DachuRa 1st story -最低で残酷な、ハッピーエンドを今-

白城 由紀菜

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XXII 止められない嫉妬心-I



 本格的な寒さが訪れる前の、8月末。ロンドンから離れた小さな街。
 緑豊かな丘の木の下で私は、柔らかな風を感じながらマーシャから借りた本を読んでいた。

 自身の隣には、木の幹を背凭れにして眠るセドリックの姿。
 彼との関係は相変わらず、ただの同居人のままだ。友人でも、家族でも、恋人でも無い、同居人。
 その関係に不満が無いと言えば嘘になるが、それでも今は特に心を乱すこと無く変わらぬ日々を送っている。

 今日は、週に一度の休日。仕事の予定が無く、セドリックが1日家に居てくれる日だ。
 普段の彼は、休日になると昼まで目を覚ます事は無く、更には1日をベッドの上で過ごす。日によっては、昼食も取らない位だ。
 そんな彼が、今日は珍しく早朝から目を覚ましていた。そして有ろう事か二度寝をする様子も無く、新聞を読みながら私と共に朝食をとってくれた。
 それに感化されてしまったのだろうか。新鮮な彼の姿につい、普段であればしないであろう提案を持ち掛けた。「冬になる前に、緑豊かな丘へ散歩に行きましょう」と。
 すると驚く程に快く、彼はその提案を2つ返事で承諾してくれた。

 その後、彼に連れられるままに乗合馬車に乗り、約2時間。流れる景色を眺めながら、この丘へと辿り着いた。
 心地よい風に、暖かな陽気。いつもより優しく感じた恋焦がれた相手との散歩は、私にとってとても幸せな物だった。

 此処に着いて約30分が経過した頃だろうか。昼の12時を告げる鐘の音が聞こえ、そろそろ昼食にしようという事でこの木の下に来た。
 昼食に選んだのは野菜をたっぷりと挟んだサンドイッチ。それを僅か数分で完食し、満腹を感じた頃合い。歩き疲れた事も相まってか、いつの間にかセドリックは木の幹を背凭れにして眠ってしまっていた。
 
 折角2人で遠出をしたというのに、いつもの様に眠ってしまってはつまらない。最初はそう思い寂しさを感じていたが、今日は私の我儘で沢山歩かせてしまったのだ。少し位構わないだろう。
 “念の為”と入れてきた本を鞄から取り出し、彼の隣でその本を開いた。

 そして、今に至る。

 彼の隣は、とても居心地が良い。
 恋とは苦しい物ばかりだと思っていたが、最近は決してそれだけでは無い事を学んだ。
 落ち着いて見てみれば、彼はとても私を大切にしてくれている事が分かる。それに、私をよく気に掛けてくれている様で、時々自発的に「何か変わった事は無いか」と、私の身の回りで起こった事を聞いてくれていた。

 だが、そんな中でもどうしても避けられない感情がある。
 それは――

「――嫉妬……」

 自身の膝の上に乗せられている本に、度々出てくる言葉。この本で、覚えた感情だ。
 今迄その言葉を、目にした事は何度もあった。だが、それがどの様な物なのかを深く考えた事は無かった。
 きっと自身の人生において、何かに“嫉妬”する事が無かったが故に、理解をする事が出来なかったのだろう。
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