DachuRa 1st story -最低で残酷な、ハッピーエンドを今-

白城 由紀菜

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XXXVII 奇妙な夢-V

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「ところで、セディとは上手くやれてる?あいつデリカシーとか微塵も無いし、相手への配慮も常に欠けてるから、私生活だけじゃなく夜の方とかも大変じゃない?」

 無理矢理話題を変えられた事を感じ取りながらも、彼女の問い掛けについセドリックとの情交を思い出してしまい、一気に顔に熱が上る。
 女性同士ならではの話題ではあるが、相手がマーシャとなると少し気恥ずかしい。

「――その、セドリックにはとても……大切にしてもらっていると思うし、沢山、愛して貰っているから……」

 曖昧に言葉を濁すが、マーシャはにやにやとした顔で食い下がる。

「愛して貰ってる、なんて生々しいなぁ。あいつが女の子相手に優しくしてる姿とか全然想像出来ないけど、でも乱暴な事とかはされてない様で安心したよ」

「乱暴な事なんて……!そんな事、一度もされた事無いわ、大丈夫よ」

「そう?たまにあるじゃない、家庭内の性暴力とか。特殊性癖とか、アブノーマルな事求められたりとか……」

「セドリックはそんな人じゃないわ」

 彼との情交。それはとても甘く、熱く、何度交わしても飽きる事等決してない行為。
 彼の性格を考えるとどうしても淡泊な情交を想像してしまいがちだが、彼は毎回痛みを感じさせない様長い時間を掛け、気が触れそうな程の快楽をくれる。時々、私ばかり善くして貰っているのではないかと感じる事もあるが、その都度彼は、私が快楽を得ている姿を見るだけで満たされる、なんて言葉をくれた。

「――なんか、いやらしい事考えてるでしょ」

 マーシャがこれ以上ない程下劣な笑みを浮かべ、私の顔を覗き込む。

「な、何も、何も考えていないわ……!貴女が、変な事を言うから……」

「変な事言うから、何?」

「もう!マーシャってはいつもそうやって揶揄からかって!」

 ポン、と彼女の肩を叩くと、マーシャは楽しそうに声を上げて笑った。


 ――それから、約数十分。
 普段とは少し違った会話を楽しみ、丁度時計の針が12時を指した頃。マーシャが徐に椅子から腰を上げた。

「私、そろそろ行かなきゃ」

 彼女が、何処か猫を連想させる様に腰を反らしながら大きく伸びをし、短く告げる。

「あら、もう行っちゃうの?」

「うん、エルちゃんも大分顔色良くなったし、私も色々調べ物あるし」

「……そう」

 体調は、朝に比べたら大分良くなった。夕飯の支度等の家事も、今の調子であれば熟せるだろう。だが、なんだか彼女が帰ってしまう事が少しだけ寂しく感じた。

「なぁに、寂しい?」

 そんな私の心を見透かした様に、マーシャがふふ、と笑う。

「1人になるのが、少しだけね」

 そう笑って返すと、彼女が切なげな表情を見せた。

「そんな事言われたら、行きづらくなるなぁ」

「私は大丈夫よ。わざわざ来てくれてありがとう」

 ベッドから足を下し、ゆっくりと腰を上げる。
 危惧していた眩暈も、倦怠感も無い。想像していた以上に、回復した様だ。後で少し気分転換にでも、街へ散歩に出ても良いかもしれない。

 名残惜しそうに去っていくマーシャを見送り、ぱたりと玄関扉を閉める。そしてしんと静まり返った部屋に、小さな溜息を吐いた。
 玄関扉に凭れ掛かり、そっと自身の下腹部を摩る。

 今日の体調不良は、少々気味の悪い物だった。あれ程の酷い不調だったというのに、少し眠っただけで回復してしまうだなんて妙だ。
 それに、夢の中のメアリーの発言。

 “貴方は要らぬ物を身籠ってしまった”

 本来であれば、ただの夢だと直ぐに切り替える事が出来る。だが、何故だかその言葉だけがやけに心に残って離れない。

 それはメアリーが発した言葉だからか、それとも“思い当たる節”があるからなのか。
 今の私には、それを深く考える事が出来なかった。
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