12 / 215
VII 鳥籠の外-I
夜が更け、街の灯りが1つ、また1つと消えていく。
正確な時間は分からないものの、屋敷の外に出て彼此1時間程が経過しただろう。
馬車で外に出た事はあったが、自分の足で街を歩くのはこれが初めてだ。街の事は全くと言っていい程分からず、この1時間歩き続けた事で屋敷からどの程度離れたかは一切の見当が付かない。
そんな私が今できるのは、目の前の男――セドリック・アンドールと名乗った彼に黙って付いて行く事だけだった。
本来なら、屋敷を離れ、得体の知れない男に付いて行くだなんて有るまじき行為だろう。小さな子供ですら、知らない人に付いて行ってはいけないという知識位ある筈だ。
だが今の私がしている事は、“其れ”その物である。ふと冷静になった時に、自分はとんでもない事をしでかしてしまったのでは無いかと頭を抱えたくなる衝動に駆られた。
私の誕生日パーティーは、そろそろ終盤に差し掛かる頃だろう。帰路に付く招待客も出てくる時間帯だ。
私が居なくなった事に、もう誰かしら気付いているだろうか。それとも、誰も気付かないまま終わりを迎えるのだろうか。招待客への挨拶は全て終えているものの、それでも何かやり残した事があったのではないかと一抹の不安を拭えずにいた。
――もう、屋敷に戻る事は無いというのに。
細く長い路地裏を抜け、辿り着いたのは広い1本道。
閉鎖的空間から解放され、小さく息を吐く。
「――足、痛くないか」
ずっと私の前を歩いていた彼が急に足を止め、ぎこちない動きで振り返った。自身を見つめるその瞳には心配の色が宿っており、まだ何か他にも言いたげな顔をしている。
短時間だが、彼を見ていて分かった事が幾つかあった。どうやら、彼は酷い口下手な様で、表情を表に出すタイプでは無いらしい。
今もその表情は変わらないが、それでも私を気遣ってくれている事が犇々と伝わってきて、鼓動が高鳴る程の嬉しさを感じた。
もう“愛想笑い”では無い笑みを彼に向け、小さく頷く。
――だが実際、足が痛くないと言えば嘘になる。
爪先が圧迫される痛みから始まり、招待客への挨拶をしている時点で、もう痛みは限界に達していた。
本来であれば、もう足の痛みで動けない筈だ。しかし不思議な事に、今迄逃げる事に夢中で一切足の痛みを感じていなかった。
そして今、彼に問われた事で突如思い出したかの様に足が痛みを訴え始める。
だが現在、最も重要視しなくてはならないのは足では無い。身体をきつく締めたコルセットの方だ。
今の世の中では、“細いウェストは女性のステータス”とまで言われる程ウェストの細さが重要視されている為、社交パーティー等の人目に触れる際はこれでもかという程コルセットをきつく締めあげられていた。
今日のパーティーは私が主役という事もあってか、普段以上にきつく締められている気がする。自身のウェストに触れてみるが、最早人間の正常なウェストだとは思えない細さになっていた。
息を吸う度に、ミシミシと骨が軋む音が聞こえてきそうな程だ。一体、今の私の内臓はどんな形をしているのだろう。想像するだけでゾッとする。
十中八九健康被害が生じるであろう文化だ。誰かが早く変えてくれる事を願う。
早急にコルセットを外すべきだと本能的に感じるが、彼に付いて行った先で十分な着替えがあるとも思えない。
――さて、どうしたものか。
元々食事の管理やレッスンなどで細い体型を維持していた為、特別コルセットで身体を締めなくてもこのドレスを再び着用する事は出来るだろう。それに、ドレス自体ウェストに余裕があるデザインの為、然程苦労もしなさそうだ。
だがその為には、“着替えをするスペース”という物が必要になる。こうして出逢って数時間の彼と屋敷を抜け出してしまった時点でこれ以上のことは無いが、やはり初対面の男性の前で肌を晒す行為は女性として躊躇われるものがあった。
そんな中、その事柄を何処か他人事の様に思ってしまっている自分が居た。
未だ屋敷を出た実感が無いのか、それとも“それ自体”が自分の中で然程重要な問題では無いのか。
頭の中では様々な問題がぐるぐると廻り続けているというのに、その問題1つ1つに頭を使う事が出来ない。まるで、感情と思考が剥離してしまった様だ。決して軽々しく物事が考えられる状況では無いというのに、「まぁどうにかなるだろう」なんて全ての状況を楽観的に考えてしまう。
本来ならば、今の状況はしっかりと現実として受け入れなくてはならない。
だが、恐怖の中を生きてきた所為で、急に現れた安堵感に自分自身が追い付いていないというのも事実だった。
隣の彼に気付かれない様こっそりと溜息を吐き、俯いていた顔を上げる。
――ふと、遠目に見えたふらふらと動く黒い物体。
暗闇の中目を凝らしてみると、それはどうやら大きなローブにすっぽりと身体を包んだ“人”の様だった。フードが目深に被られている為顔は見えず、その足取りも覚束なく危なっかしい。まるで絵に描いた様な“不審な人物”だ。
昔父から、「街には危険な人間が沢山居る」と聞いた事があった。それを理由にあまり屋敷から出して貰えなかったのだが、もしや目の前の人物が父の言っていた“危険な人物”というものなのだろうか。
胸の中に滲んで広がっていく恐怖心に、セドリックとの距離を詰める。
「前、見てないと危ないぞ」
彼はその人物を然程気に留めていないのか、声に変化は感じられない。
やはり街には危険な人物が多く、目の前の人物も物珍しい物では無いのだろうか。それとも、彼が単に周囲に関心が無いだけなのか。
彼を見るに後者の様な気もするが、それでも私にとってはこの目で初めて見る得体の知れない人物であり、気に留めない方が難しい話だった。その人物を凝視しながら、彼と共に歩を進める。
その人物との距離が縮み、あと数歩で擦れ違うという距離。突如、強い突風が私達とその人物の間を吹き抜けた。
私のドレスの裾が大きく舞うのとほぼ同時に、その人物の深く被ったフードが外れる。
――緩やかにカールした赤毛に、宝石を連想するローズピンクの瞳。
そこに現れたのは、誰もが目を奪われる程の美しい女性だった。その大人びた顔つきから、自身やセドリックよりも年上の女性だという事が分かるが、張りのある白い肌が老いを一切感じさせず、まるで幼い少女の様にも見えてしまう。
だが、私が感じたのはそれだけでは無かった。
見知らぬ人物の筈なのに、何処かで見た事のあるような既視感。これ程の美貌の持ち主であれば一度見れば忘れられないような気もするが、抱いたのは既視感のみで遡ったどの記憶とも一致しない。
それよりも今は、その既視感よりも心配すべき事がある。それは、彼女のそのふらふらとした足取りと、まるで化粧でもしているかの様にも見える程、真っ赤に泣き腫らした目元だ。表情は何処か虚ろで、意識がはっきりとしているのかすら危うい。このまま馬車の1台でも通れば、正面衝突してしてしまいそうだ。
その女性を凝視しながら、声を掛けるべきかと頭を悩ませる。
だが正直、今の私は人様の心配など出来る状況には無かった。それに、声を掛けた所で彼女を救ってあげられる訳でも無く、ただセドリックに迷惑を掛けてしまうだけになる。
彼女には申し訳無いが、このまま見なかった事にするしか無いだろう。良心が痛みながらも、焦点の合っていない様にも見えるその瞳を見据える。
「――!」
彼女の濡れた瞳が、突如此方に向けられた。いや、正確に言えばセドリックの方、だろうか。
彼を視界に捉えたその女性の瞳が、一瞬驚いた様に見開かれる。
彼を見て、女性は何を思ったのか。先程のぼんやりとした表情は何処へやら、彼女は慌てた様子でフードを被りなおし、逃げる様に道の反対側へと駆けて行った。
今のは、一体何だったのだろう。起こった事が理解できず、去っていく彼女の背をただただ眺める。
そんな中でも、やはり自身の中に色濃く残るのは彼女の美貌と既視感。
「……綺麗な人ね」
意識的か無意識的か、自分でも分らぬままそれを口にする。すると僅かに、セドリックが反応したのが分かった。
――彼もあの女性を見て、私と同じ事を思ったのだろうか。
あれだけ美しい人であれば、誰だって目を惹かれるのは当然だ。同性の私ですら、惹かれた程なのだから。
だが何故だか、それを考えると不快感の様な妙な感情が沸々と沸き上がってくるのを感じた。怒りにも似た、不安にも似た、妙な感情。
人が人をどう思おうが、それはその人の自由であり、それを他者がとやかく言う筋合いは無い。そう、分かっている筈なのに、彼の瞳に誰の事も映したくないと、そんな独占欲が頭を回る。
まるで、幼い子供がお気に入りのおもちゃを他人に取られない様に、宝箱の奥底に仕舞い込む様な。誰かに盗られるくらいなら、とそれを自らの手で壊してしまう様な。そんな、稚拙な感情だ。
今まで、誰かにこんな風に思った事は無かった。メアリーが愛らしい反応を見せてくれれば、それを他の使用人達にも見せたいと思い、モーリスが私に優しく接してくれれば、他の人にも同じように優しい言葉を掛けて欲しいと思った。決して、何かを独占したいと思った事は無かったのに。
まだ出逢ったばかりの男性に独占欲を抱いてしまうだなんて、これでは本当に小さな子供の様では無いか。どうにかその感情を振り払おうと、先程あの女性に感じた“既視感”に考えをシフトする。
正確な時間は分からないものの、屋敷の外に出て彼此1時間程が経過しただろう。
馬車で外に出た事はあったが、自分の足で街を歩くのはこれが初めてだ。街の事は全くと言っていい程分からず、この1時間歩き続けた事で屋敷からどの程度離れたかは一切の見当が付かない。
そんな私が今できるのは、目の前の男――セドリック・アンドールと名乗った彼に黙って付いて行く事だけだった。
本来なら、屋敷を離れ、得体の知れない男に付いて行くだなんて有るまじき行為だろう。小さな子供ですら、知らない人に付いて行ってはいけないという知識位ある筈だ。
だが今の私がしている事は、“其れ”その物である。ふと冷静になった時に、自分はとんでもない事をしでかしてしまったのでは無いかと頭を抱えたくなる衝動に駆られた。
私の誕生日パーティーは、そろそろ終盤に差し掛かる頃だろう。帰路に付く招待客も出てくる時間帯だ。
私が居なくなった事に、もう誰かしら気付いているだろうか。それとも、誰も気付かないまま終わりを迎えるのだろうか。招待客への挨拶は全て終えているものの、それでも何かやり残した事があったのではないかと一抹の不安を拭えずにいた。
――もう、屋敷に戻る事は無いというのに。
細く長い路地裏を抜け、辿り着いたのは広い1本道。
閉鎖的空間から解放され、小さく息を吐く。
「――足、痛くないか」
ずっと私の前を歩いていた彼が急に足を止め、ぎこちない動きで振り返った。自身を見つめるその瞳には心配の色が宿っており、まだ何か他にも言いたげな顔をしている。
短時間だが、彼を見ていて分かった事が幾つかあった。どうやら、彼は酷い口下手な様で、表情を表に出すタイプでは無いらしい。
今もその表情は変わらないが、それでも私を気遣ってくれている事が犇々と伝わってきて、鼓動が高鳴る程の嬉しさを感じた。
もう“愛想笑い”では無い笑みを彼に向け、小さく頷く。
――だが実際、足が痛くないと言えば嘘になる。
爪先が圧迫される痛みから始まり、招待客への挨拶をしている時点で、もう痛みは限界に達していた。
本来であれば、もう足の痛みで動けない筈だ。しかし不思議な事に、今迄逃げる事に夢中で一切足の痛みを感じていなかった。
そして今、彼に問われた事で突如思い出したかの様に足が痛みを訴え始める。
だが現在、最も重要視しなくてはならないのは足では無い。身体をきつく締めたコルセットの方だ。
今の世の中では、“細いウェストは女性のステータス”とまで言われる程ウェストの細さが重要視されている為、社交パーティー等の人目に触れる際はこれでもかという程コルセットをきつく締めあげられていた。
今日のパーティーは私が主役という事もあってか、普段以上にきつく締められている気がする。自身のウェストに触れてみるが、最早人間の正常なウェストだとは思えない細さになっていた。
息を吸う度に、ミシミシと骨が軋む音が聞こえてきそうな程だ。一体、今の私の内臓はどんな形をしているのだろう。想像するだけでゾッとする。
十中八九健康被害が生じるであろう文化だ。誰かが早く変えてくれる事を願う。
早急にコルセットを外すべきだと本能的に感じるが、彼に付いて行った先で十分な着替えがあるとも思えない。
――さて、どうしたものか。
元々食事の管理やレッスンなどで細い体型を維持していた為、特別コルセットで身体を締めなくてもこのドレスを再び着用する事は出来るだろう。それに、ドレス自体ウェストに余裕があるデザインの為、然程苦労もしなさそうだ。
だがその為には、“着替えをするスペース”という物が必要になる。こうして出逢って数時間の彼と屋敷を抜け出してしまった時点でこれ以上のことは無いが、やはり初対面の男性の前で肌を晒す行為は女性として躊躇われるものがあった。
そんな中、その事柄を何処か他人事の様に思ってしまっている自分が居た。
未だ屋敷を出た実感が無いのか、それとも“それ自体”が自分の中で然程重要な問題では無いのか。
頭の中では様々な問題がぐるぐると廻り続けているというのに、その問題1つ1つに頭を使う事が出来ない。まるで、感情と思考が剥離してしまった様だ。決して軽々しく物事が考えられる状況では無いというのに、「まぁどうにかなるだろう」なんて全ての状況を楽観的に考えてしまう。
本来ならば、今の状況はしっかりと現実として受け入れなくてはならない。
だが、恐怖の中を生きてきた所為で、急に現れた安堵感に自分自身が追い付いていないというのも事実だった。
隣の彼に気付かれない様こっそりと溜息を吐き、俯いていた顔を上げる。
――ふと、遠目に見えたふらふらと動く黒い物体。
暗闇の中目を凝らしてみると、それはどうやら大きなローブにすっぽりと身体を包んだ“人”の様だった。フードが目深に被られている為顔は見えず、その足取りも覚束なく危なっかしい。まるで絵に描いた様な“不審な人物”だ。
昔父から、「街には危険な人間が沢山居る」と聞いた事があった。それを理由にあまり屋敷から出して貰えなかったのだが、もしや目の前の人物が父の言っていた“危険な人物”というものなのだろうか。
胸の中に滲んで広がっていく恐怖心に、セドリックとの距離を詰める。
「前、見てないと危ないぞ」
彼はその人物を然程気に留めていないのか、声に変化は感じられない。
やはり街には危険な人物が多く、目の前の人物も物珍しい物では無いのだろうか。それとも、彼が単に周囲に関心が無いだけなのか。
彼を見るに後者の様な気もするが、それでも私にとってはこの目で初めて見る得体の知れない人物であり、気に留めない方が難しい話だった。その人物を凝視しながら、彼と共に歩を進める。
その人物との距離が縮み、あと数歩で擦れ違うという距離。突如、強い突風が私達とその人物の間を吹き抜けた。
私のドレスの裾が大きく舞うのとほぼ同時に、その人物の深く被ったフードが外れる。
――緩やかにカールした赤毛に、宝石を連想するローズピンクの瞳。
そこに現れたのは、誰もが目を奪われる程の美しい女性だった。その大人びた顔つきから、自身やセドリックよりも年上の女性だという事が分かるが、張りのある白い肌が老いを一切感じさせず、まるで幼い少女の様にも見えてしまう。
だが、私が感じたのはそれだけでは無かった。
見知らぬ人物の筈なのに、何処かで見た事のあるような既視感。これ程の美貌の持ち主であれば一度見れば忘れられないような気もするが、抱いたのは既視感のみで遡ったどの記憶とも一致しない。
それよりも今は、その既視感よりも心配すべき事がある。それは、彼女のそのふらふらとした足取りと、まるで化粧でもしているかの様にも見える程、真っ赤に泣き腫らした目元だ。表情は何処か虚ろで、意識がはっきりとしているのかすら危うい。このまま馬車の1台でも通れば、正面衝突してしてしまいそうだ。
その女性を凝視しながら、声を掛けるべきかと頭を悩ませる。
だが正直、今の私は人様の心配など出来る状況には無かった。それに、声を掛けた所で彼女を救ってあげられる訳でも無く、ただセドリックに迷惑を掛けてしまうだけになる。
彼女には申し訳無いが、このまま見なかった事にするしか無いだろう。良心が痛みながらも、焦点の合っていない様にも見えるその瞳を見据える。
「――!」
彼女の濡れた瞳が、突如此方に向けられた。いや、正確に言えばセドリックの方、だろうか。
彼を視界に捉えたその女性の瞳が、一瞬驚いた様に見開かれる。
彼を見て、女性は何を思ったのか。先程のぼんやりとした表情は何処へやら、彼女は慌てた様子でフードを被りなおし、逃げる様に道の反対側へと駆けて行った。
今のは、一体何だったのだろう。起こった事が理解できず、去っていく彼女の背をただただ眺める。
そんな中でも、やはり自身の中に色濃く残るのは彼女の美貌と既視感。
「……綺麗な人ね」
意識的か無意識的か、自分でも分らぬままそれを口にする。すると僅かに、セドリックが反応したのが分かった。
――彼もあの女性を見て、私と同じ事を思ったのだろうか。
あれだけ美しい人であれば、誰だって目を惹かれるのは当然だ。同性の私ですら、惹かれた程なのだから。
だが何故だか、それを考えると不快感の様な妙な感情が沸々と沸き上がってくるのを感じた。怒りにも似た、不安にも似た、妙な感情。
人が人をどう思おうが、それはその人の自由であり、それを他者がとやかく言う筋合いは無い。そう、分かっている筈なのに、彼の瞳に誰の事も映したくないと、そんな独占欲が頭を回る。
まるで、幼い子供がお気に入りのおもちゃを他人に取られない様に、宝箱の奥底に仕舞い込む様な。誰かに盗られるくらいなら、とそれを自らの手で壊してしまう様な。そんな、稚拙な感情だ。
今まで、誰かにこんな風に思った事は無かった。メアリーが愛らしい反応を見せてくれれば、それを他の使用人達にも見せたいと思い、モーリスが私に優しく接してくれれば、他の人にも同じように優しい言葉を掛けて欲しいと思った。決して、何かを独占したいと思った事は無かったのに。
まだ出逢ったばかりの男性に独占欲を抱いてしまうだなんて、これでは本当に小さな子供の様では無いか。どうにかその感情を振り払おうと、先程あの女性に感じた“既視感”に考えをシフトする。
あなたにおすすめの小説
絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。
孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。
その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。
そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。
同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。
春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。
昔から志穂が近くにいてくれるから……。
しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。
登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。
志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。
彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。
志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。
そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。
その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
冷酷公爵と呼ばれる彼は、幼なじみの前でだけ笑う
由香
恋愛
“冷酷”“無慈悲”“氷の貴公子”――そう恐れられる公爵アレクシスには、誰も知らない秘密がある。
それは、幼なじみのリリアーナの前でだけ、優しく笑うこと。
貴族社会の頂点に立つ彼と、身分の低い彼女。
決して交わらないはずの二人なのに、彼は彼女を守り、触れ、独占しようとする。
「俺が笑うのは、お前の前だけだ」
無自覚な彼女と、執着を隠しきれない彼。
やがてその歪な関係は周囲を巻き込み、彼の“冷酷”と呼ばれる理由、そして彼女への想いの深さが暴かれていく――
これは、氷のような男が、たった一人にだけ溺れる物語。
秘められた薫り
La Mistral
恋愛
エブリスタにて、トレンド#恋愛で最高位
55位を獲得した作品です。
「愛しているよ」という夫の言葉が、今の美咲には虚しい空気にしか聞こえない。
欠けていたのは、理性を焼き尽くすような衝動。
クライアントの慎吾と交わす視線。ビジネスという仮面の下で共有される、剥き出しの欲望。
指先が触れる。名前を呼ばれる。ただそれだけで、美咲の積み上げてきた「良き妻」としての世界は音を立てて崩れ去る。
完璧なアリバイ、塗り固めた嘘。
夫の隣で微笑みながら、心は別の男の指先を求めている。
一度知ってしまった濃厚な「薫り」は、もう彼女を元の場所へは戻してくれない。
守るべき家庭と、抗えない本能。
二つの世界の境界線で、美咲が選ぶ「最後の一線」とは――。
欲望の熱に浮かされた女の、美しくも残酷な堕落の記録。