DachuRa 1st story -最低で残酷な、ハッピーエンドを今-

白城 由紀菜

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XXXIV 悪夢の始まり-III





 普段と変わらない、いつも通りの街の中。
 女性物のアクセサリーが並ぶ商品台の向こう側には、その愛らしい商品達に不相応である険しい表情を顔に張り付けて佇む1人の女店主。
 
 買い出しついでに彼女と会話を交わす事は最早日課だ。最近では、彼女の顔色を見るだけで大体何を考えているのかが分かる様になってきた。
 また、何か揉め事でも起こしたのだろうか。話が長くなりそうであれば、先に買い出しを済ませてからにしようかとも思ったが、その険しい顔の真相が気になり彼女に声を掛けた。

「こんにちは、ライリーさん。どうかしたの?」

 声に気付き、彼女が視線を此方に寄越した。
 また、「聞いてくれよ、エルちゃん」なんて言葉から愚痴が始まったりするのだろうか。そんな事を考え、1人苦笑いを漏らす。
 だが、彼女は私の姿を視界に捉えるなりその険しい顔を崩した。そして無表情のまま、私の顔をまじまじと見つめる。

「……あの、ライリーさん?」

「……」

 声を掛けても、反応は無い。ただ私の顔を見つめ、石化してしまった様にその場に固まっている。
 一体どうしてしまったのだろうか。こんな彼女を、今迄に見た事が無い。
 少々戸惑いながらも、彼女の顔の前で手を振ってみる。すると、漸く彼女がゆらりと身体を動かした。

「あんたってさ、美人だよね」

 漸く口を開いたかと思った矢先、投げかけられた言葉に顔を顰める。

「どうしたの、急にそんな事を言って」

 そう問いかけると、彼女がふいと私から顔を逸らし、うん、と小さく頷いた。
 徐に椅子に腰掛け、商品台に頬杖をつく。そして今度は、何かを深く考えこむ様な表情を浮かべた。

「今朝の新聞、読んだかい?」

「新聞……?ええ、ざっと目を通した位だけれど」

「じゃあ、ロンドン市内で起こってる婦女暴行事件は知ってるね?」

 その問いに、先程自宅で読んだ新聞の記事を思い出した。
 彼女の言った、婦女暴行事件。確かに、新聞で目にした記事だ。小さく頷いて見せると、彼女が憂い気に目を伏せ、深く溜息を吐いた。

 今日の彼女は、良く表情が変わる。今朝のセドリックもいつもと様子が違ったが、それは目の前の彼女も同じだ。
 その事件は確かに、新聞の記事になっている物ではあった。だが、ぎっしりと様々な記事が書かれているページの隅に、小さく書かれている程度だ。それ程に、憂う事なのだろうか。
 勿論被害者の女性はさぞ苦しい思いをしたのだろう。事件を軽く捉えてはいけない。
 だが、今私達が深刻に捉える事件でも無い様に思えた。


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