DachuRa 1st story -最低で残酷な、ハッピーエンドを今-

白城 由紀菜

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XL 自問-II

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 ◇ ◇ ◇


 ふわふわと浮遊している様な感覚の中、ゆっくりと瞳を開く。
 視界の先は見慣れた天井と、不安げな表情を浮かべ私の顔を覗き込む、最愛の夫の顔。

 何も無い空間に意識だけ投げ出された様な、奇妙な時間だった。
 それが夢なのだと言われればそうかもしれないが、夢だったと断言できない気味の悪い物。

 未だ意識がはっきりとしないまま顔を動かし、時計へと視線を向ける。
 意識を失う前は、確かに7時を指していた。だが知らぬ間に時間は過ぎてしまった様で、現在時計の針は8時30分を指している。

「――仕事は……?」

 掠れた声で、私を見つめるセドリックに問う。
 確か今日は、朝早くに仕事の予定が入っていると言っていた筈だ。その為、普段より早い時間に起床し朝食を作っていた訳だが、彼はスーツに身を包んだまま私に寄り添う様にベッドに座っていた。

「倒れたお前を放って行ける訳無いだろ」

「――仕事、優先してくれて良かったのに……。予定、大丈夫なの?」

「早い時間に予定があるとは言ったが、実際ははっきりと時間が決まっていた訳じゃないんだ。念の為家を早く出ておきたかっただけで、仕事に支障はない」

「――そう、よかった」

 彼の手が、ふわりと髪を撫でる。
 
「顔色、良くないな。後でマーシャを来させるから、今日は診療所に行ってこい」

「――大丈夫、大した事ないわ」

「大した事無いかを決めるのはお前じゃない。今日はどうしても穴を開けられない仕事があってな、俺は付き添えないんだが……、一度医者に診せた方がいい」

「この前も、眠っていたら良くなったわ。きっと今日も――」

「駄目だ、行ってこい」

 力強い彼の声に、思わず口を噤んだ。
 この体調不良の理由。それは、ずっと前から薄々気付いていた。
 診療所に行けば、その理由が明らかになってしまう。それを明らかにするのはもう少し先であって欲しかった。しかし今の彼を言い負かす事は出来なさそうだ。
 渋々頷き、布団の中へと潜った。

「俺はそろそろ家を出るよ。仕事が終わり次第、直ぐに帰ってくる」

 布団から顔を出し彼に目を遣ると、彼がぎこちなくも微笑んで見せる。
 その顔を見ていると、じわじわと心の中に不安が広がっていくのを感じた。

 笑顔とは程遠い表情。だがそれは、きっと私を安心させるために見せてくれた顔だ。
 その表情を、笑顔を、失いたくない。いずれ覚めてしまう夢だとしても、まだ覚めたくはない。もう少しだけ見ていたい。
 診療所へ行き、仮に私の憶測が正しかったとしたら。私は、彼に真実を伝えるだろうか。
 きっと、伝えられない筈だ。「ただの風邪だった」等と言って、誤魔化してしまうだろう。

「――エル、そんな顔するな」

 彼はあの日同様私が寂しがっているとでも思ったのか、私の頬を両手で優しく包み込んだ。
 その手からは、強い私への心配が伝わってくる。それがより一層、私の心を重くさせた。
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