰かが、定期的に替えに来てくれているのだろう。それはまだひんやりとしていて、触れていると心地が良かった。
ベッドから降り、僅かに捲れたグリーンのベルベットカーテンの隙間から外を覗く。
分厚い雲が空を覆い尽くし、街には激しい雨が降り注いでいる。ロンドンの天気の悪さは相変わらずだ。
それよりも、今の時刻が知りたい。カーテンを大きく開き、壁時計が設置されている方へと視線を投げた。
「…あら…?」
ずっと位置が変えられる事無く設置されていた壁時計が、何故だかどこにも見当たらない。
誰かが時計を外してしまったのだろうか。
考えられる事と言えば、この部屋の時計が狂ってしまい、修理をする為に誰かが持ち出した事くらいだが、この屋敷には時計が山程ある。何処か別の部屋から新しい時計を持ってきて設置するという事も出来た筈だ。
現時刻を知る事が出来ない不快感は凄まじい。それは不快感を超えて、不安を抱く程だ。だが、纏わりつく鬱陶しい頭痛と倦怠感に、寝室を出て時刻を確認しに行く気にはどうしてもなれなかった。
大きな溜息を吐き、再びベッドに潜り込む。
私は幼少期から、過度にストレスを感じた際必ず体調を崩す。決して微熱とは言えない体温に、風邪によく似た症状。ストレスが引き金になった心因性の体調不良だったとしても、やはり発熱はつらいものだ。
こうしている間にも、時間は過ぎていく。今の様に不安な期間を過ごす位なら、いっその事今すぐにでも正式に婚約し、婚姻までしてしまいたい。
そうすれば、私の不安はこれ以上大きくなる事は無く、余計な事を考える事も無くなるというのに。
頭の片隅に残って消えない、約3週間前の、晩の事。
メアリーから「共に逃げよう」と言われ、それを拒絶した事を、心の何処かで後悔していた。
あのまま彼女と屋敷を出る選択をしていれば、彼女自身も救われる未来があったのかもしれない。
スタインフェルド家の新居に、メアリーやモーリスを連れていきたいと父に交渉しても、父がその要求に応じてくれない事はなんとなく予測できていた。彼女としては、この屋敷に1人になるよりも、私と何処か遠い場所へ逃げてしまった方が幸せだと思ったのかもしれない。
ロンドンを離れ、何処か遠くの街でメアリーと暮らしていく事をぼんやりと想像してみる。
知らない街並みに、知らない土地。そこで新しく、2人で慎ましく暮らす。上手くいかない事も多いだろうが、彼女と2人なら、それはそれで幸せだと感じるのでは無いかと思えた。
だが、決死の思いで伝えてくれた彼女の言葉を、彼女の気持ちを、拒絶した私が今更こんな事を思うだなんて、筋違いも甚だしい。酷い後悔と罪悪感、自己嫌悪に襲われ、枕に顔を押し付けた。
コンコン、と部屋に響いた、控えめなノックの音。使用人の誰かだろうと、枯れた声で返事をする。
「お加減は如何でしょうか」
ゆっくりと開いた扉の音と共に聞こえたのは、馴染み深い声。それは鈴を転がした様に美しく、耳に心地よく響く声だ。だが、今だけはその声を聞きたくなかった。
枕から顔を上げ、扉の方へと視線を向ける。
「…メアリー」
私に微笑みを向ける彼女に、あの晩の面影は無い。今の彼女は、“使用人”のメアリーだ。
彼女とは、あの晩以降会話を交わしていなかった。普段なら暇さえあれば談笑をしていたのに、3週間も会話を交わさなかっただなんて、今までの私達からすればとても信じられない事だった。
「大分、良くなったわ。ありがとう」
当たり触りの無い返答をし、彼女から目を反らす。
また再び、彼女との間に出てきてしまった壁。その壁を作っているのは彼女の方か、それとも私の方か。
「――キース様が、お見えになりました」
変わらない声音で伝えられた言葉に、ドキリと鼓動が跳ねる。
「……キース様が?どうして…?」
「お嬢様がお風邪を召されたと聞き、お見舞いにだそうで」
「……そう」
息を1つ吐き、ベッドからゆっくり身体を起こす。
何故こんな時期に此処へ来たのかと疑問に思ったが、未来の妻が体調を崩したと聞いたら見舞いに来るのが常識というものなのであろう。
「では、ご挨拶に行かなければならないわね」
見舞いだと言うのに、何故私が重い身体を引き摺って挨拶に向かわねばならないのか。内心そう毒突きながら、ベッドの外側へ足を下す。
「あぁ、いえ。お嬢様はそのままで」
だが、メアリーが即座に私の行動を制した。
「キース様が、お嬢様のお身体に障ると仰って…。今は旦那様と応接室にいらっしゃいます」
「…お父様はそれでいいと?」
幾ら彼が問題無いと言っても、父本人が納得しなければ意味が無い。
世間体を1番に気にする父の事だ。きっとキース様のご厚意など受け取らず、私が応接室へ顔を出す事を望むだろう。
「あぁ…それが…、旦那様もお嬢様は自室で休んでいて問題無いと…」
「…え?」
思わず、彼女の言葉を聞き返す。
「それは、お父様本人が?」
メアリー自身も父の対応には驚くものがあったのか、曖昧に頷きながら複雑な表情を浮かべた。
「他の皆は?モーリスも、今朝此処へ来たきり見かけないけど」
「恐らく、応接室付近…かと」
「付近…?」
彼女の顔が、ほんの一瞬強張る。だがすぐに優しい笑みに戻り、彼女が私に深々と頭を下げた。
なんの真似かと身構えるが、続けて彼女が発した言葉にその意味を理解する。
「エルお嬢様、キース・スタインフェルド様とのご婚約おめでとうございます」
洗練された無駄のない動き。使用人の鏡の様だ。そんな事を呑気に思いながら、彼女の姿を眺める。
正直、彼女の発言に然程衝撃は無かった。婚約が早まる事なんて、よくある話だ。珍しい事では無い。
――あぁ、婚約が正式に決まってしまったのか。
今思う事は、ただそれだけだった。
「ありがとう、メアリー」
彼女に微笑みかけ、ベッドの外に下ろしていた足を再び布団の中へと入れ込む。
令嬢の婚約など、使用人が知る必要の無い事だと皆には知らされないと思っていたが、彼女の口ぶりからするとどうやらそうでは無かったらしい。こうして使用人にきちんと知らされるなら、あの晩メアリーに、自身の口から伝える必要は無かったのではないかと思えてくる。
「わざわざ、それだけを言いに?」
視線を逸らしたまま、私のベッドの隣に立つメアリーに問いかける。
もし本当にそれだけを言いに来たのなら、彼女も相当タチが悪い。もしやあの晩拒絶した事を、根に持っていたりするのだろうか。
「あぁ、私が此処に来た理由は――」
メアリーが徐に、エプロンのポケットから何かを取り出した。それは掌2つ分ほどの大きさの額縁。
「お嬢様は約1ヶ月後、成人をお迎えになります。更にはご婚約が決まった事で、今以上にお忙しくなると思いまして、少し早いですが」
彼女がその額縁の表を伏せた状態で、私の方へと怖ず怖ずと差し出した。
「18歳のお誕生日、おめでとうございます」
私に向けられたのは、先程よりも優しい微笑み。
どうやら、彼女との間に出来た壁も、彼女が根に持っているのかもしれないという憶測も、全て私の勘違いだった様だ。安堵感から、自然と表情が緩む。
彼女から額縁を受け取り、ゆっくりと表に返した。
「ご迷惑は承知の上ですが、私からのささやかな贈り物でございます」
額縁に入れられたのは、決して質の良くないオフホワイトの紙。だが、その紙にはお金に換えられない程の美しい絵が描かれていた。
品種の違う、様々な薔薇の中に佇む穏やかな表情を浮かべた女性。ダークブラウンのコンテ1色で描かれた物だが、その美しい作画から不思議と色付いて見えてくる。
そしてそこに描かれた女性。それは、紛れも無く――
「――私?」
絵から目を離さずに問うと、メアリーが「庭園にいらっしゃる時のお嬢様が大変お美しかったので」と消え入りそうな声で言った。
自身の絵を描いて貰った事は、これが初めてでは無い。昔父が名の知れた画家を呼び、私の絵を描かせていた事があった。やはり名の知れた画家だというだけあり、見栄えは最高の物で、当時の父は大層喜んでいた事を覚えている。
だが私は、そんな画家が描いた絵よりも、彼女が描いたこの絵の方がよほど美しく、魅力的に見えた。
「ありがとう、嬉しいわ」
絵を見つめたまま、想いのままにその言葉を口にする。たった一度でも、この絵から目を離してしまうのが惜しい位だ。そして、この感情を上手く言葉に出来ない事も悔やまれる。
「大切にするわね」
漸く絵から視線を外し、顔を上げメアリーに微笑みかける。する彼女が、僅かに安堵の表情を見せた。
彼女が絵を描く事を趣味にしているのは昔から知っていた。だが、今まで彼女は頑なにその絵を見せてくれる事は無かった。彼女はきっと、自分の描く絵に自信が無かったのだろう。
彼女のその表情が見れた事に、此方も釣られて安堵する。
「では、私はこれで。あまり長居してしまうと、奥様に怪しまれてしまいますので」
「ええ、ありがとう」
メアリーが寝室を出て行ったのを見送り、再び手元の絵に視線を落とす。私に贈るなんて勿体ないと思ってしまう程、美しい絵だ。
もっと早く彼女の才能に気付いていれば、どうにかして彼女に良い画材を与える事が出来たというのに。これを趣味に留まらせてしまうのは非常に惜しい。彼女が自由に絵を学べる環境があれば、きっとかつて私の絵を描いた画家の様に才能を伸ばせるに違いない。
ふと、当時その画家に描いて貰った私の絵はどんなものだったかと疑問が浮かんだ。もう随分と昔の事だ。どれだけ記憶を巡らせても、その絵を思い出す事は出来ない。
確か、その絵は父の仕事部屋に飾られていた筈。今、父は応接室でキース様の相手をしている為暫く出てくる事は無いだろう。今なら、こっそりと仕事部屋に入ってその絵を見てくる事は可能だ。
メアリーから贈られた絵をナイトテーブルに立て、そっと音を立てずにベッドから降りる。
寝間着のまま屋敷内を動き回るのは気が引けるが、仕事部屋に絵を見に行くだけだ。少しだけなら問題無いだろう。シフォン生地の柔らかいガウンを羽織り、寝室の扉を開く。
扉から頭だけを外に出し、左右を見渡し人が居ない事を確認してから廊下へ出た。
父の仕事部屋は、確か私の寝室から然程離れて居なかった筈だ。普段以上に静かな屋敷の中をゆっくりと歩きながら、目的地を目指す。
「――!」
ふと耳に衝いた、人の話し声。咄嗟に壁に背を付け、曲がり角の先に視線を向ける。
話していたのはこの家の使用人。約1年前に来たばかりの、まだ比較的新しい2人だ。
好奇心か、悪戯心か。息を潜め、2人の会話に耳を傾ける。
「――キース様、容姿も美しくて、紳士的で素敵な人ね。先程廊下ですれ違ったのだけど、丁寧に会釈してくださったの。私達使用人にも優しいなんて、貴族様の中にも心優しい方っていらっしゃるのね…!」
「――ちょっと、それは聞き捨てならないわね。エインズワース家のご主人様だって、とても心優しい方だと思うけど?」
「――えぇ?旦那様の事?」
「――違うわよ、エルお嬢様の事!令嬢なんて、どこの家も我儘で傲慢で、使用人をゴミの様に扱う奴らばっかり。前に勤めていた家の令嬢なんて特に酷くって、私が不注意で彼女のドレスを汚してしまった時なんて『死んで償いなさい』と言われたのよ!ほんと、シンデレラにでもなった気分だったわ」
「――確かに、うちのお嬢様は貴族様だとは思えない程心優しい方よね。彼女と話していると、身分を忘れてしまう程落ち着くの。まるで聖女様みたい」
「――そんな大袈裟な。でも、気持ちはわかるわ。エルお嬢様の事だけは、心からお慕い出来るのよね。だから、キース様との正式なご婚約も心から祝福出来るわ。彼女には、幸せになってもらいたいもの」
心がむずむずするような、温かみのある言葉に思わず笑みが漏れる。だが、これは全て盗み聞きだという事に気付き、一気にその嬉しさも罪悪感に塗りつぶされた。
この角を曲がらなくとも、父の仕事部屋には行けた筈だ。少々遠回りになってしまうが、別の道を使おう。
元来た道を戻ろうと、踵を返す。
「――そういえば私、キース様の良くない噂を聞いてしまって」
使用人の言葉に、ぴたりと足が止まる。私を聖女と例えた使用人の声だ。これ以上聞くべきでは無いと本能的に思いながらも、元居た場所にこっそりと戻る。
「――良くない噂?そんなもの、貴族様なら誰だってあるんじゃなぁい?」
「――うぅん、私もその類の物だと思うのだけど…。少しでもエルお嬢様の身に危険があるかもしれないと思うと、少し心配で…」
「――お嬢様の身に?どういう事?」
「――私も、よく知っている訳では無いの。又聞きだから、多分本当の話では無いと思うけど…」
「――もったいぶってないで、早く話なさいよ」
早鐘を打つ心臓に、酷い震え。心音が脳に煩く響き、このままでは彼女達に気付かれてしまいそうだ。
私の身に危険が?一体どんな?その噂はどこで聞いたの?信憑性はあるの?様々な疑問が浮かんでは消え、震えが更に酷くなる。
「――キース様ね…、特殊性癖があるみたいなの」
「――特殊性癖!?」
「――そう、それも……加虐、性愛……だとか」
「――それって……」
「――勿論、ただの噂だと思うの!実際お会いしたキース様、全然そんな事する様な人に見えなかったし!だけど…美しい娼婦ばかりを高値で雇っては、後遺症が残る程の酷い性暴力を振るっているって…噂が……。実際、そう話している娼婦の子達も多く居るのよ」
「――そんな…!もしそれが本当なら……お嬢様を婚約者に迎えた理由って……」
彼女達の会話を最後まで聞き終わる前に、逃げる様に来た道を引き返した。
やはり、聞くべきでは無かった。あの時、足を止めなければよかった。
様々な想いが頭痛を伴い頭の中を回る。
きっと今の私は、酷く恐怖を感じているのだろう。だが、それから逃げる事が出来ないのも理解している。
自身の心にこびりついた諦観は拭えない。
「……」
息も絶え絶え、足を止めた先は父の仕事部屋。寝室に戻ろうとしていたつもりが、色々と考え事をしていた所為か此処へ辿り着いてしまった。
正直、先程の使用人達の会話が頭を埋め尽くし絵画どころでは無いが、せっかく此処まで来たのならと、息をゆっくりと整えながら部屋のドアノブに手を掛ける。
幸い、仕事部屋に鍵は掛かっていなかった。すんなりと開いた扉の先から、僅かに甘いムスクの香りが漂ってくる。父が愛用している香水の香りだ。
ゆっくりと部屋に足を踏み入れ、後ろ手に扉を閉める。
父の仕事部屋は、私の寝室より一回り程大きい。
本がびっしりと埋め尽くされた、天井まで届く無数の棚。一目で高価だと分かる、ダマスク柄の壁紙。そして、赤いベルベットのカーテン。
デスクの上は書類や手紙で少々散らかっていて、デスク付近に置かれた簡易的なベッドは乱れている。確かこの部屋だけは、使用人が入る事を許可していなかった筈だ。重要な書類や、触れて欲しくない物が多くあるから、だとか。
徒に本棚にかかった埃を指でなぞり、汚れた指先に息を吹きかけ払う。
「――あ」
目に付いた、イーゼルに立てられたカンバス。美しい絵が描かれたそれに、思わず声を漏らす。
恐らくあれが、私の目当ての物だ。足早に近づき、腰を屈めてカンバスを覗く。
「……?」
カンバスに描かれているのは、まだ幼い少女。ふわふわとカールしたアッシュゴールドの髪に、口元の左側に描かれた小さなほくろ。そして少女が身に纏っている服は、私が幼少期に気に入っていた、グリーンのベルベット素材のワンピースだ。それは限りなく、私に近い少女。
だが、その少女は私の様で、私では無い。
イエローブラウン。それが私の瞳の色だ。昔、メアリーが私の瞳を宝石のシトリンの様だと言ってくれた事があり、自分でも特別気に入っている。
なのに何故だか、このカンバスに描かれた少女はエメラルドグリーンの瞳をしていた。
「……なんで…」
思わず、そのカンバスを眺めながら独り言を漏らす。
その時、突如部屋の外から足音が聞こえた。その足音は有ろう事かこの部屋の前で止まり、ドアノブが回される。
咄嗟に隠れた先は、父のデスクの裏。入ってきた人物が父だったとしたら直ぐにバレてしまうが、今隠れられる場所といったら此処以外に無かった。息を潜め、デスク裏からそっと部屋に入ってきた人物の方に視線を向ける。
「……!」
入ってきた人物は、私の良く知った人物だった。その人物は迷うこと無くベッドの方へと足を進め、雑な手付きでブランケットを捲る。
そしてベッドの中から“ピアス”を手に取り、1度も振り返る事無く早々と部屋を出て行ってしまった。
再び訪れた静寂に、深く息を吐く。そしてデスクに手を突きながらゆっくりと立ち上がった。
「――メアリー…?」
扉を見つめながら、“その人物”の名を呟く。
何故彼女が、父の仕事部屋に。此処は確かに、使用人の立ち入りを禁止されている筈だ。
――彼女は、いつも小さなサファイアが付いたピアスを右耳にしていた。実母と片耳ずつ持っている大切なピアスだそうで、その話を私にしてくれた時はとても嬉しそうにしていた事を覚えている。
そして彼女が父のベッドの中から取ったのは、彼女が耳にしていた筈のサファイアのピアス。
先程、彼女が私の部屋に来た時にはそのピアスをしていなかった。彼女がその話を聞かせてくれた時、寝坊してしまった日などは付けるのを忘れてしまうと言っていた為、てっきり今日も彼女は寝坊をしてしまったのだと思っていた。
何故、彼女のピアスが父のベッドの中にあったのか。
思い浮かんでしまった最悪の思想は止まる事無く、扉を見つめたまま、暫くその場から動く事が出来なかった。
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