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XXIV 想像もつかぬ未来-IV
彼を信じたい。だが、私を森に捨てる筈が無いとも言い切れない。
思い返してみれば、昨晩の彼は少し変だった。深刻そうな面持ちで何かを考え込んでいて、私が話し掛けても気付かないという事も何度かあった。
森に近づくにつれて、足が徐々に重くなる。それに合わせて、歩みを進める速度も落ちていく。
私は、あの童話の兄妹の様に賢くない。故に、森に捨てられた際生き延びる方法も、家に帰る方法も分からない。
考えている間にいつの間にか辿り着いてしまった森の入り口。森の名前らしき物が書かれた木札が樹木に打ち付けられているが、木札は腐敗し、その文字は滲んでしまっていて読むことが出来なかった。
外から見ていても、異様な空気を纏っているのが分かる。本当に、この森で間違いないのだろうか。
そう不安に思ってしまう程に森の中は暗く、奥に続く道も生い茂る草木で覆われてしまっていた。
ポケットから手紙を取り出し、地図に視線を落とす。
確かに、この森で間違いない。教会の位置は曖昧だが、この地図を見るに森の中心部にある様だ。
だがどう考えても、手入れの1つされていないこの森の中に、まともな教会があるとは思えない。あるとしても、長年人の入っていない廃れた建物位であろう。
溜息を漏らし、森の中へと足を踏み入れた。
奥に進めば進む程、背後の光は小さくなっていく。
土や草のニオイはきつく、それだけで息が詰まりそうだ。陽の光は木の葉に遮られ、外の世界を遮断される様な圧迫感を覚えた。
時々剥き出しになった樹木に足を取られながらも、道も目印も無い深い森の中を只管に進んでいく。
鳥や動物の鳴き声すら聞こえないこの森は、まるで異世界への入り口の様だ。辺りを見渡しても似た様な木ばかりで、早くも道に迷い始めていた。
今更ながら、此処に足を踏み入れてはいけなかったのではないかと思えてくる。だが、そんな事を考えたってもう手遅れだ。既に帰り道が分からなくなってしまった事に恐怖感を覚えながらも、辺りを見渡しながら比較的綺麗な方へと進んでいく。
「――!」
この暗い森に、よく馴染んだ外装。煉瓦で作られた、壁を伝う蔓。
目の前に聳え立つのは、異様な程に大きい教会。
ずっとこの建物が見えていた筈なのに、森に馴染んでいたからか全く気付く事が出来なかった。突如現れた様に感じるその教会に、形容しがたい恐怖心が沸き上がる。
一歩ずつ慎重に地面を踏みしめ、その教会に近づいた。
教会の出入り口に付けられた木の扉は酷く廃れ、所々腐り穴が開いている。扉に埋め込まれた小窓も曇り、覗き込んでみても中は見えない。
もう一度、手に持っていた手紙に視線を落とす。
今自分が森のどの位置に居るか見当もつかない為、本当にこの教会で合っているのかすら分からない。だが、この建物は確かに教会だ。間違いは無い。
手紙をポケットにしまいこみ、扉の前で深呼吸を数回繰り返す。
そして扉の取っ手を掴み、ゆっくりと押し開いた。
――自分を待ち受けている未来が、何かも分からずに。
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