DachuRa 1st story -最低で残酷な、ハッピーエンドを今-

白城 由紀菜

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XIV 訪問者-VII

「エルちゃんと、お洒落なバーとか行ったら楽しそうだなあ。私結構お酒は強い方なんだけど、エルちゃんは?」

「……お酒は、まだ得意では無くて」

「ざんねーん。でも、確かにお酒あんまり得意じゃなさそうなイメージはあったかも」

 ふふふ、と彼女が楽しそうに、嬉しそうに笑う。

「……2人の、お歳は?」

 紅茶を口に含み、緊張で乾いた口内を潤わせてから一言尋ねる。
 セドリックもマーシャも、20代半ば位だと予想しているが、彼女が私に言ったように、私の想像よりも若いなんて事があったりするだろうか。人の年齢とは分からない物だ。可能性だけで言うと大いに有り得る。

「2人……って事は私とセディ?あれ、セディからそういう話聞いてない?」

「……ええ、まだ此処へ来て3日しか経過していないし、彼も私もあまり自ら語る方では無いから……」

「そっかぁ。私とセディは21だよ。誕生日が4ヶ月違うから若干セディの方が上だけど、同い年!」

 思った通り、とでも言うべきか。2人は私の想像よりもだいぶ若い。
 決して2人が老けているという訳では無く、顔つきだけで見れば妥当な年齢ではあるだろう。だが2人はやけに落ち着いた、大人びた人達に見え、自身と3つしか歳が変わらないという事には驚いた。

 ――そういえば。
 仲の良かった使用人のメアリーも、彼らと同じだった。
 顔付きだけを見れば、私の1つ年上だと言う事に疑問は無い。だがメアリーはやけに大人びた思考と雰囲気を持ち、更には博識で、使用人の中でも特別物覚えも良かった。“あんな事”がありながらも、両親から比較的気に入られていた方だ。
 今、メアリーは屋敷でどう過ごしているだろうか。私が居なくとも、いつもと変わらぬ日々を送っているのだろうか。
 私が居なくなった事で、メアリーを含めた使用人が叱責されていないと良いのだけど。

「――ところでエルちゃんさ」

 変わらぬ口調で話始めたマーシャの声に、私の思考が断ち切られる。
 ティーカップに口を付けたまま彼女に視線を向けると、私を視線を交わらせた彼女が柔らかく微笑んだ。

「私達がどんな人物か、気になってるんでしょ」

「――!」

 私に歳を聞いた時や、酒の話をした時と、怖い程変わらない声音で突如投げ込まれた爆弾。口の中にゆっくりと含んでいた紅茶を、思わず全て吹き出してしまいそうになる。
 何とか口の中の紅茶を飲み込み、自身の動揺を悟られまいと表情を引き締めティーカップをソーサーに置いた。だがその際、想像していた以上に強くカップを置いてしまった様で、ソーサーとカップがぶつかり合いガチャンと大きな音を立ててしまった。

「ふふ、そんな動揺しなくてもいいよ。別に、相手の事が気になるのは悪い事じゃないし」

「動揺なんて、してないわ」

 心臓が早鐘を打つ。彼女は随分と鋭く、勘が働く人の様だ。
 彼女の、猫の様に縦長の瞳孔が私を射抜くように見つめる。――いや、蛇の様だと例える方がしっくり来るだろうか。
 獲物を狙う蛇の様な、優雅に尻尾を振る猫の様な、今の彼女はどちらともつかない様な異様さを放っている。

 確かに、2人がどんな人物か気になっていた。仕事の事も、階級の事も、2人の関係も。それを何処と無く訪ねようと思っていたのに、まさかこんなにも早く見抜かれてしまうとは。
 もう下手に言い訳した所で通用しないだろう。心を落ち着かせようと再び紅茶を口に含み、今度は音を立てないようそっとカップをソーサーに置いた。

「……貴女の言う通りよ。貴女達の事はとても、気になっていた。でも、自分の素性を探られるのは誰だって気分のいいものでは無いはずよ。だから、話したくない事は話さなくて良いと……私は思っていたのだけど」

 紅茶の水面を見つめながら、ポツリとそれを口にする。
 気遣わしい事をあげればキリがない。言ってしまえば、2人の仕事や関係以外にも、自身が纏ってるドレスの入手経路や、セドリックが何故私の誕生日パーティーに居たのかだってそうだ。
 だがそれを聞くという事は、同時に私の過去も話さなくてはいけなくなる。知られて困る様な事ではないが、出来ることならもう、家の事は思い出したくなかった。

 ――あんな残酷な事は、もう。

「――人、殺し」
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